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R15な魔法しか載ってない魔導書を見つけた。  作者: あーる72


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第6話【鷲宮みずき_ラッキーすけべになる魔法】④★☆☆

「おはよう。流石、時間通りね」


駅に着くと、同じく制服姿の鷲宮先輩が待っていた。

手には普段のスクールバックではなく、小ぶりなスーツケースを持っている。

今日の読み聞かせ会で使う絵本が入っているはずだ。


「持ちますよ」


「あら、悪いね」


鷲宮先輩は、さして悪いと思ってなさそうな口ぶりでスーツケースを手渡してくる。

読み聞かせ会に二人で参加するときは、常に僕が荷物持ちになる。


「山田と読み聞かせ会に参加するのも、これで最後だな」


「なんですか?柄でもない」


鷲宮先輩とは、一年生の頃からの付き合いだ。

たまたま図書当番で一緒になる機会が多く、気がついた時には図書委員の中で一番中のいい人になっていた。


「初めて会ったときは、根暗で友達の少なそうな男の子が入ってきたな、と思ったもんだよ」


「僕も、初めて会ったときは体操服姿だったのでしばらく美形な男の先輩だと勘違いしてましたよ」


付き合いが長いので、お互い多少の毒を吐いても問題はない。

僕らは話しながら、二人で並んで駅に入る。


「それでも、朗読の腕はピカイチで読み聞かせ会じゃ即戦力だったよねー。何故か子供ウケもいいし。

 私達だけでもいくつ回ったか」


朗読が上手いのは、声優に憧れて自己流ボイストレーニングをしていた厨二病時代の副産物だ。

それ自体はイタイ思い出だが、朗読会に出るたびに先輩に褒めて貰えるので、今となってはやってよかったなと思えようになった。


「それでも、毎回、一番人気は決まって鷲宮先輩でしたけどね」


「まぁ、年季が違うからね」


「年季って、たった一年じゃないですか」


「その一年が、大きいのよ」


今日の鷲宮先輩は、どこか寂しそうな雰囲気を漂わせている。

いつもは、ボーイッシュな見た目通りの天真爛漫な言動が持ち味なのだが。


「山田はまだ一年高校生をやれるんだろ?

 羨ましいよ」


「それは先輩が僕よりも一年高校生を長くやってるんだから、当たり前のことですよ」


「山田って四月生まれだったよな?

 なんでもう一ヶ月早く生まれなかったかなぁ。

 そしたら丸々三年間一緒に図書委員やれたのになぁ」


「なんですかそれ。

 そういうのは、運動部にとんでもない逸材が一個下に入ってきた時とかに言ってくださいよ。

 図書委員だと、弱いですよ」


寂しそうな気配は見せつつも、いつも通り他愛のない会話が弾む。

思えばこの一年の委員会活動で、図書当番や書庫整理中など、暇があればこの先輩と取り止めのない事を話していた。

僕は普段あまり人と話す方ではない(※鷲宮先輩の言うように友達が少ないわけではなく、口数が少ないだけである。断じて友達が少ないわけではない)ので、こんな風に中身のあるようでないような、会話ならラリーを続けることが目的みたいな会話ができるのは、鷲宮先輩くらいだ。

ボーイッシュな見た目のおかげか、変な緊張もしなくて済んでいる。


「それはそうと、昨日千紗のこと見てたよな?

 本気で狙ってるのか?」


「森崎先輩とは、最近少しお話しする機会があっただけで、狙ってるとかそう言うのではないです。

 と言うか、鷲宮先輩って森崎先輩とお友達なんですか?」


「まぁね。山田と違って友達が多いですから、私は」


鷲宮先輩は、平たい胸を張る。

昨日の会話から、もしやとは思っていたが、この二人がつながっているのは意外だった。


「森崎先輩は、僕のこと何か言ってませんでしたか?

 それか、最近森崎先輩に相談されたこととか」


「おやおや、私経由で情報を引き出そうというのかい?

 残念ながら、千紗が恋で悩んでたり山田のことを気にかけてるようなことはこれっぽっちもなかったよ」


お漏らしトレーニングの件が、鷲宮先輩に漏れていないか気になったのだが、この様子なら今のところは大丈夫そうだ。


「だいたい、千紗は同級生の間でも人気なんだよ?

 下の兄弟の世話があるから、放課後もすぐ帰っちゃうんだけど、たまにクラスの集まりとかに顔を出すと、千紗を狙ってる男子達が露骨に周りを取り囲んむんだから。

 山田じゃ無理無理」


「森崎先輩ってそんなに人気なんですね」


確かに小動物的で庇護欲の唆られる可愛らしい人ではある。

そんな人に、僕が何をしているのか、鷲宮先輩や三年生の男子生徒にバレるとまずそうだ。


「山田はどうせモテないんだから、高嶺の花を狙うより身近なところで勝負した方が勝算があるんじゃない」


「お気遣い感謝します。

 けど、受験期の大切な休みの日をボランティアに空費している先輩にも、同じ言葉をお送りしますよ。イテっ」


鷲宮先輩から返事代わりのローキックをふくらはぎに貰う。

鷲宮先輩とは、歳の近い親戚のような距離感なのでこう言うやりとりも多い。


高校で一番中のいい女子は誰だ、と聞かれれば多分鷲宮先輩になるのだろう。


仲がいいからこそ、僕は鷲宮先輩に『少し叡智な魔法の使い方』を使おうとは思わなかった。

急な尿意に悶えさせたり、体のいろんなところを痒くさせたり、無理難題なことを言いくるめたり。

そう言うことをしても、エッチな雰囲気になるビジョンが見えなかったからだ。


今日は、【ラッキーすけべになる魔法】を使ってはいるが、これはあくまでも僕がラッキーと思えるようなすけべが降りかかる魔法なので、ラッキーと思わない鷲宮先輩とのハプニングは起きないはずだ。

だからこの魔法を選んだ。


本当だ。

あわよくば鷲宮先輩とエッチなハプニングに逢いたいだなんて、これっぽっちも思っていない。期待していない。

本当だ。


今朝のOLのお姉さんと同じ部位かも怪しい平な胸、僕が緊張しないほど女性っぽさのない短く切り揃えられた髪とそれが似合うボーイッシュな顔立ち、ふくよかさを感じられない触り心地の悪そうな細い太もも。

どれをとっても、僕のタイプではない。

断じてない。


能動的に魔法を使うのは気恥ずかしいので、受動的にエッチなことが起こることを期待して【ラッキーすけべになる魔法】を使ったりしてない。

他にも機会があったのに、あえて鷲宮先輩とのお出かけの日にこの魔法を使ったのはただの偶然だ。




そんな僕の思いが通じたのか、移動中、ラッキーすけべなことは何一つ起きなかった。

僕は、ほっとしたような、残念なような気持ちを抱えつつ、ボランティア控え室に向かった。













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