第5話【森崎千紗のお漏らし事情】①★★☆
花澤さんが去ってすぐに、僕のスマホが鳴った。
本当は花澤さんの言葉の意味することについて深く考えたかったのだが、宛先の名前を見てその考えは消えてしまった。
重たい体を起こしてベットを後にし、指定された図書準備室に入ると、僕を呼び出した相手はすでにそこにいてうずくまって泣いていた。
「どうしました森崎先輩」
僕の声に森崎先輩が振り返る。
年上のはずだが、小動物を思わせるその仕草に庇護欲と嗜虐心が同時に揺さぶられる。
「あの、私……その……」
うまく言葉にできない森崎先輩は、目線を机の上にやる。
つられてそちらを見ると、そこには使用済みの大人用オムツが置かれている。
「これは……」
僕は近づいてそれに触れる。
まだほのかに暖かい。
今脱いだばかりだとわかる。
「あの、あんまり触らないで」
その反応で、誰が脱いだものかも分かる。
いや、反応がなくても高校の図書館準備室で使用済みオムツを脱ぎ捨てる人なんて一人しかいないのだが。
「またお漏らししたんですか?」
僕はあえて呆れたような声を出す、
森崎先輩の肩がビクッと震える。
「今日は山田くんのおかげで、いつになく集中して勉強ができてたんです。
けど集中しすぎて、いつのまにか……」
森崎先輩が集中できていたのは、僕が使った【感覚を遮断する魔法】のおかげだ。
あの魔法のおかげで下半身の感覚が遮断された森崎先輩は、集中力と引き換えに尿意を感じることができなくなっていたのだ。
「お昼になってご飯を食べようと立ち上がるその瞬間まで、本当に気づかなかったの」
お昼、という言葉を聞いて僕は時計を見る。
時刻は12時30分を指している。
気絶をしていて時間の感覚がなくなっていたが、僕はどうやら3時間程度気を失っていたらしい。
「立ち上がった瞬間に、それまで集中してて気にならなかった、お、オムツの感覚が一気に戻ってきて。
その時にはもう……」
おそらく、ちょうどそのタイミングで感覚を遮断する魔法の持続時間が切れたのだろう。
「慌てて山田くんを探したんだけど、見当たらなくて……
何かあったらこの部屋に来てって言われてたから、ここで待ってたんだけど、その、オムツがとっても蒸れて……」
僕の到着を待たずにオムツを脱いだというわけか。
ん、ちょっと待って。
森崎先輩のパンツは、僕がいい加減な理由で取り上げている。
ということは、
「ひょっとして今スカートの中って何も履いてないんですか?」
森崎先輩の肩がまだビクッと震える。
「だって……」
「高校生にもなって何度もお漏らしして、さらにはノーパンで後輩が来るのを待ってるだなんて森崎先輩って変態なんですか?」
花澤さんの口調が移ってしまったのか、いつもよりもスルスルと言葉が出てくる。
スカートの下は何も履いていない。
そのことを意識してしまうと、どうしても倒れる前に触れた森崎先輩の体温を思い出してしまう。
今彼女を押し倒せば、何にも守られていない彼女の大切な部分が露わに……!
……ダメだダメだ。
また一線を越えそうになる。
本を拾う前の僕なら、こんなことを考えただろうか?
『少し叡智な魔法の使い方』に魅入られて、思考まで引きずられている気がする。
今日だって気を失っていなければ、森崎先輩にどんなことをしていたか分かったものではない。
無抵抗な女の子にイタズラするのは、僕の趣味でもない。
僕は邪念を振り払うように頭を強く振る。
これ以上、森崎先輩にイタズラをするのはやめよう。
「僕が間違ってました。
オムツをしてるって安心感が良くなかったんだと思います」
僕はうずくまる森崎先輩にパンツを差し出す。
「森崎先輩の言葉を信じるべきでした。
先週まで一度も漏らしたことがないんだから、いつも通りにしていればそうそう漏らすこともないでしょう。
むしろ変な策を講じて、森崎先輩に恥ずかしい思いをさせてしまいましたね。すみません」
「えっ?」
森崎先輩が驚いたような顔でこちらを振り返る。
さっきまで頭を抱えていた森崎先輩の左手にパンツを握らせる。
「安心してください。先生にも言いません。
森崎先輩がもう漏らさないと強い意志で過ごしてくれれば大丈夫ですから!」
そう言って、僕はその場を立ち去ろうとした。
これで、森崎先輩は僕の魔の手から解放される。はずだった。
「待って」
図書準備室から出て行こうとした僕の手を森崎先輩が掴んだ。
その思いがけない強さに、僕はつんのめるように床に転げる。慌てて受け身を取ろうとして、背中を床につける。
気絶していて動きの重い体はいうことを聞いてくれず、無惨にも床に仰向けに寝転がるように倒れてしまった。
その上に、なぜかこちらもバランスを崩した森崎先輩が倒れ込む。
気がつくと仰向けに倒れた僕のお腹の上に、森崎先輩が馬乗りになるような格好になっていた。
さっき話した通り、森崎先輩はスカートの下に何も履いていない。
生々しい熱い感触が、僕の下腹部を圧迫する。




