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R15な魔法しか載ってない魔導書を見つけた。  作者: あーる72


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第4話【花澤みつき_爪に火を灯す魔法】④☆☆☆

「さぁ、魔法を使うところをお見せしましたよ。

 動画を消して本を返してくれる条件を教えてくださいよ」


花澤さんは、尻餅をついてまだ立ち上がれていない。

ベットの上からの角度でも、スカートから伸びるすらっとした白い脚がよく見える。


僕は、指から火を出す魔法を使っただけだ。そんなに驚かなくてもいいのにと思う。


「あなた、本当にこの本を見るのは初めてなの?」


花澤さんは、尻餅をついたまま問いかけてきた。


「もちろん初めてですよ」


そう答えると、花澤さんの顔が歪む。


「嘘よ!なんで初めてなのにこんなに簡単に使えるのよ!」


花澤さんのその叫び声には色んな感情が乗っていた。


怒り、嫉妬、恐れ、羨望……


人の機微が分からない僕でも、ざっとこれくらいの感情が乗っていることは理解できた。


「そんなに驚くことですか?」


僕はそのいずれの感情についても、共感することができなかった。

当然だが、これまで誰かと魔法について話したことはない。


『少し叡智な魔法の使い方』に関する考察や、どうすれば魔法を使えるようになるのかな調査・挑戦は一人で行ってきた。


その中で、一つ得られた個人的な見解がある。


それは、読める魔法は念じれば使えるという事だ。


この魔導書に書かれている魔法を実行するのに、特殊な呪文や道具は不要だ。

ただ、使いたい魔法のページを開き、そこに手を置いて念じる。

それだけが、魔法を発動す条件だった。


初めて魔法を使った時も、今日初めて使う魔法にチャレンジした際もそれは同じだった。


読めたら使える。


魔法を使うためには、マナというエネルギーが必要ということは今知ったが、それがどういうものかは全く分からない。

魔法の使いすぎで疲れることはあるが、それはあくまでも使いすぎた後に起こる不都合である。

だから僕は、魔法を使うことそのものについて、難しいと感じたことはなかった。


「なんで私に使えなくてこんな変態に……」


花澤さんは、小さな声で呟く。

変態。と言われた気がするが、花澤さんのスマホに入っている映像を見せられると反論のしようがないので黙っておく。


「でも、魔法は使える。

 今は贅沢も言ってられないし、背に腹はかえられないわね」


花澤さんの独り言は続く。

彼女の中で何かの葛藤があるようだ。

しばらくぶつぶつと呟いたあと、花澤さんはゆっくりと立ち上がった。


「合格よ」


立ち上がった花澤さんは、ベットに腰掛ける僕を見下ろしてそう言った。


「合格?」


「そう、あなたが確かに魔法を使えることは理解したわ。だから合格」


さっきまで尻餅をついていたとは思えないほどの上から目線に、少しイラっとする。


「僕は何に合格したのかな?

 それに、僕は何かに協力するんじゃなかったっけ?

 まずは何に協力するかを教えてもらわないと」


「今はその時じゃないわ」


花澤さんはそう言って、僕から『科学的魔法学入門』を取り上げる。


「これは返してもらうわ。

 けどその代わり」


そう言って今度は『少し叡智な魔法の使い方』を手渡してくる。

僕の魔導書!!!


「私にはあなたを悪いようにするつもりはないわ。

 だからその証に、これは返してあげる」


僕は手渡された『少し叡智な魔法の使い方』を引き寄せて抱きしめる。

もうどこにも、誰にも渡しはしない!!!


そんな僕と魔導書の抱擁を、花澤さんは冷めた目で見つめる。


「本は返すけど、今日みたいなことはやめてよね。

 協力者が塀の中に入っちゃうとこっちが困るから」


花澤さんの言葉に首を縦に振る。

今日は自分を失って暴走してしまったが、もうあんな事はしない。

節度を守った使い方を心がけよう。

なんたって


「血塗れになるのはごめんだしな」


何気なく呟いたその言葉に、花澤さんが怪訝な顔をする。


「血塗れ?」


「ああ、鼻から大量に……

 そういえば、花澤さんがここまで運んでくれたんだっけ?

 ごめんね、血とかついてない?」


「何言ってるの?あなたは確かに倒れてたけど、血(・)な(・)ん(・)て(・)一(・)滴(・)も(・)流(・)し(・)て(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)わ(・)よ(・)」


「え?いや、そんなはずは」


僕は、花澤さんの言葉に驚いて自分の胸元を見る。

流れ出る鼻血を床にこぼさないようにこの服で受け止めたんだから!

そう言おうとして見下ろした先には、血なんて一滴も付いていない白いカッターシャツがあった。


「頭大丈夫?

 倒れた拍子に何処か打ったんじゃない?」


花澤さんにそんな心配をされる。

だが、あれは思い過ごしなんかではない。

確かに鼻血を流した感覚が今も体に残っている。

幻覚や夢ではない。はずだ。


「まぁいいわ。

 私が確認したかったことは、全部確認できたから」


花澤さんは混乱する僕をよそに、『科学的魔法学入門』を鞄に入れて帰り支度を始める。


「協力が必要になったら、私の方から連絡するから。

 もし協力を断ったら、分かっているでしょ」


花澤さんはスマホを掲げてそう言った。

そうだ動画があった!

僕は鼻血の件を一旦棚上げにして花澤さんに向き合った。


「僕に魔導書を返してくれたけど、僕がこれを使ってその動画を消すかも、とは考えなかったの?」


「そうならない自信があるからその本を返したってことぐらい分かりなさい」


花澤さんのその言い方は、ハッタリをかましてるのではなく、単なる事実を伝えているのだとわかった。

僕は、【多少無理な理屈でも言いくるめる魔法】のページに滑り込ませていた指を抜く。


おそらく彼女は、僕よりも魔法のことについて知っている。

使える魔法は、僕の方が多いようだが知識量で勝る相手に力勝負を挑んでも勝ち目は薄いだろう。

事実、彼女は取るに足らない存在になっていた僕を見つけることができた。


花澤さんに聞きたいことは山ほどある。

彼女の手にあの動画が残っていることもモヤモヤする。

だが、現状彼女には話す気がなさそうだし、動画に関しても今の所は悪いようにはされないらしい。


何はともあれ、『少し叡智な魔法の使い方』が手元に戻っただけでよしとするか。


「その本のこと、ずいぶん気に入ってるみたいだけどあまり使いすぎないことね。

 魔法の本を持ってるのは、あなただけじゃない。

 私はもちろん、私以外にももっとたくさんいるかもしれない。

 そのことを常に気にかけて、羽目を外しすぎないように」


花澤さんは、そんな忠告を残して去っていった。








第4話 完

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