第2話【大神京子_任意の部位を痒くする魔法】⑤★★☆
「絶対やってもらった方がいいって」
「まじ騙されたと思ってやってみ!飛ぶよ!
私はまじで飛びかけた!」
山本と安井が大神に迫っていた。
三人の中で僕の「痒みをなくす術」を受けていないのは大神だけ。
その大神に先に受けた二人が力説する。
「今日の蚊何か変じゃなかった?自分で掻いても掻いても痛いばっかりでちっとも気持ち良くないでしょ?
それが山田くんのやり方ならあら不思議、痒いところを丁度いい力で掻いたときのあの気持ちいい感覚の何倍もの気持ちよさが一気にやってきて、そのあとはもう全く痒くないの!」
「ほんとにそれ!
私なんて自分で乳首弄るよりも気持ちよかったんだよ。ただのふくらはぎが乳首を超えたんだよ?」
ヒートアップしすぎて僕が聞かない方がいい話も聞こえてきた気がする。
だが二人の説得虚しく、大神は立ち上がる。
「いやほんとにいいから掃除も終わったみたいだし私もう行くね」
その声に覇気はなく、二人の手を振り解く力もないように見える。
痒みひとつでそこまで弱るか?とも思うが、実際に魔法にかかったものにしかわからない辛さがあるのだろう。
僕はそんな三人の様子を見ながら『少し叡智な魔法の使い方』に触れる。
【任意の部位を痒くする魔法】を大神を対象に使用する。
土曜日の経験からこれ以上の魔法の使用は翌日の体調に多大な影響が予想されるが仕方がない。
このひと押しでおそらく大神は落ちるだろう。
今日掃除をサボった罰を山本と安井は払った。
あとは大神だけだ。
というか、山本と安井は普段はちゃんと掃除をしている。今日のサボりの原因は間違いなく大神にあるだろう。
だからこそ大神には、一番恥ずかしい思いをしてもらわなくては。
魔法の効果はすぐに現れた。
「そんな……」
小さな呟きと共に大神の動きが止まる。
山本と安井の二人も、その異変に気付き動きを止める。
「まさかまた刺された?」
山本からの問いに大神は答えず床に座り込む。
そして、
「もう我慢できない
お願い見ないで……」
そういうと、右手をブラウスの襟元から突っ込み左脇の辺りを、左手をスカートの中に突っ込み太ももの根本辺りを一心不乱に掻きむしり始めた。
「だめだめだめ!痒い痒い痒い!
なんで?掻いてるのに全然収まってくれない!もっともっと痒くなる」
それはうら若い女子高生が学校で見せていい姿ではなかった。
何かに取り憑かれたように、服が乱れるのもお構いなしで掻きむしる。
そばで見ていた山本と安井が同情の目を向ける。
「京子が蚊に刺されたのってそこだったんだ。
それは確かに山田くんには触らせらせないか」
山本のそんな声も届かないかのように大神は体を掻き続ける。
「けどもうそんなことも言ってられないんじゃない?
ねぇあ山田くん、京子にもやってもらえない?」
安井が僕の方を見ていう。
だが僕は首を横に振る。
「山本さんが言った通りそこは僕が触れていい場所じゃないでしょ」
「それはそうだけど。
あ、でも京子も私と同じでフリーだし!」
「フリーならなんでもしていいわけじゃないだろ」
僕はそう言ってカバンを手に取り教室を出るそぶりを見せた。
その瞬間、背中から声がかかる。
「いい!なんでもいいから!!
この痒さがなくなるならなんでもいいからお願い」
少し汗をかいた大神が血走った目でこちらを見ていた。
体を掻く手はそれでも止まらない。
「ほんとにいいの?見たところ結構際どいところみたいだけど」
僕はもう一度確認する。
「いいから!なんでもいいから!」
切羽詰まった顔で大神が懇願する。
「分かった、じゃ一旦その手を止めて」
「無理!もう止めたくても止まらない」
「でも止めてくれなきゃ触れないよ」
「止まらない!触って!痒いの止めて!」
まあ会話になっているかすら怪しい。
流石に可哀想になってきたのでそろそろ止めてあげることにする。
「山本さん、安井さん、大神さんのために協力してくれない?」
僕は大神を心配そうに見つめる二人に頼む。
「山本さんは腕を、安井さんは足を押さえて」
大神さんは三人の中で一番小柄。
襲い来る痒みで体の力も出なくなっているだろうから山本、安井の二人でも十分抑え込めた。
目の前に同級生に体を拘束された可愛い女子高生が一人。
「早く触って!」
僕に体を触ってほしいと懇願している。
僕は、今日初めてムクムクが元気になるのを感じた。




