水の街、イヴェル・クーガ
ればにらです!すみません、最近私の方が私生活で色々あってなかなか執筆する時間が取れずこんな時間になってしまいました!必ず完結まで持っていきますので、これからも応援よろしくお願いします!
「なんだかじめっとしてきましたね…嫌な暑さです…」
「服が張り付いてやな感じ〜…」
「確かにそうだね。ということはもうすぐイヴェル・クーガなのかもしれないよ」
エリアンの屋敷を出てはや数日、快晴が続いた。最初こそ彼らが背中を押してる、と前向きな解釈をしていたのだが、凄まじく湿度が上がり、汗が吹き出し始め、水の消費量が増えてからそう悠長なことも言えなくなっていた。私はというと
「あづい…干物になりそうだ…」
もちろん暑さの目の前に倒れていた。コールドで身を包む方法は短時間ならいいのだが、数日間も持続させるのは戦闘時などの必要な時に魔力切れを起こす可能性があるので封印した。早くイヴェル・クーガに着きたい…
「オイ、見てみ、海が見えて来たで」
御者台に座るハンクが荷車に顔を突っ込んできてそう告げた。
「うわあ…すっげぇ…」
眼前に広がるのは遥か彼方まで広がる巨大な水平線。太陽の光を反射してキラキラと輝く様はまさに地を埋め尽くす蒼い宝石のようだった。
「あ!あのおっきな塔って灯台だよね!あれだけの高さのやつ初めて見たかも!」
クロエが港の方、少し離れた孤島の小高い丘にある巨大な灯台を指差す。まだまだ街の規模がなんとなく見える程度だというのに、それは大きな存在感を放っている。
「あれは『イヴェルの大灯台』ですね!高さがおよそ百七十レアルもある世界一の灯台で、嵐の中であっても絶えず点る灯りは船乗りたちの目印になるとともに、希望の象徴にもなっているんですよ!」
へぇ、確かにあれほどのデカさなら嵐の海の中でも見えるだろうな。自然現象っていう絶望の中に見える一筋の光ってのが希望に繋がってんのかね。
「とりあえず街に着いたら冒険者組合で魔物の皮とかを換金したいな。旅の資金がカツカツだ」
「確かにそれが先決だね。そういえば、イヴェル・クーガは貿易と同じぐらい漁業も盛んな街なんだよ。何度か来たことがあるから、美味しい海の幸を振る舞ってくれる料理屋を知ってるし、換金が終わったら行こう」
「お、いいじゃねえか。楽しみにしてるぜ、マルク」
________________________________
_________________________
_________________
「めっっっちゃくちゃ時間かかったな。灯台が見えたからすぐだと思ってたのに1時間ぐらいかかったじゃねえか」
大灯台は地上から見ても希望の象徴と言っても良さそうだ。
「街の中はなんや割と涼しいな。あれのお陰か?」
そう言ってハンクが指差した先には鉄の棒から水が霧のように出ている装置があった。
「あれはミストですね!水の魔石から水を吸い出して、小さい穴を開けた鉄の棒から出しているんですよ」
「はぁ…なるほどなぁ。オイラん里でも使えるかな思ったけど魔石使うんかぁ。ほんなら無理そうやなぁ。魔石の加工出来へんし、そもそもオイラたちドワーフは放出できても魔力の充填が出来へん」
種族の特性ってのはどうしようもないもんだ。慰めの言葉をかけてやるべきだろうか。
「ま、でもなんとか出来へんか落ち着いたら探してみるわ。やっぱやってみんことには始まらんしな」
そう言うとハンクはぶつぶつとああでもないこうでもないと呟き始めた。本当に時間があればやりそうな気がする気迫を感じる。
「それじゃ、そろそろ冒険者組合行くぞ。日が暮れちまう」
「僕が道案内しますね。前に来た時におおよその施設の場所は頭に入れてます」
マルクが馬車から降り、先導する。街を知ってる奴がいるのは本当にありがたい。
「んん?おや!?おやおやおや!?そこにいるのはマルクか!?」
何やらうるさいのがきた。
「ヴェルナー?ヴェルナーじゃないか!どうしてここに?」
「お前の方こそ!ん?そっちの人たちは例のお仲間か?」
私たちを知ってるのか。こいつは一体…
「マルク様、そちらの方はどなたでしょうか?」
「紹介するよ。彼は…」
「ヴェルナー・レギア・クリペウス!一応クリペウス家の跡取りだ!よろしくな!」
クリペウス?クリペウス…。……!!!
「クリペウスって、あの五大貴族の!?」
クロエがとんでもなくバカでかい声を出したので通行人たちが大勢振り向いた。「どうやらヴェルナー様がいらっしゃるらしいぞ」「ということはあっちの赤毛の方はマルク様じゃないか?」といったざわめきが広がり、やがて大きな騒ぎとなった。
「おいおいどうすんだよこれ…大事になっちまったぞ…」
「あらら…あとで落ち合おう!この場所にあとで来てくれ!」
ヴェルナーはそう言ってこちらに半透明の石のようなものを投げ渡し、マルクの手を引いて走り去って行った。民衆たちはほとんどが
「行ってもうたな。オイラたち土地勘無いのに」
グレゴは石を覗いている。不思議な揺らめくような光を放っており、ただの石ではなさそうだ。
「これを頼りに行くしかねえな。またこんな記録石なんて大層なもん常備してるなんて、流石は五大貴族サマだよ」
石を覗き込むとどこかの住所とその周辺地図が映し出されていた。なるほど、こいつがあればなんとかなりそうだ。
「私、とってもワクワクしてます!クリペウス家の方と出会えるなんて!ディジヤ様の巡り合わせに感謝しなくては!」
私はため息しか出ない。
「とりあえず…ゆっくり行くか。急ぎすぎてもまだ人がいそうだし…」
私たちは歩を進めた。しっかしまさか五大貴族と出会うとは数奇な運命だ。




