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アルスストーリア  作者: ればにらのにもの
4章『今はただ、六等星にすらなれずとも』
23/27

地下の冒険その2

「この中すごく涼しいけどどんな結界術使ってるんだ?」

私たちは休息のため第一臨時避難所にいた。その中は外とは打って変わって快適な気温が保たれている。机と椅子をどければ20人ほどが雑魚寝出来るような、それなりに大きいこの部屋を涼しく保つというのはかなり上等な結界を作っているに違いない。

「ん?結界なんか使っとらんで」

「え?」

そんなバカな。電気を変換することでこんなことも出来るのか。あの痺れたり物を黒焦げにしたりするだけの力で。

「お察しの通りこれも電気の力や。電気通してる限り涼しい風を送り続ける機械がここに取り付けられとるんよ」

「ドワーフの技術力は侮れませんね…」

マルクが感嘆の声を漏らす。

「まあ、元々はブレンタの技術なんやけどな」

「それはメリッサ様からも聞きましたが、どうしてブレンタの生活圏では主にならないのでしょう…」

「そりゃあ、魔法が使える奴らが面白くないからだろ」

イサベルの疑問にグレゴが答える。まあそりゃあそうだよな。マルクの家にいた時も似たような話をした。

「私も貴族だって技術の恩恵を受けられるんだから製造しても良いと思う」

「いやでも電気を作るのが足枷になるかも。ここは電気を作る手段があるけど、僕の街基準で考えると川で水車を回すぐらいしか思いつかないよ」

「そもそも日常生活なら初級魔法で事足りる訳だし、よっぽどのことが無い限り電気技術が普遍的になる可能性は低いだろ」

そう言って私は硝子製の水飲みに入った氷をカラカラと鳴らす。

(でも、もしいつでも冷えた酒が飲めるってなら主流化して欲しいなぁ)

椅子から立ち上がり、伸びをする。

「それじゃあ、そろそろ行くか」

十分に休憩は取れた。切り替えて行こうじゃないか。

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「そういやクロエ、アンタもう暑くないの?」

休憩前まで暑い暑いと言っていた彼女が、避難所を出てからやけに静かだ。そう思い声をかけるとビクッと震えた。なんだよ。

「いやー…あのね、あたし気づいちゃったの」

「何に?」

私から目をやや逸らしながら続ける。

「コールド使えばそれなりに涼しくなるんだよねー…あはは…」

コールド、水の初級魔法である。割と多い彼女の魔力を持ってすればずっと唱え続けることぐらい余裕だろう。なんか腹立ってきた。

「ば…バキバキって手ぇ鳴らすのや…やめよう…?ね?ほら、あなた達にも掛けてるからさ」

「まあまあラニ様、クロエちゃん様も先程の休憩で落ち着けたからこそ思い出せたのですよ。拳は解いて、深呼吸してください深呼吸」

イサベルが苦笑いしながら収めてきたので、はぁ、とため息を吐いた。彼女に免じてここは引いてやろう。

「やっぱ魔法はすごいな。今オイラが作ってる途中のやつで、身につける形式の送風機を作っとるんやけども、それは充電切れたらそれまでやからな。魔力がある限りは半永久的に全身涼しいっての羨ましいわ」

「でも魔法のはずぅーっと集中しなきゃいけないし、放置してても風は出るんでしょ?あたしはそっちの方がいいなぁ」

「…考えたはいいものの、材料が無くて頓挫したんやけどな」

やはりというかなんというか、魔法と電気技術は一長一短だ。これがうまく共存できるならそれ以上のことは無いんだがな。まずあり得ないだろう。

「そういやぁ、さっきからなんだかやけに静かだな」

先頭を歩いていたグレゴが口を開き、そのやや後ろを歩くマルクもそれに同意する。

「確かにそうですね。魔物の気配もあまり感じない…少し不気味なくらいです」

「グレーターゴラモス出てくるかもしれへんな」

ハンクは冗談めかしく言うが、シャレにならない。

「そんなこと言って、マジに出てきたらどうすんだよ」

私が若干怒気を含めて言うと彼は少し笑いながら答えてくれた。

「実はさっきのとこで魔物が嫌がる音出す機械見つけてん。それを持ってきたんや」

そう言って手のひら大の小箱のような物を鞄から取り出すが、何の変哲もないただの箱にしか見えない。

「音?そんなの聞こえないぞ?」

「人間の耳には聞き取れへんぐらいの高い音やねん。でも動物には聞こえるんよ。あ、でもリザード族とかエアリア族なら聞こえるかもしれへんな」

ふーん、この箱がねぇ。とグレゴはコンコンと箱を軽く叩く。これまでのあれこれを見ても、やっぱりこれがそれほど高機能だとは信じがたいようだ。ブレンタにも害獣撃退の専門家たちがいないわけじゃないが、こんな小さな物で簡単に出来るなんて、ドワーフは他の種族の数十、下手したら数百年は未来の技術力を持っていることは誰の目から見ても明らかだ。鞄に入るぐらいの小型の爆弾も作るし。

「あっ!あちらを見てください!」

イサベルが声を上げた。その方向を見てみると、明らかに最近出来ただろう岩壁があった。間違いない。これが落盤だろう。

「よし!早く吹き飛ばしましょう、ハンクさん!」

「一応まず安全確認や!岩壁叩いたり、ちょっと大きな声出して反応待つんや!」

ハンクとマルクが真っ先に走って向かい、クロエとイサベルもその後ろから遅れて向かう。私とグレゴは武器を取り出し、後ろから魔物が来ないか警戒した。いまいちさっきの機械を信頼出来なかったのもあるし、万が一に備えて、だ。

やや遠くから見ていたが、どうやら向こうに誰もいないと確認したようで、鞄をゴソゴソと漁り出した。握り拳ほどの球体をいくつか取り出し、岩に設置した。そうするや否や、必死な表情で全員こちらへ走ってきた。なんだか少し笑える光景だなと考えていると、ハンクが叫んだ

「何しとんねん!はよ隠れろ!爆発するぞ!」

我に返って近くの岩陰の後ろに回る。

数秒後、マルクの屋敷で聞いた上級雷魔法の数倍はあるかと錯覚するような、つんざくような凄まじい爆発音が響いた。私は耳を塞いでいたが、鼓膜が破れそうだった。爆発はすぐに収まったが、まだキィーンと耳鳴りがする。体を起こして岩があった方をみると、岩はその姿形をほとんど残していなかった。マルクたちは爆破の成功を喜んでいたが、正直私はゾッとした。

「威力ヤバすぎんだろ…」

「ラニ、俺たちはドワーフを甘く見過ぎてたのかもな…」

グレゴの言葉に流石に同意せざるを得なかった。

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落盤の箇所は六合目の入るすぐ直前だったようで、第二避難所がすぐ見えてきた。先ほどの爆発を聞きつけたからか、何人かの作業員が外でつるはしを持って警戒していた。

「アンタら何もんや!?…ってそこにおんのはハンクか!?」

「何しに来たんや!まさか俺らんこと助けに来たんか!」

「せやせや、このブレンタの人らが協力申し出てくれてここ来れたからな、感謝するならみんなにしてくれや」

男たちは助けに来てくれたのが信じられないという表情をしていたが、実感が湧いて来たのか、喜び始める者の他に泣き始める者もいた。

「皆様のうちで怪我をされている方はいらっしゃいませんか!?私はイサベル!治癒魔法を使えます!怪我の大小は関係ありませんので少しでも怪我をしているなら私の元へ!」

イサベルは作業員たちに呼びかけ、その声に応じて並び出した怪我人たちの治療を始めた。

「まさかお前が来てくれるとは思っとらんかったわ、ほんまありがとうな!葬式も無く土葬されるなんてあの世でも笑い話にもなりゃせんからな!」

「気にすんなよ幼馴染やろ」

外にいた男の1人がハンクの肩を叩きながら嬉しそうに言う。

「ハンクさんの幼馴染もいらっしゃったんですね。よかったよかった!」

「ああ、紹介するわ。メリッサの旦那のウッディや」

へぇ、この人がメリッサの。

「君らメリッサの知り合いなんか。助けに来てくれてありがとうな。嫁と子ども2人残して死ぬとこやったわ」

彼はマルクと固く握手を交わした。

「これにて一件落着ってことよね!疲れたあ!」

クロエがほっと一息吐く。

「グルルギャァァアアアアン!」

和気藹々としていたその場は水を打ったように静まり返った。

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