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アルスストーリア  作者: ればにらのにもの
4章『今はただ、六等星にすらなれずとも』
22/27

地下の冒険

こんにちは。ればにらです。今回もやや遅れ申し訳ございませんでした。来月からはこれまでの投稿時期に戻していけるよう頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。

まだ入って数十分ほどだが、どんどん気温が上がっていた。拭っても拭ってもとめどなく汗が噴き出るので、衣服はぐしょぐしょに濡れ、額にかかる髪は水を浴びたようにまとまっている。こんなのをほんとにドワーフは2日も耐えられるのか。

「あつぅ〜い…」

クロエが舌を出しながら絞るように言っている。

「ねぇ〜…ラニぃ…あついよぉ〜…」

「………………」

「ねぇったらぁ…ね〜え〜」

「私だって暑いわ!引っ付くな余計暑い!」

体を引っ付けてきたので引っ叩いた。

「あだっ!」

フン、自業自得だ。

「そんな暑いならその外套(がいとう)脱げばええやんか。なんで脱がへんの」

「あー…いやー…そのー…ねぇ?」

「なんか脱がれへん理由あんの?犯罪者印付けられてるとか?オイラそんなん気にせんで」

困ったことになったな。遅かれ早かれそのうちバレるのだから今言っておくべきだろうか。だが今言って信用が揺らいでしまうのも困る。

「ハンクさん、実はクロエさんは混ざり物のエルフなんです!」

沈黙を破ったのはマルクだった。クロエは特に目を丸くしている。

「クロエさん、すみません。ですが、ここで言っておくことで混ざり物への偏見が少しでも薄れさせることができると思ったんです」

「だからってそれは博打すぎるだろ!」

「浅はかなのは認めるよ。でも後で知った時にこの救出が自作自演だと言われるのは嫌だろ?なら成功する前に知っておいた方が幾らかいいさ」

ハンクの方を見てみると呆気に取られたような顔をしていたが、ため息をつきながら言った。

「あんなぁ、オイラは混ざり物全体は知らんけど、少なくとも嬢ちゃんよりは長いこと爪弾き者やで?むしろ仲間が増えたみたいな気分やわ」

予想と全く違う反応に驚く反面、どこか納得している自分がいた。確かに彼は幼い頃は持て囃されてはいたものの、それが裏返しされたというどん底を味わったはずだ。そんな彼は生まれた時から差別を受けるような混ざり物に対してどこか共感していたのだろう。

「風が抜けて少しは涼しなるやろ。ほれ、外套外してみ」

言われるがままクロエは自身の髪と耳を晒した。不安そうな表情だ。

「そっちの方が似合っとるで。ああ、でもあいつらには見せん方がええ。ドワーフは変な風習残っとる通り、古くからの話は結構今でも信仰されとるからな」

はっきり言って見直した。いいこと言えるじゃないか。

「…ほなそろそろ行こか!時間は待ってくれへんからな!」

照れくさそうにそう言ってハンクは先へ進んでいった。

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「止まれ!」

歩いていると、ハンクがそう静止した。

「どうしたんだ?まだ着いてないだろ?」

「あれや」

指差した方向を見ると、3匹褐色のトカゲのような生物がいた。だがそいつらはトカゲと比べると大きさは全くもって違ううえに、鋭いクチバシがあり、遠目でも視認できるほどの鋭利な爪が手足に生え揃っていた。それに加えてぎょろりとした爬虫類的な目が生理的な嫌悪感を引き立てる。

「あれがゴラモスですか…?」

「せや。小さい群れやけど、火の玉吐くからな。線路沿いに行きたかったけどしゃーないから迂回するで」

あんな見た目ってだけでも気持ち悪いのに火まで吐くのかよ。そしたらこいつらの親玉はどんな化け物になるんだ。絶対戦いたくない。

「そういえば、今何合目ぐらいなんですか?もう随分と潜っている気がしますが…」

「まだ三合目ぐらいやな。四合目入ったとこらへんにある第一臨時避難所までは景色変わらん」

四合目までは?それじゃあそれ以降は変わるかのような言い草だ。

「四合目からは違うのか?」

グレゴも疑問に思ったようで、問いかける。

「せや。なんでかはわからへんけど、四合目辺りからは壁の色味が今の赤褐色からすごい青っぽくなるんや。それを老人はみんな地獄の入り口って呼んどる」

「縁起でもない名前だな…」

「ただの御伽話から取られただけや。実態は何の変哲もない洞窟よ」

それならいいんだけども…。

とにかく、四合目の避難所は水があるのだろうか。急がないといけないのはわかっているが休息を取りたい。

「ギュルルァァアアア!」

洞窟内に鳴き声が響いた。目を凝らすとゴラモスが1匹こちらを認識している。おそらく岩陰に隠れていて気付けなかった奴だ。

「…まずいで、あいつが仲間呼びに行く前に始末せなあかん!」

「僕がやる!」

ハンクの言葉に間髪入れず、マルクが走り出した。

「背中の真ん中らへんに盛り上がってるとこがあるからそこから貫け!弱点や!」

ぐんぐん加速する彼を見て、ゴラモスは上体を起こし、クチバシをガチガチと打ちつけたかと思うと、そのまま上げた体を叩きつけるように下ろし、拳ほどの火球を吹いた。火球の速度は側から見るとそれほど速くはないが走って向かうマルクからすると倍は早いはずだ。

「くっ、熱っ…!」

しかしマルクは流石の反射神経でギリギリ躱わしてみせた。射程距離はそこまで長くないようで、躱された火球はマルクから数レアル後ろにぽとりと落ちる。

「マルク!避けて!」

クロエの放った2本の矢が、先ほどの火球よりも速く飛びゴラモスの両目を潰す。

「ギュラララァァアア!!!」

「せりゃああ!」

怯んだ一瞬の隙にマルクは地面を強く蹴って飛び上がり、背中を一刺しした。

力なくゴラモスは地面に突っ伏し、動かなくなった。

「早く離れるぞ!今の騒ぎを聞きつけて他の奴らが集まってくる前に!」

勝利の余韻に浸る間もなくグレゴの命令でそこを離れた。

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「ここまで来れば大丈夫かな…それにしても疲れた…」

急いで走った分かなり体力を使った。ますます休息を取りたい。

「もうちょい行ったら第一避難所や。頑張って行くで」

そいつは嬉しい報告だ。足取りも少しは軽くなるかな。

「わぁ、どうやら四合目に入ったみたいですね」

「すごぉい…」

イサベルとクロエの声を聞いて顔を上げると、そこは幻想的とも不気味とも言える光景だった。

赤褐色の洞窟がある地点から青みがかった暗色に不自然に変わっている。硝子片だろうか?キラキラ光るものがその地点から現れており、さらに不自然に溶けた岩まで壁に埋まっている。まるで何者かが強い力で洞窟の環境を変えてしまったようだった。

(これが例のグレーターゴラモスの仕業なのかな…)

私は一抹の不安を抱えつつ、歩みを進めるのだった。

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