表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/87

第74話 白兵戦

 19時42分。

 海上のリンドウ丸に対して、アゲハ号は側面への体当たりを敢行した。


 双方が大きな損傷を受けた。特にリンドウ丸の脇腹にはアゲハ号の先端部が突き刺さり大穴が開いた。もし幸いにしてこの合戦を乗り切ったとしても、元の時代に帰れるかどうかが疑わしいほどの。


 辺りの海に煙が立ちこめる。


 円盤状のアゲハ号。その前方のハッチが開いた。中からはたくさんの兵士が現れた。人間と戦闘型AIが半々ほどの割合。彼らはリンドウ丸に開いた穴から内部に侵入せんとしていた。


 集団の先頭に大きな黒い影があった。ムニョスの守護者、鳥の形を模した最新鋭の戦闘用AI、ブラックウィング。


 リンドウ丸の兵士たちもこれを迎え撃たんと続々と集まって来た。


 その人ごみの中から、ゆっくりとした歩みとともに、銀色の甲冑に身を包んだ金髪の少年、グスタフが現れる。マリア・ヒメネスを守護するAIヒューマノイド。誇り高きリンドウ最強の騎士。


 アゲハの兵士たちが鬨の声とともに、リンドウ丸船内になだれ込む。リンドウ側の兵士たちはこれに対して即座に銃撃を開始した。そして両者が抜刀、白兵戦が始まった。


 叫び声、刃の交わる金属音。銃弾が跳ねて、血しぶきが壁を濡らす。


 ブラックウィングと、グスタフ、両者は乱戦のなか向かい合い、静かに身構えた。


「我こそは偉大なるヒメネス博士の忠実なる騎士グスタフ。ブラックウィングよ、いざ尋常に勝負」


******


 リンドウ丸の厨房ではロッテおばさんやみゆみゆたちが食事の準備をしていた。

 艦内放送からは聞き取りづらい人の声やアラーム音がひっきりなしに流れている。


 何が起こっても、例え敵兵が目前まで迫っていたとしても、食事を作り続けることがロッテの使命。


「おにぎりを運んでね! そう、テーブルに並べておいて。来た人がすぐに食べられるように」


 ロッテおばさんは元気だった。厨房の者や、通りかかる兵士たちを大声で励ました。ときおり冗談を交えて、明るく盛り上げ続けた。


 食事を運んで厨房と食堂を何度も行き来していたみゆみゆは、区切りのいいところでロッテおばさんに声をかけた。


「ロッテおばさん、どうやらわたしは行かないと」


 汗だくのロッテおばさんは満面の笑みをみせた。

「きばりやす!」

 みゆみゆも笑みを返して、厨房をあとにした。


 ロッテおばさんが積みあがったお盆をまとめて落っことして、大笑いしている姿を何人かが目撃している。


 通路をみゆみゆは一人で歩いた。


 ハツは彼女の持ち場の機関室だろうか。彼女のことだ、きっとがんばっている。移動能力を維持するために、現場は死に物狂いだろう。


 こんな状況のなかではあったが、ハツとここまで共に働くことができて良かったと、みゆみゆは改めて思った。


 窓から外の戦闘が見える。砲撃の火柱をかいくぐって飛ぶリンドウの戦闘機。そのうちの一機にみゆみゆは目を停めた。胴体に銃弾を受けたのだろう、煙の筋が見える。少し飛びづらいようだ。


 なにか目印があるわけではなかったが、みゆみゆはあの戦闘機にゴンゾーが乗っているような気がした。

「飛んでおる、飛んでおる。健気に飛んでおる」


 彼女の前に敵の戦闘用AI数体が立ちはだかった。


 こちらはみゆみゆ一人。


 彼女はいまにも自分に襲い掛かろうとする敵をゆっくりと眺めた。そして両手でスカートの裾をつまんで、しとやかに一礼をした。


「お相手いたします。わたしの名前は高桑モスコミュール。みゆみゆって呼んでね」


 それから彼女は小さな声で「ユキナガは無事かのう」とつぶやいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ