第52話 難敵ロルバーン
「なんだあれは」
ユキナガ達の前に現れた、新たな人型AI。
身長は、2mはあろうか。赤い装甲に包まれたボディ、頭部には丸いカメラが3つあって、こちらの動きを伺っている。
両腕の形状が異様だった。二つの砲台を肩から背負っているようだ。
背中が、大きいリュックのような形。
ユキナガはその人型AIを初めて見たが、その形から何をやってくるかは想像できた。
そして実際、その通りのことをしてきた。
両肩から突然球体が二つ射出された。グスタフとブラックウィング目掛けて。
それはかなり高速だったが、両雄は難なく叩き落とした。
「こんなものが、このわたしに通用すると思うか」
「グスタフーっ、逃げろお! すぐに!」
ヒメネス博士が叫んだ。その瞬間、地面に転がっていた球体が爆発した。
「な」
ユキナガはとっさにハツをかばって伏せた。グスタフとブラックバーンは爆発を食らったように見えた。
「グスタフ!」
もう一度ヒメネスが叫ぶ。
「ご心配には及びません、博士」
煙の向こうから声がした。
「鎧があればもっと良かったですが、無くともわたしの防御力は一級品です」
今日のために着飾った彼のウェスタンシャツは少し焦げてしまっていたが、グスタフ自身へのダメージは少ないようだった。
ブラックウィングも翼で防いだようだ。ムニョスは当然の出来事として、自らの守護者を眺めている。
「移動簡易砲台型AIロルバーン。また面倒なのを送り込んできたもんだ。本気でわたしたちを全滅させる気だね」
ヒメネス博士の声が固く強張っている。かなり危険な事態のようだ。
「あの丸い爆弾は時限式なんだね」
ヒメネス博士の横で、ユキナガが尋ねる。
「ああ、着弾から五秒後に爆発する」
ロルバーンはリンドウの重臣たち目掛けて丸い時限爆弾を撃った。
グスタフが自分の仲間の前に立ちはだかり、爆弾を叩き落す。重臣たちが逃げようとしたが、動きが重い。
球体が爆発した。グスタフは爆発を自らの体で受け止めて、重臣たちへの被害を防いだ。
「グスタフ!」
「大丈夫です博士」
ヒメネスの呼びかけにグスタフは答える。彼は悠然と立ち、ロルバーンに向けて身構える。
「ちょっとずつダメージを受けているよ、グスタフ」
「わかっている」
ユキナガの言葉に、ヒメネス博士は戦況をにらみながらうなずく。
今度はアゲハの関係者に球体が放たれ、ブラックウィングが彼らをかばった。そして爆風を浴びる。
グスタフが赤黒い球状の光線を放つが、ロルバーンは見た目よりも機動性に優れてて、ひらりとかわしてしまう。
「仕方がない」
「ヒメネス博士?」
ユキナガは博士の顔をみた。
苦戦するグスタフに、ヒメネス博士が叫んだ。
「人にかまうな! 多少の犠牲は仕方がない。なんとしてもロルバーンを討ち取れ」
全ての責任を負うリンドウ船団の長として、覚悟の命令を彼女は騎士グスタフに与えた。
「それはやめときな」
そのとき、ユキナガが彼女の前に立った。
「なんだユキナガ氏、これがわたしの仕事なのだ」
「およしなさい。泣きそうじゃないですか。あなたにビジネスライクはまだ早いのでは。自分のせいで誰かが傷つくことが、そんなに恐ろしいんでしょ」
「君に何が分かる」
「年寄りに任せろと言っています」
ロルバーンが新たに爆弾を放った。ブラックウィングが受け止める。転がる球体の爆弾。
その爆弾に向かって、ユキナガが駆けだした。
「ユキナガ氏やめろ!」
ヒメネス博士が叫んだ。
「間に合え!」
まるでバント処理のように、ユキナガは丸い爆弾を拾った。そしてそれをロルバーンに向けて投げ返した。
爆弾はユキナガとロルバーンの中間で爆発した。
「ぐはっ!」
「ユキナガくん」
ハツがユキナガの元に駆け寄る。
「怪我をしましたね」
「まだ動けるよ」
「あなたはバカなことをする。あきれてものも言えませんよ」
「君は離れていて。僕が何とかする」
「えー、どうしよっかな。わたしもおつきあいしてあげても構いませんが」
「バカかよ」
「あなたが言うな」
ふたりは互いに微笑んで、立ち上がった。
正直勝てる可能性は少ない。
でもふたりは戦うことに決めた。
「君と野球ができて良かった」
ハツは頷く。
これで最後なら仕方がない。
そのときだった。
ユキナガとハツの前に立つものがあった。
黒くて長いツインテール、ピンクのインナーカラー。
みゆみゆだった。
「やれやれ、ユキナガにお仕置きするために来たというのに、えらい場面に出くわしたものじゃ」
「ミユ、来たのか」
「お前が勇敢なのはわかった。だがここは引け。ユキナガに当たったらと思うと、わたしは攻撃ができない」
「え……?」
ロルバーンの砲身がみゆみゆに向いた。
「逃げろミユ!」
ユキナガが叫んだその瞬間、みゆみゆの口から、すごい勢いで炎の帯がロルバーンに向かって放射された。
ロルバーンは一瞬で炎に包まれる。広範囲の放射はよけようがなかった。
みゆみゆは頬をすこし膨らませて、その形のいい口から炎を放ち続けた。




