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第45話 ハツの一日

AM6:00起床。


 リンドウ丸機関室に勤務する者たちの寝床は、2段ベッドが連なる狭い部屋で、人間もAIヒューマノイドも一緒だ。


 女性の姿かたちをしているのはハツだけなので、初日は男子諸君がなんだかもじもじしていたようだったが、すぐに気にされなくなった。


 ハツの一日が始まる。


AM6:30朝食


 長机がたくさん並ぶ大食堂に、人間とAIヒューマノイド類が食事をするために集まる。


 お盆をもってみんなで並ぶ。


 ハツの所有者、厨房勤務のユキナガは、シチューの配膳を担当していた。


 白いエプロンに白い帽子。


 ハツに気づくと、ユキナガはマスク越しに微笑み、彼女のシチューを他の人へよりも大盛にしてくれた。


 みゆみゆはごはん係だった。しゃもじで大きな炊飯器からごはんをよそう。


 彼女もまた、ハツにはごはんを大盛にしてくれた。ハツのお盆の上は、とても食べ盛りな感じになった。


 ハツがテーブル席について、配膳をするふたりのほうを振り返ると、みゆみゆがユキナガに近づき、背の低い彼女はユキナガを見上げてなにやら話しかけているところだった。


 また彼は怒られてしまうのだろうかと、ハツは心配になったが、みゆみゆは話が終わってユキナガから離れるときに少し笑っていた。


 互いに軽い冗談でも交わしたのだろうか。大丈夫そうでハツは安心した。


AM7:30業務開始


 深夜シフトの者たちと引継ぎを行う。終わるとそれぞれが配置につく。


 ハツの持ち場は機関室のオペレーター。機関室と司令塔との円滑な意思疎通を図ることが役目だ。


 司令塔からの指示を正確に機関室のスタッフに伝達し、エンジンの状態などを正確に司令棟へと伝える。


 基本的には司令塔にもオペレーターがいて、双方のオペレーターどうしのやり取りが主なのだが、たまにヒメネス博士が直で話しかけてきたりすることもある。


PM12:00 昼休み


 昼食は軽めに済ますことが多い。1時間の昼休み。


 船が安全な場所に滞留しているときは甲板に出て寛ぐことが許可される。


 晴れた日は大勢の乗組員たちが思い思いの時間を過ごす。


 先日ユキナガとハツがキャッチボールを披露してから、乗組員たちの間でキャッチボールが流行り出していた。


 船外で活動している誰かがゴムボールを手に入れてきて、昼休みの甲板で遊んでいる姿を近頃よく見る。


 ハツも機関室の面々と素手でキャッチボールをした。彼らともだいぶ打ち解けてきた。


 ユキナガが通りかかって、キャッチボールの様子を遠くからしばらく眺めてから去っていったことがあった。


 もうほんの少しだけこっちに近づいてきてくれれば、彼のこともキャッチボールに参加させたかったのだが、微妙に遠かったし、ほかの乗組員の相手をしていてタイミングを逸してしまった。


 このとき、遠目だったのではっきりは言えないが、楽しそうにキャッチボールをして遊ぶ乗組員たちの姿を見て、どうもユキナガは感激して泣いていたような気がする。むしろ号泣していたようにすら思う。


 天気のいい日の甲板は、ハツにとっても好きな場所だった。


 この前、大きな柱の陰でチューしている男女を見つけた。


PM16:30 業務終了


 夕方シフトの者に引き継いで今日の業務終了。


 3交代のシフトなのでオペレーターも3人いる。


 勤務外の時間は割と自由に過ごすことができる。夕食は食堂で各自が好きな時間にとる。


 この日は、娯楽室のようなところでみゆみゆと待ち合わせをして、ふたりでおしゃべりをして過ごした。


 この時間のユキナガは一人で図書室に向かうこともある。今日もそうだろうか。


 ヒメネス博士が立ち寄って、ハツたちを見つけた。


「ハツちゃん、昨日もありがとう。また明日も頼むね」


 ハツはここ最近、何度か『ヒメネス博士のお使い』を頼まれていた。


「わかりました。お役に立てて何よりです。なんでか、どこで何をしてきたのか覚えていないんですけどね」


「記憶の損失がまだ起こるんだ。何だろね? でもハツちゃんのおかげでわたしは凄く助かっているよ」


 ヒメネス博士が去ってから、隣のみゆみゆがつぶやいた。

「妙じゃな」


「え、なにが?」


「軍において、上官がAIヒューマノイドに指令を出すときは所有者を通して行うことが通常じゃ。今のように直接の依頼は、厳密には命令系統を守っていないことになる」


「ああ、そういえばそんな規則をわたしも聞いたことがあるような。でも、実際のところ、わたしとユキナガくんは機関室と厨房、所属先が違うからどうしても命令の規則、原則をきっちり守ることは難しいよね」


「だからそれが妙なのだ。まわりを見てみろ。人間とAIヒューマノイド、どのペアも所属はみんな同じだ。同じ場所で同じような任務にあたっている。おぬしら、わたしに言われたくはなかろうが、あまり聞かないケースじゃぞ」


「そうなんだ。全然気にしていなかった」


「のんきじゃの、そなたは。わたしには、ヒメネス博士が直接ハツを使いたいが故のこの状態に思える」


「まじですか。陰謀のニオイじゃないの」


 ハツがどこまでも動じない口調なので、みゆみゆも笑うしかなかった。


「のんきじゃの」


PM10:00 就寝

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