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第40話 パーティへの乱入者

 リンドウ丸の船内に騒がしい警報が鳴り響いた。


 船内のどこか遠くで聞こえた爆発音。


 パーティー会場に被害はなかったが、ほんのすこし煙の臭いが漂ってきた。


 リンドウとアゲハ両方の乗員たちの顔に恐怖が浮かんだ。明らかに何かトラブルが起きた。


 誰かが広間の出口のほうへ動いた。それにつられるようにあわてて数名が移動を始めた。


 パニックが発生する寸前だった。


「はーいみんなー、みゆみゆでーす!」


 このとき広間の中央まで駆けだしたのは、アイドル型AIヒューマノイドのみゆみゆだった。


 ユキナガは、走るみゆみゆの、ツインテールの黒とピンクがとても美しく揺れたことをのちのちまで覚えている。


「何かあったみたいですけどー、大丈夫ですよー! いま誘導係さんが指示してくれますからねー。誘導係さんどこー、あ、いた! 手を振って、手を振って、ほらあのひとあのひと、それではよろしくで~す!」


 怯えていた人々はみゆみゆの明るい声に拍子抜けした感じになって、落ち着きを取り戻した。


 ヒメネス博士がみゆみゆに感心した。

「おー、やるやる」


「彼女もまた豪のものというわけですね。博士またあとで、僕はハツのそばに行きます」

「わかった」


 ユキナガがヒメネス博士から離れると、入れ替わるように騎士グスタフが素早く博士のものへ駆け寄った。すれ違いざまグスタフはユキナガをにらんでいた。


「あいつはヒメネス博士ガチ勢なんだろうなあ。ハツ、無事か?」

「はいな」


「またこの前の移動型爆弾みたいなやつかな」

「どうでしょう。今回はハッキングしてないみたいです」


 どこかでガタゴトと音がした。その音はたちまち大きくなり、小さいなにかが広間に飛び込んできた。

 

 それは茶色い人型の物体で、大人の身長の半分ほどの大きさ。鎖帷子と兜を身に着け、両腕の先には木槌のようなものが取り付けられていた。


 うるさい音をまき散らしながら走り回り、テーブルやいすなどを手当たり次第に木槌で殴りつけ壊しだした。


 一度落ち着いた乗員たちから再び悲鳴が上がる。


 グスタフが叫んだ。

「小型戦闘員型AIヒューマノイド『シュナイダー』だ! くそ、なんでこんな奴がここにいる。ヒメネス博士、ご指示を!」


 ヒメネス博士はにやりと笑ってグスタフに向かい告げた。


「我が騎士グスタフ、リンドウ丸に侵入した異物、シュナイダーを排除せよ」

「御意!」


 グスタフはシュナイダーに向き直り、すばやく剣を構えた。

 剣先に赤黒い光が発生した。


 ユキナガが叫ぶ。

「ばかやろう! こんな人が密集している中で光線を撃つきか!」


「くっ」

 思いとどまるグスタフ。


 ユキナガはテーブルの上にごちそうとともに並ぶ食器や瓶などを素早く見回した。


 そしてそのうちの一つを手に取った。


 グスタフは剣による攻撃でシュナイダーを仕留めようとしていたが、小型のシュナイダーは敏捷性ではグスタフをも上回り、なかなか的を絞らせない。


 グスタフがとまどって一瞬のスキが生まれた時、シュナイダーは大きく横に飛び離脱しようとした。


 その先には女性がいた。

「きゃー!」

 女性は頭を抱えてしゃがみこんだ。


 みゆみゆは身構えて戦況を見つめていた。するとその横をユキナガが通り前へと踏み出した。

「危ないユキナガ、近づいちゃだめ!」


 彼女は思わず手を伸ばした。


 しかしその手はユキナガに触れることはなく、空を切った。


 ユキナガはステップを踏んで、女性に襲い掛かろうとしたシュナイダーに向けて、丸い小瓶を投げつけた。


 瓶が風を切る音が、広間にいた人々にはっきりと、くっきりと聞こえた。


 浮き上がるほどのスピンがかかった小瓶は超スピードでシュナイダーの頭部を捉えた。


 大きい音がした。


 シュナイダーは動きを止めた。そしてその場に崩れ落ちる。


 装甲に包まれた頭部がぐにゃりとへこんでいた。


 広間に静けさが戻った。それから人々の安どのため息と、ユキナガは今何をしたのだという驚嘆の声が上がり出した。


 グスタフはその場に茫然と立ち尽くしていた。

「なんというスピードか。このわたしが反応できなかったぞ」


 ヒメネスはユキナガに駆け寄り、彼の肩をぱんと叩いた。

「なんだよユキナガ氏。凄いネタを持ってんじゃん。結局最後に全部持ってっちゃって、ずるい奴だね」


 みゆみゆは今見たことが現実とは思えず戸惑っていた。

 ハツがそばに来て、「わたしも何か投げたかったな」とのんきにつぶやいた。

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