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第20話 ハツとみゆみゆの、お料理対決

 試験会場のマンションに戻ると、ロッテおばさんがにこやかに出迎えてくれた。


「さあハツちゃん、きばりやす!」


 みゆみゆこと高桑モスコミュールはハツよりも早く戻ってきていて、すでになにか野菜を切る作業を始めていた。ハツの対戦相手。


 とんとんとリズミカルな包丁の音とともに、みゆみゆはハツに声をかけた。

「お帰り~、いい材料は買うことができたかな? がんばろうね~ハツちゃん♪」


 このふわふわなAIヒューマノイドに勝たないと、ハツは時空移動戦艦リンドウ丸に乗ることができない。


「どうも調子狂う子ね。それじゃあまあ頑張るとしますかね」


 ハツは備え付けてあった三角巾で髪の毛を包んだ。人間よりは抜け毛が少ないけれども、料理を食べる人が嫌なきもちにならないように。


 まずは米を研いで炊飯器をセットした。


 炊き上がるのは制限時間ギリギリ。それまでにほかの料理を準備する。


 シイタケとレンコンで煮物を作る。これも時間ギリギリまで煮込んで味をしみこませる。


 玉子焼きを作って細切りにした。さらに分けてわきに置いておく。


 エビをさっとゆでる。鮮やかな色がくすまないように。


 かにかま、いくらの醤油漬け。買ってきた食材を準備する。


 酢もすぐ手の届く場所に置いておく。これであとはご飯が炊けるの待ち。



 気づくとヒメネス博士が部屋の中にいてハツの料理する様子を眺めていた。

「ちらし寿司だ。最高じゃないか」


「これはヒメネス博士いらっしゃいませ。お時間があればどうぞ一緒にご試食を」


「やあロッテおばさん、そうさせてもらうよ。おなか減っててさ。あっちこっち並行して見て回っているから忙しいのなんの」


 暇に見えるけども? そのやりとりを聞きながらハツは鶏肉に味付けをしていた。


 ハツは油を適温に熱する。

「鶏のからあげね」


 ロッテおばさんがハツを見守っていた。


 揚げる作業をしつつ、横目でみゆみゆの様子を伺うと、彼女はハンバーグにポテトサラダと、洋食系のメニューを手際よく作っていた。腕は確かなようだ。


 レンジがチンと鳴った。みゆみゆは中から取り出したいくつかのカップを冷蔵庫に移す。


「プリンじゃん、いいね」

「わたしの作るプリンちゃんはおいしいよ~」


 ハツが声をかけるとみゆみゆは振り返って微笑んだ。みゆみゆはすぐに次の作業にとりかかった。


 おそらく流れ的にヒメネス博士の意見で勝敗は決するのだろう。


 和食と洋食どちらが彼女の好みだろうか。


 若い女性だけにみゆみゆの作るプリンはポイント高そうだな。


 そう考えながらハツはプリンの冷やされている冷蔵庫をちらりと振り返った。


(あれ……?)


 冷蔵庫のドアがほんの少しだけ開いていた。


(なにやってんのよ、あのふわふわメイドちゃんは)


 さっきみゆみゆは冷蔵庫のドアを閉め忘れたのだ。


 それじゃプリンがちゃんと冷えない。固まらない。駄目じゃないか。


 ハツはみゆみゆに声をかけようかと思ったが、それもなんだか面倒くさくて、何かのついでであるかのように冷蔵庫に近づいて、ぱたんとドアを閉めなおした。


 まったくもう。


 ごはんが炊けると酢や具材を混ぜ合わせた。


 それから大きな皿にレタスを敷いて、その上にたっぷりと唐揚げを敷き詰めた。


 何とか完成。


「しゅ~りょ~」

 ロッテおばさんののんびりした声がタイムアップを告げた。


 ふたりの料理が並べられたテーブルに、ハツとみゆみゆは並んで座った。


 テーブルの向こう側に、試食をするヒメネス博士とロッテおばさんが座った。


 ハツは横に座るみゆみゆに小声で話しかけた。

「ねえ、ちなみにあなたはどういうタイプのAI? メイドさん?」


「ん-とね。みゆみゆはアイドルなの」

小柄なみゆみゆは、少しハツを見上げながら答えた。


「メイドさんぽいけど」

「それは事務所の方針、みたいな?」


「へえ……。アイドルタイプでも料理はとっても得意なのね」


「ありがとっ。天然だけれども家事が上手っていうギャップに、需要があるとかないとか?」


 それも事務所の方針か。


 ヒメネス博士とロッテおばさんが試食をはじめた。


 ハツとみゆみゆは試食の様子を眺めていた。人間たちは黙々と食事をしている。


 うまくできただろうか。


 コックスキルを使うのは久々だったが、大きなミスはなかったはずだ。


 自分の作ったゴハンに二人は喜んでくれているだろうか。


 やがて食べ終わり、ヒメネス博士は口をナプキンで拭いながら2体のAIヒューマノイドに向き直った。


「じゃあさっそく試験結果を伝えようかね。田中ハツ、君は残念ながら不合格だ」

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