九十二ニャン 突然の一大事
猫と一番合う食べ物といえば、やはり『魚』
『猫』と『魚』とは、古来から切っても切り離せない縁にある。
現代において、キャットフードや猫用おやつが日に日に進化している状況にも関わらず、何故猫が魚を追い求めるのか・・・
それは、一種の『本能』なのかもしれない。
大昔、まだキャットフードなんて生まれていなかった時代では、魚は猫にとって、貴重な栄養源であった。
だが、どんなに時代を経ても、猫が魚を求めるのは、ちょっとしたロマンを感じる話。
猫用おやつのフレーバーや原料も、魚介類が多い。
肉等や野菜等もあるが、やはり大半の猫が喜ぶのは、魚系のおやつやご飯。
かつお家では、滅多に『魚料理』が出ない。スーパーに通わないから、当たり前なのかもしれないが。
ただ、年に何回か、ヤマブキ達に『生のお刺身』をあげる事がある。
スーパーの安売りのついでに、かつおが買って来てくれるのだ。
新入りのまんぷくにとっては、『初・お刺身』だ。
ヤマブキ達は、『ご飯やおやつよりも魚が好き!!』・・・という感じではない。
飼い主であるかつおに似たのか、ヤマブキ達も、特にコレと言って食にこだわりがない。
もちろん、毎日のご飯はきちんと食べるし、おやつをねだる時もある。
良く言えば、『好き嫌いがない』
だから、魚も好き嫌いする事なく、ヤマブキ達は出されると食べてくれる。
「ハイ こんにちわー! 配信ニャンの黒子、かつおでーす!
今回はですね・・・・・
ジャジャン!! マグロのお刺身ー!!
ねー、ヤマブキ達は食べますけど、まんぷくはどうなんだろうって思ってですね。
まんぷくー! おいでー!」
かつおがまんぷくを呼ぶと、キャットタワーの最上階でレイワとのんびりしていたまんぷくが、颯爽とタワーから降りて、かつおの足元まで来る。
かつおがまんぷく抱きかかえると、彼のもう片方の手に持っているパックが気になる様子で、鼻でツンツンと突いていた。
「食べられるかねー、楽しみだねー!」
かつおは早速、マグロのパックを開けて、5匹分の適量を用意する。
その間にも、猫達がかつおの足元で円陣を組んでいた。その視線が、地味に結構苦しいのだ。
可愛いのだが・・・
それに、そうゆう視線に煽られるのも、かつおの楽しみでもある。
前にそれを椿に話したら、案の定・・・というか、冷ややかな目で見られたのだが。
かつおはスプーンや計りを使いながら、慎重に慎重に、1匹ずつあげる量を調整する。
まんぷくの場合、『初・お魚デビュー』である事も視野に入れて、サイコロ状に切った後に、また更に微塵切りにした。
いわゆる『つみれ状態』だ。
やはり飼い主としての経験が多いかつおでも、初めての事には緊張してしまう。
そのドキドキ感も、飼い主としての醍醐味でもある。
ちょっと面倒かもしれないが、自分の得意分野の試行錯誤ほど、楽しい作業はないのかもしれない。
「さーってっと! かんせーい!!」
時間はかかったものの、どうにか5匹分のマグロを分ける事ができたかつお。
まず、ヤマブキ達4匹には普通にいつも通り与えて、まんぷくには少しずつ、かつお自身の手からあげる事に。
4匹分を並べると、颯爽とヤマブキ達は餌入れに喰らいつきながら、クチャクチャと夢中で食べ始める。
硬い餌やおやつを食べる時のカリカリ音も好きだが、おやつや魚を食べている時のクチャクチャ音も好きなかつお。
音もそうだが、やはり美味しそうにモグモグ食べている姿は、いつ見ても飽きないもの。
かつおは4匹をバッチリカメラで撮りながら、今度はまんぷくの番。
まんぷくを抱えると、かつおはつみれにしたマグロを少しだけ人差し指につけて、まんぷくの顔に近づけてみると。
すると、まんぷくは積極的に鼻を近づけ、匂いを嗅ぐのに夢中な様子。
この様子を見たかつおは、「イケるかも・・・?!」と思い、口に近づけると、まんぷくはその小さな舌で、かつおの人差し指をぺろりと舐めた。
これに喜んだかつおが、今度はちょっとちっちゃな『塊』をまんぷくに差し出してみると、それもまんぷくはパクリと食べる。
「おぉー!! 食べた食べたー!!
よしよしよし!! もっと食べようなー!!」
そう言って、かつおは一旦まんぷくを膝の上から床に下ろして、横に置いていたまんぷくの餌入れを手に取ろうとする・・・が、既に彼の後ろで、レイワ達がまんぷくの分まで狙っている。
特別好きなわけでもないのにつまみ食いしようとするのは、意地らしいけどまた可愛い。
「だーめ! これはまんぷくの分!
君達はついさっき・・・・・
「ゲアウゥゥゥ・・・・・・・・・・」
レイワ達に気を取られていたかつおの後ろで、苦しそうな声が聞こえる。瞬時にかつおが振り返ってみると、そこには・・・・・
嘔吐しながら 苦しそうにしている
まんぷくの姿があった
「まんぷくぅ!!!」
かつおは一目散にまんぷくへ駆け寄ると、まんぷくは体を震わせながら、息を荒げていた。
これはさすがにマズイと感じたかつおは、とりあえずまんぷくの背中をさすりながら、スマホで動物病院に連絡を入れる。
その間にも、まんぷくはだいぶ苦しそうにしていた。
まんぷくの餌入れはひっくり返り、あちこちにマグロのつみれが散乱しているものの、レイワ達がその残骸を食べる事はしない。
食べ終えてキャットタワーで一息ついていたヤマブキも、まんぷくの側に駆け寄る。




