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八十五ニャン それは まだ一匹目が幼い頃だった

「ヤマブキー! おやつにしよっかー!」


『おやつ』や『ご飯』という言葉に反応して、鳴いたり飛び跳ねたりする動物は、猫だけに限らない。やっぱり、人間を含めて、皆は食べるのが好きなのだ。

だが、ヤマブキの場合は、鳴いたり飛び跳ねたりして、喜びを表現するわけではない。

ただひたすら、かつおの後をついて行く。

そして、おやつの準備をしているかつおの隣で、お利口に待ち続ける。まるで置物の様に。

あまりにも利口すぎて、かつおが心配してしまう程。

ただ、やはり専門家(獣医)からの『異常ナシ』という言葉は、自分の判断よりも信頼できた。

その言葉を聞いて、改めてかつおも、安心してヤマブキとの生活に没頭できた。

必要以上の不安をするだけ、無駄な事を学習したのだ。


そもそも、彼がヤマブキの態度を過度に心配する理由としては、猫が心の底から好きだから、だからこその心配・・・・・・だけではない。

最初に飼った猫、『ポチ』は、よく鳴く・・・とまではいかないが、鳴いて色々な感情をアピールする子だった。

機嫌が悪い時には野太い声をあげ、ご飯やおやつの時に出る鳴き声は、野太い声の何倍も高い声で鳴く。

ポチを飼い始めた頃、まだ幼く、情報収集が上手くできなかったかつおは、

『動物が鳴く=不安・不満がある』という意思表示なのかと思っていた。

動物病院でも、鳴きながら父の治療を受けている動物達を、かつおは何度も見ていたから。

それに、その頃のかつおはまだ小学生。

パソコンすらも、まだまともに扱えない。だから、調べ物や悩みは、人に聞くしか方法がなかったのだ。


そんな幼い頃のかつおを救ってくれたのが、クラスメイトの両親が経営していた『ペットショップ』

かつおは心に詰まり続けている疑問を解消する為、クラスメイトの両親からアドバイスを貰う事にしたのだ。

自身の両親に聞いた方が早いのは、かつおも心の中では理解している。でも、相談したくても、できなかった。

それは、仕事で忙しい両親を邪魔したくない気持ちもあった一方、「自分が全部面倒を見る!!!」と豪語してしまった為、相談するのが恥ずかしかったのだ。

子供ながらの『気配り』というか、『プライド』である。

後々になってみると、「なんであの時、両親に相談しなかったんだろう・・・」と思ってしまうのも、また青春。

そして、クラスメイトの両親、ペットショップの主人から、猫が何故鳴くのか、その理由や、鳴き声の種類についても、しっかり学んだかつお。

ポチが鳴いているのは、悲しいからではない、苦しいからではない。自分のお世話が嫌なわけではない。

むしろ、嬉しくて、その気持ちを鳴き声で表現しているだけ。

その事実を知ったかつおは、涙を流しながら、ペットショップの主人に頭を下げ続けた。

かつおはずっと不安だったのだ。


自分が嫌いだったらどうしよう・・・

一生懸命頑張っていたつもりだったのに・・・

でも、投げ出したくない。そんなのかっこ悪すぎる


そんな思考を、毎日毎日、グルグルと巡らせていた。

もう、苦しくて苦しくて、風邪で40度の熱を出した時よりも、かつおにとっては苦しい心境だったのだ。

でも、彼の不安は、むしろ現実では真逆だったのだ。自分の愛は、しっかりポチに通じている事が分かった。


そんな先代のポチとは違い、ヤマブキの場合は、喜びを『鳴き声』ではなく、『態度』で表す。

最初はポチの時と同様、困惑していたのだが、ふと目に入った『動物バラエティ番組』で、とあるお笑い芸人が言っていた

『愛情表現も人それぞれ、動物それぞれ』

という言葉を聞き、納得したかつお。

それに、ヤマブキを年に何回か、健康の為に動物病院に連れて行っているのだが、何年経っても『健康そのもの』と、獣医から何度もお褒めの言葉をいただいている。

人間も同じだが、ストレスが溜まっている状態では、健康になりたくてもなれない。

ブラック企業に勤めている環境では、いじめられている環境では、体調と精神を崩すのは目に見えている。

だが、逆に考えると、『健康体である事=ストレスがさほど無い環境』と言える。

実際かつおも、高校受験の際、ストレスでついに体調を崩した時、医師から忠告を受けていた。


「いいかい、体調が崩れた時は、すぐに『ストレスの原因』を探るんだ。

 体調を崩してしまえば、勉強も、進学も、就活も、仕事も、上手くいく筈がない。

 健康は、お金では買えない、貴重で大切なものなんだ。

 一度ストレスで参ってしまえば、治すのには何倍も、何十倍も時間を要すかもしれない。

 だからこそ、体調を崩した時点で、今頑張っているのは途中で止めなさい。


 休む事は、決して逃げているわけでも、怖気付いているわけでもない。

 たった一つの体と心を守る、至極当然の行動なんだ。」


かつおの場合、成績が良くても、プレッシャーに負けるタイプ。

その証拠として、ポチを飼い始めてから、かつおの体調はすこぶる良くなり、体調を崩す事は滅多になくなった。

だが、ポチが亡くなってからは、病弱が再発。

ポチが亡くなったタイミングが、丁度受験に差し掛かる頃合いだった為、成績は無問題でも、受験会場に行けるかも分からない体調がずっと続いていた。

その後、両親が買ってくれた『育成ゲーム』や『動物動画』を眺める事で精神を落ち着かせ、高校へは無事入学。

そして、大学二年生になった頃、実家でひっそり生きていたヤマブキと出会い・・・という流れ。

ヤマブキを家に招き入れてからは、かつおの体調は以前にも増して元気になり、両親でさも驚くレベル。

そして、同時に両親はこう思った。


『私達が動物病院に勤めているからこそ、息子にも影響を与えたんだな・・・』


と。


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