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八十三ニャン 洗濯日和

昼下がりの土曜日。あちこちで、子供達が外で元気よく遊ぶ声が聞こえる。

子供達の外遊び日和、それは洗濯日和でもある。

あちこちの家の物干し竿には、洗濯物が列になって干されていた。

洗濯物の入った籠を持って往復して、ため息をつく女性の声も、何処からか聞こえる。

かつお家には『乾燥機』がある為、外には干さない。

・・・というか、前に干していた洗濯物を数日間干しっぱなしのまま忘れて、椿に叱られた事があった。

叱られても、当然なのだが・・・

かつおの場合、ただ単純に忘れていただけ。

数日間、窓から洗濯物がブラブラと風に煽られている光景を眺めていても、全然気に留めなかった。

この醜態に、さすがの椿も「あんたはある意味凄いよ・・・」と、皮肉混じりに呆れられる程。

それ以来、外に洗濯物は干さず、乾燥機に頑張ってもらっている。

かつお自身、椿から注意された事が相当心苦しかったのだ。

成人男性が、まだ幼馴染の力を借りないと生きていけない・・・なんて、両親に言ったら泣かれそうだった。

洗濯物の干しっぱなしは、単にだらしないだけではい。

今は男性であっても、干してある衣服が盗まれる・・・なんて、珍しくない話。

「こんな地方で、そんな事件あるわけが・・・」と、叱られた当初は思っていたかつお。

だが、もうどんな事件がどんな場所で起こってもおかしくない時代になった事を、ニュースを見ているとヒシヒシと感じるようになった。


かつお家の庭はそこまで広くない。

リフォームする前は、庭木が何本も植えられていた程、広くて綺麗な外観だった。

だが、家の主がいなくなると、当然その綺麗な庭を手入れする人もいなくなってしまい、その結果、庭は雑草だらけになり、木の枝は生え放題。

ホラーゲームの舞台になってもいい程、不気味な場所になっていたのだ。

廃れた広い屋敷を探索・・・というのは、ホラーゲームではよくある流れ。

そこで、地方行政で取り組まれていた『道路拡張』を機に、その庭の規模を三分の一にまで狭くした。

狭くしても、他の家の庭と同じくらいの広さになっただけで、元々草いじりにも興味がなかったかつおにとって、庭が広くても狭くてもどうでもいい話だった。

むしろ、広い庭をただ放置してばかりなのも、宝の持ち腐れ。

庭が広いと、雑草抜きだけでかなり体力と時間が必要になる。

人を雇って庭の管理を任せるよりは、削った方が後々面倒にならない。

かつお家のリフォームで一番お金を使った場所は、実は家ではなく庭だったりする。

ただ、庭木をその土地から除去するのにも、色々とお金がかかるのだ。

かつおはその庭に『人工芝生』をびっしり敷き詰め、雑草が生えないようにしている。

そして、天気がいい日には、そこでのんびりするのが好きなかつお。

いくら人が苦手なかつおでも、時々太陽の光に当たりたい。

地方では日光を遮るような『ビル』や『巨大な建物』はない為、日が大地に直接降り注ぎ、冬でも日が照っていれば暖かく感じる。


「よっこい・・・しょっと!!」


かつおはカゴいっぱいに洗濯物を詰め、庭に来る。

だいぶ洗濯に時間がかかったのか、かつおは長袖を捲り上げ、じんわりと汗をかいていた。

そして、案の定・・・その洗濯物の中身は、全部『猫用』

『猫用クッション』『猫用の羽毛布団』『猫用ベッド』『猫用ぬいぐるみ』・・・等。

人間用の服や下着なら、乾燥機にポンポン入れられるのだが、ペット用になると、人間の服と違い大きさも重量も桁違いな為、乾燥機の事も考えると、やはり自然乾燥が無難である。


「これもだいぶボロボロになってきたなー・・・

 でもコレ、ネネのお気に入りだし・・・」


人間でも、お気に入りの服はどうしても捨てられないもの。

どんなにボロボロになっていたとしても、愛着や着心地の良さから、見窄みすぼらしい格好になるとしても、着続けたい。

だが、それは猫達も同じである。

かつおがベランダに猫ベッドを並べていると、猫達が窓際に群がり、家の中からかつおの様子を観察する。

外にいるかつおももちろん気になるが、外の景色も気になる猫達。

空を飛び回る鳥だったり、フヨフヨと漂う羽虫だったり。とにかく、外には猫の気を引く存在が沢山ある。

『晴れの日にだけ見れる景色』に、猫達も夢中な様子。

そして、この『窓越しのやりとり』も、かつおの好きな遊び。

かつおが雑巾で窓を拭けば、猫達が夢中になって追いかけて来る。

かつおが窓をコンコンと叩けば、猫達が反応してジャンプして来る。

これだけで、半日はずっと遊んでいられるかつお。

だが、通行人からすれば、『空き巣』と間違われても不思議ではない。

そもそも、かつおが『猫動画配信者』である事は、椿と翼、そしてかつおの両親くらいしか知らない。

その為、かつおの家を不審に思っている近隣住民も多いのだ。

かつおが家の中で作業をしていると、近隣住民同士が、そんな会話をしているのをよく聞いている。


「誰かが住んでいるのは分かるんだけど、誰が住んでいるのかしらね・・・?」


「この前、この家から『男の人』が出てくるのを見たけど・・・」


「え? 『一人』なわけないでしょ?!

 こんなに広い家に一人きりなんて・・・贅沢を通り越して寂しいでしょ・・・」


かつおは『一人暮らし』ではない。5匹の猫と、毎日楽しく過ごしている。

少しも寂しくない。いつも猫達が一緒に居てくれるから。

ご飯を食べている時も、遊んでいる時も、眠っている時も、落ち込んでいる時も、楽しい時も。

確かに、かつお一人が住むには、広すぎて勿体なさすぎる規模の家。

だが、猫5匹が一緒に住む事によって、丁度良い広さになる。

そして今日も、猫達はかつお家で『飼い猫ライフ』を満喫している様子。


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