七十九ニャン かつおは多才
かつおは、ひとまず庭に置いてあるホウキを使って、乱舞の如くホウキを振り乱す。
埃がすごい為、目を瞑りながらの作業。途中でホウキの先端があちこちにぶつかっていたが、もう気にしていられない。
1分間、ただがむしゃらにホウキを振り回しただけで、かつおの全身は真っ白になってしまった。
まるで煙の様にモクモクと埃が湧き上がり、一瞬『ボヤ』かと思われてしまいそうな程。
ホウキを見てみると、毛先に埃の塊が大量に絡み付き、これを全部取るだけでもだいぶ時間がかかりそうである。
もう『猫ドアの修繕』そっちのけで、物置の中をどうにかしないといけなかった。
マスクをつけての作業なのだが、それでもくしゃみや咳が出てしまう。
その光景は、まるで『煙突内部の掃除』にも思えてしまう程。
かつおがホウキをブンブンと振り回していると、近くを通りかかった小学生達が、怪しげな目線でかつおを見る。
もうすっかり半袖になった小学生達の自転車のカゴには、サッカーボールだったりバットだったり、色々な遊び道具が詰め込まれている。
今日は天気が良い為、近くの公園で遊ぶつもりなのだろう。
かつおの住んでいる地方には、公園が多い。昔からこの地域は自然豊かな場所である為、その自然と調和した公園には、県外からも色んな人が来る。
公園の花が見頃を迎えれば、地元の記者やテレビ局が取材に来る。
年に何度か、『夏祭り』等のイベントも開催される。
もちろん、かつおは一切参加しないのだが、地元住民として、手伝いの要請が来た時にしか行かない。
かつお家から近い場所にも、遊具はないが広々とした芝生の公園がある。
最近の公園は、『球技NG』な場所もある為、球技で遊べる公園というのは、もう珍しくなってしまった。
ちょっと離れている場所にも、遊具が豊富な公園が、最近オープンした。
オープン初日には多くの家族連れが集まり、かつおの家にもその声が響き渡っていた。
やはり時代が進んでも、子供にとって公園というのは、『最高の遊び場』
そして、子供から大人へ成長すれば、『思い出の場所』になる。
公園に向かう小学生達が不審に思っていたのは、埃だらけになっているかつおではなく、ありえないくらい埃で灰色になったホウキの方だった。
学校の掃除でも、あれだけほうきが汚れる事なんてない。小学生達は、改めて『掃除の大切さ』を学んだ。
かつおが苦笑いしながら会釈すると、小学生達も軽く頭を下げて去っていく。
そして向こうから、「凄かったね・・・」という、小学生達の声が、更にかつおに追い打ちをかける。
確かにかつおは、家の掃除はほぼロボット任せ。
家の中でかつおが掃除する場所は、玄関か浴室くらいしかない。そこにはルンバが行き届かないから。
それでも、小学生達は今も『手作業』で、頑張って毎日学校内を掃除している・・・と考えると、急に申し訳なさを感じてしまうかつお。
本人達は、そんな気は一切ないのだが・・・
(うん・・・しょ・・・と・・・・・
あれぇぇぇ???)
(あははっ! 頑張れ頑張れー!)
かつおが必死になって埃を格闘している間、家の中の猫達は、ロボット掃除機と戯れて遊んでいた。
まんぷくは、まだあまりロボット掃除機に慣れていない為、ちょっとおっかなびっくりではあるが、果敢に立ち向かっている。
時々ひっくり返ったり、尻尾が吸い込まれそうになるものの、ネネやさくらもロボット掃除機と一緒に遊び始める。
『動きが読めない相手』というのは、猫にとっては絶好の遊び相手。
『猫』×『機械』というのは、意外と良い組み合わせなのだ。
しばらくネネとさくらと一緒に、ロボット掃除機と格闘していたまんぷくは、すっかり恐怖心が薄れ、今度はロボット掃除機に乗ろうと四苦八苦している。
その様子を、キャットタワーの上から見下ろしているヤマブキとレイワ。
2匹は、窓の外から見えるかつおの挙動不審な動きの方が気になっている。
いくら目がいい猫でも、かつおがまだ埃と格闘しているなんて、分かるわけがない。
家の中に散らばった埃はほぼ吸い取り、今度は猫達の相手をするロボット掃除機。
(うん・・・しょっと!!
乗れたー!! 乗れたよー、さくらー!!)
(すごーい!! いいなぁー!!)
かつお家のねこの中で、ルンバに乗れるのはヤマブキとネネのみ。
レイワの場合、乗ってしまうとその重みでロボットが動かなくなる。
さくらの場合、乗りたくてもなかなかタイミングが掴めず、いつも空振りしてしまう。
ちょっとコツはいるものの、ロボット掃除機の動きを読めば、ちょっと飛ぶだけで乗れてしまう。
ただ、そのコツがなかなか難しいのである。まるで『自転車』の様に・・・
(・・・あれ? かつおさんが持ってる、あの『赤い箱』・・・何だ?)
(さぁ・・・自分も見た事がないな・・・
・・・? なんか・・・上の部分が開い・・・た??)
埃掃除がひと通り終わり、本題である『DIY』の準備を始めるかつお。
工具箱を開けてみると、だいぶ古くはなっているものの、中には『トンカチ』や『バール』が入っている。
かつおはその中を覗きながら、まだ使える釘やネジの個数を確認する。
足りなかったら、ホームセンターで買い足せばいいだけ。
新しい猫ドアはもう既に通販で注文している為、あとは届くのを待ちながら、準備を済ませておく。
ちなみに、この工具箱は父の『お下がり』
かつおの父は、かつて『日曜大工』が趣味だった。
よく病院に置くキャットタワーや犬のおもちゃ等も手作りしていたのだが、歳をとって病院を閉めてからは、息子であるかつおに譲ってあげたのだ。




