七十六ニャン 大事件発生
ガサガサガサッ
(・・・ん?
お姉ちゃん、お姉ちゃん。)
キッチンでご飯の準備をしている音に気づいたさくらは、ネネを舐めて起こしてあげる。
ネネはあくびをしながらも、さくらと同じくご飯を準備する音に気づいた。
さっきまでぐっすりだったヤマブキもレイワも、ネネとさくらが起きた事で目を覚まし、同時に自分達が空腹である事に気づく。
こうなってくると、いてもたってもいられなくなり、4匹は同時ダッシュで猫ドアへ駆け込んだ。
だが、猫ドアの大きさは、そこまで広くない。通れてせいぜい1匹。
そんな場所に、4匹が同時に駆け込めば・・・・・
「・・・・・・・・・・
・・・・・?
いつもはご飯の準備を始めるだけで来てくれるんだけど・・・
ねぇ、まんぷく。」
(・・・まだ寝てるのか・・・な?)
5匹分のご飯の準備は終えているのに、ご飯を食べる猫達が来ない。
5匹別々にご飯をあげてしまうと、手間が増えてしまうので、かつおは一旦5匹分のご飯を戸棚の上に隠し、猫達が眠っている部屋へ向かう。
まんぷくも4匹を心配して、かつおの後をついて来る。
そして、一人と1匹が見たのは・・・
ガタンッ!!! ガタンッ!!!
「ミャー!!!」
(かつおさーん!!!)
「ミャーア!!!」
(助けてくれー!!!)
「・・・・・・・・・・
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!!」
かつおもまんぷくも、ただただ唖然とするしかなかった。
そこにいたのは、ネネとレイワ・・・なのだが、2匹は『上半身』だけが廊下に乗り出している。
下半身は、まだお昼寝していた部屋の中。上半身だけをバタバタと動かす2匹の鳴き声は、明らかに焦っていた。
そう、2匹は同時に猫ドアを使おうとして、つっかかって動けなくなってしまったのだ。
「え?! え?! え?! え?! え?! え?! え?! え?!
どうなってるのコレ?! どうなってるのコレ?! どうなってるのコレ?!」
かつおにも状況が理解できないなら、まんぷくは尚更理解できない。
まんぷくは2匹の荒れ狂う様子を見て怖くなってしまったのか、リビングへ逃げてしまう。
ひとまずかつおは、ドアノブを回してドアをゆっくりと動かし、ドアの内側がどうなっているのか調べてみた。
すると、ドアの内側では、2匹の可愛いお尻がフリフリと動いている。
だが、必死になって床を引っ掻きながら抜け出そうとしているのか、床に真新しい傷がいくつもあった。
そして、部屋の中では、ヤマブキとさくらが、猫ドアに突っ掛かっている2匹を呆然と見ている。
2匹を助けてあげたい気持ちは、かつおにもひしひしと伝わって来ているのだが、どうすればいいのか分からず混乱していた様子。
だが、かつおもこんな事態の対処法なんて、知っているわけがない。
とりあえず猫ドアに詰まっている2匹の体をチェックするが、何処も怪我はしていない様子。
問題は、どうやって2匹を救出するか・・・だ。
ドア自体を分解して救出するにしても、専門の業者を呼ばないといけない。
それに、「猫ドアに猫が挟まったので、ドアを分解してください・・・!!」なんて、猫愛に満ち溢れているかつおでも、さすがに羞恥心を感じる。
確かにかつお家の事情を知らない人からすれば、どんな状況なのか分からない上に、猫ドアに挟まってしまった2匹が笑われてしまうかもしれない。
かつおは、『業者を呼ぶ』という選択肢を一番最後に回して、まず自分の力でどうにかできないか、確かめる事に。
かつおは深く深呼吸をしながら、挟まった2匹の頭を撫で、思考を巡らせる。
猫に限らず、『物が隙間に挟まっている状況』なんて、人生で誰しもが幾度も幾度も経験している。
そうゆう時、人はどうするのか・・・
例えば、『飲み口で詰まっているラムネのビー玉』を取り出そうとした時、どうやっていたか。
そんな時は、飲み口を取り外す事。つまり、猫ドアを外す・・・という事。
かつおは試しに、部屋からドライバーセットを持ってきて、猫ドアを固定しているネジを全て外してみた。
だが、2匹は全く動けないまま。猫ドアの設計上、この作戦は不発に終わった。
次に、『排水溝の詰まり』を取り出そうとした時、どうやっていたか。
箸で髪の塊を引き抜くか、薬で溶かすか・・・だが、これは参考にならない。
更に思考を巡らせ、『シャーペンの中に詰まった芯』を思い出す。
学生時代、横着してシャーペンに芯をあるだけ押し込もうとして、結局入り切らず、一旦取り出そうとした際、芯が入り口に詰まった時。
あの時は、折れないように『一本ずつ』芯を取り出した。
「・・・・・そうか・・・『1匹』ずつ・・・」




