七十五ニャン 晩御飯の準備
まんぷくも、もうすっかりご飯の時間を『体内時計』で察知できるようになった。
ご飯の時間が近づくと、家の何処にいても、自然とキッチンへ向かうようになった。
動物のなかには、『時計を見て時間を学ぶ』動物もいるが、まんぷくの場合は、飼い猫になってから『体内時計』が成長したパターンである。
野良時代、まんぷくは『太陽の位置』で時間を大体把握していた。
だが、もう自然とまんぷくの体は、かつおの用意してくれるご飯を求めるようになっていたのだ。
家の中にいても陽の光を見る事はできるのだが、体内時計の方が正確。
それに、野良時代は『曇り』や『雨』になると、太陽の位置を把握できないから、時間感覚がめちゃくちゃになって、イライラしてしまう事もあった。
特に梅雨の時期は、湿気も凄い上に、食べ物も全部湿っていた為、その状況で体を壊さなかったのが、もはや『奇跡』である。
その辛い時期を、たった一人で乗り切れたのも、もう一つの『奇跡』なのかもしれない。
その時の思い出は、まんぷく自身も、あまり思い出したくない。
しかし、そんな辛い思い出をかき消すように、かつおがたっぷりの愛情を注いでくれた。
いくら自分が疲れていても、猫達と遊ぶ時間をしっかり用意してくれる。作業中でも優しく撫でてくれる。
いくら自分の作業に没頭していても、編集に集中していても、ゲームに集中していても、猫達のご飯は絶対に外せない。
一応、かつおの家には時間になると餌が出てくる『自動・餌やり機』がある。
だが、それを使うのは、外に出てどうしても自分でご飯をあげられない時のみ。
やはり、自分の手で直接ご飯をあげる事は、飼い主にとっての『特権』でもあり、『義務』でもある。
「みゃーおぅー」
(かつおさーん! ご飯のじかーん!)
「ん?
・・・あっ! もうこんな時間だった!」
5匹で一緒になってお昼寝している最中、まんぷくの体内時計が、夜ご飯を知らせた。
パソコンに向かって、動画の編集をしているかつおの足を、前足でチョンチョンとタッチするまんぷく。
かつおも編集に夢中で、かれこれ3時間はずっと椅子に座りっぱなしのまま、キーボードやマウスをカチカチしていた。
立ちあがろうとすると、ずっとそのままの体制で固まっていた反動で、体のあちこちからバキバキという鳴き声が聞こえる。
そしてそのまま、かつおは上半身を後ろに逸らしながら、「ウゥー・・・・・」と唸り、両手を腰に当てた。
まんぷく以外の猫はというと、お昼寝続行中で、起きる気配がない。
実は、かつおが編集を始める3時間前、思いっきり遊んでいたのだ。
先日、かつおが作った『お手製 猫じゃらし』は、5匹に大好評だった。
時折、戯れるのに夢中で猫同士が衝突して、プチ喧嘩になる事もあった。
だが、かつおも時間を忘れて楽しんでいた。
そして気がつくと、5匹は固まって眠っていたので、かつおが『猫団子』に毛布をかけてあげて、自分は動画編集に勤しむ。
ちなみにお手製・猫じゃらしは、ネットの記事を見ながら作成した。
作り方もそこまで難しくなく、主に必要なのは『手頃な棒』と『布地』
丁度レイワの引っ掻き攻撃でボロボロになった『Tシャツ』があった為、それをハサミで切って『布地』にした。
棒は、ゴミとして出そうと思っていた『三脚の足』があったので、それを有効活用する。
棒を頑丈な三脚の脚にしたのは正解だった、何故ならかつお家の猫達は、皆揃って力が強い。
一回壁を引っ掻いただけでかなり壁が剥がれてしまい、一度毛布をガッシリ掴んでしまうと、かつおがどんなに頑張っても引き剥がせない。
だから、よくホームセンターで売られている『プラスチック製の猫じゃらし』では、すぐに力負けして折れてしまう。
飼っている猫の数が多いのも一因だが、猫達の遊び方にも色々と違いがある。
例えば、ヤマブキ・レイワの2匹は、『掴み技』が主な遊び方。
2匹以外のネネ・さくら・まんぷくの3匹は、『パンチ』が主な遊び方。
ネネ達3匹に関しては、猫じゃらしを壊す様なパワーはそれ程ないものの、問題なのは『掴み技』を繰り出す2匹。
2匹は、一度捕まえた獲物はなかなか離さない。その為、猫じゃらしの先端を掴まえられてしまうと、引っこ抜くのが大変なのだ。
全身を使って、掴まえた猫じゃらしをホールド。
そのままの状態で固まってしまうので、無理に引っこ抜こうとして、威嚇された事もあるかつお。
その結果、2匹に寝業をかけられた猫じゃらしは、まるでチョコ棒菓子の様に、バキッと折られてしまう。
だからかつおは、猫達の猫じゃらしを選ぶ際、持ち手部分がどんな材質で製造されているのかも、しっかり確認しながら選んでいる。
物によっては高い物もあるのだが、数日で壊されたらさすがのかつおでも凹む。
だったら、高くてもいいから長持ちできる道具を買った方が、経済的に良い。
今回かつおが作った猫じゃらし、布部分はすぐ破れてしまいそうだが、もし破れてしまっても、先端を取り替えればいいだけの話。
5匹がその猫じゃらしを気に入った理由としては、やはりかつおの匂いが染み込んでいる布地にあるのかもしれない。
おかげで、普段あまりはしゃがないヤマブキも、今日に関しては4匹に負けずを取らずの動きを見せてくれた。
かつおも遊び過ぎて疲れていたのだが、その時の興奮がまだ冷めず、編集作業に没頭できたのだ。
しかし、さすがにかつおもお腹が空いて、まんぷくと一緒にキッチンへ向かうと、冷蔵庫の中を確認する。
「・・・あ、おにぎりある。これと・・・
・・・あ、椿からもらった漬物もあった。」
かつおはとりあえず、冷蔵庫の中を見て自分の食糧があるかを確認した後、猫達のご飯を作る準備を始める。




