六十三ニャン 季節に合わせた撮影
「ハイ こんにちわー! 配信ニャンの黒子、かつおでーす!!
さて・・・皆さん・・・
春ですねぇー!
ウチの近所でもねー、桜が見頃なんですわ。
まぁ自分、全く家の外に出ないんで、見頃とかよく分かんないんですけどね、ハハハッ。
でもですね皆さん、お花見を楽しむのは大いに結構なんですけど、くれぐれも、他のお花見客
や、頑張って咲いている桜に迷惑がかからないようにね。
毎年ね、お花見シーズンになると、そうゆうニュースが報道されるので。
事件を起こしちゃうと、せっかく咲いている桜にも申し訳ないですからね。
一年のほんの僅かな時間だけ、精一杯美しく咲いている桜を、皆さんもしっかりと目に焼き付
けて、春の訪れを心に刻んでください!!
ねー、さくらねー!」
かつおは、さくらを抱っこしてカメラの前に近づける。
かつおは、まるで子供をあやすように、ユサユサと全身を揺らす。
それがさくらにとっても心良いのか、トロンとした目つきになった。
そして、さくらが羨ましくなったまんぷくやネネが、鰹の足元まで寄って来て、ニャーニャーと鳴き始める。
「ニャーオ!」
(かつおさーん! 私もー!)
「マァーオ」
(さくらだけずるーい)
かつおはさくらを一旦下ろし、今度はネネを抱き上げる。
その間、ヤマブキとレイワはというと、キャットタワーでくつろいでいた。
「で、実はね。
ついさっき、自分ちょっと用事があって外に出てきたんですけどね、そこが丁度、満開の桜が
咲いている場所だったんですよ!
その動画はね、住所バレが怖くて言えないんですけど、とにかく綺麗だったんですよ!
でね、その時は友人・・・友人なのかな・・・?
とにかく、友人と一緒に楽しんだんですけど、やっぱりね・・・猫達にも見せてあげたいんで
すよ。
ただね、全員・・・5匹を引き連れて行く事はさすがに難しいんですよ。何かあってからじゃ遅
いですし・・・
だからね、猫達にはちょっと物足りないかもしれませんが、『お土産』を・・・」
そう言ってネネを下ろすと、今度はまんぷくを抱き上げ、もう片方の手でポケットを探り、カメラの前に差し出した。
「ジャジャン!!
なんとこの中にはね、採れたてホヤホヤ・・・・・採れたてなのかな?
まぁいいか、とにかくこのハンカチにはね、『桜の花びら』が挟んであるんですよ。
それをですね、水の入っているコップに浮かせてみて、猫達の反応を観察してみようと思いま
ーす!
いえーい!!」
そう言いながら、かつおがまんぷくをユサユサと揺らすと、やはりまんぷくも、寝落ちる直前の様な、仏頂面になる。
そんな顔も、かつおの大好物である。しかし、今はそうゆう動画を撮影しているわけではない。
かつおは一旦まんぷくを下ろし、今度はキャットタワーでくつろいでいるヤマブキとレイワに、ハンカチで折り畳んだ桜の花びらを見せてあげる。
すると、2匹は案の定、念入りに匂いを嗅ぐ。
花びらからは、水っぽいような、土臭いような、葉っぱのような、そんな匂いがした。
レイワはその匂いに慣れていないものの、『元・野良猫』だったヤマブキには、それが花の一部である事がすぐに分かった。
かつおは基本的に、家の中に『植物』は置かない。
『花瓶』や『鉢植え』は、猫が倒してしまうかもしれないから。
そうゆう話や画像は、ネットでもよく目にする。
花瓶を落とされたり、小物を落とされたり・・・と、飼い猫と飼い主の戦いは、確かに大変そうではあるものの、どこか微笑ましい。
しかし、どんなに微笑ましくても、壊された物が高価な品だったり、記憶に残しておきたい大切な品の場合、笑って誤魔化せない。
猫の中には、花瓶や小物を倒さず、器用に隙間を潜り抜けて歩く猫もいる。
かつおの飼っている猫達は、どちらかといえば後者タイプ。
ただ、生花は管理するのに手間がかかる上に、萎れた花もしっかり処分しないと、猫が食べてしまい、体調を崩すきっかけになるかもしれない。
造花だとしても、猫の鋭い顎で噛みちぎってしまえば、病院送りの可能性も出てくる。
だからかつおは、基本的に小物を家に飾らない。
家具やゲームコントローラーは別として、貰った小物は全部タンスや棚の中に収納している。
タンスの中に入れてしまえば、例えタンスの中を猫が物色したとしても、落として壊す事態にはならない。
レイワは最初、桜の花びらを見た時、(おやつかな・・・?)と思って、噛みつこうとした。
そんなレイワに、ヤマブキが説明を入れようとするが、やはりどこか、話が食い違ってしまう。
(・・・レイワ、アレはおやつではない。『花びら』だ。)
(・・・・・『ハナビラ』って・・・何?)
(『花』の一部だ。)
(『ハナ』・・・って、俺たちの顔についてる・・・コレ?!)
(違う違う、そっちの『鼻』じゃない。)
(じゃあ何処のハナ?)
(地面に生えている『花』だよ)
(『ジメン』って何?)




