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六十ニャン 夜桜見物 兼 ゴミ拾い

とりあえず上にジャケットを羽織って行こうとした・・・が、あまりの寒さに一旦引き返し、ヒートテックを下に着て、また外に出る。

久しぶりに外へ出たかつおの体温感覚は、狂った体温計くらい、おかしな事になっていた。

桜が咲いて暖かくなった季節だが、それでも夜はまだまだ寒い。玄関のドアが開閉される度に、ヤマブキが苦い顔になる。


「・・・よし、今度こそ大丈夫だ。じゃあ皆、お留守番よろしくね。」


「ミャーオ!」

(行ってらっしゃい!)


「ミャー」

(気をつけてね)


お出迎えに来たさくらとネネは、玄関のドアがちゃんと閉まるまで、ずっと座って見守っていた。

ヤマブキは巣の中へ避難、レイワとまんぷくは、キャットタワーに登って遊んでいる。


「・・・暗っ!!」


「当たり前だよ。

 家出る前は、「スマホのライトで十分だよ」とか言ってたけど、それじゃ全然前が見えないっ

 て。」


2人は懐中電灯を片手に、もう片方の手にはゴミ袋とトングを持ち、薄暗い夜道を歩く。

まだ夜空に月明かりが降り注いでいるだけマシである、夜空が分厚い雲に隠れていると、本当の意味で『深淵』である。

役に立っているのかも分からない街灯は、力無くぼんやりと輝いている。

街灯の灯りより、自販機の灯りの方が目立っていた。

夏になると、自販機の明かりが隠れるくらい、虫が群がるのだが、まだ虫が顔を出すのは早い時期の為、眩しいくらいに明るい。

その眩い光に、かつおも顔をしかめた。

2人の足音だけが道に響き、桜並木の脇を流れる川は、まるで『谷底』の様に真っ暗であった。

そして、桜並木の出入り口は、既に三角コーンやポールで封鎖されている。

この二つに、動かされた形跡がないかを調べるのも、当番の役目。

『地元住民以外 立ち入り禁止!!』と、大きな文字でプリントされている紙が貼り付けられているのにも関わらず、なんの躊躇もなく入っていく人が、たまにいるのだ。

桜並木の外側は、街灯が一本もない。

かなり暗い細道があるだけで、その細道で遠くから花をみる事はできるものの、そこにレジャーシートを敷いてのお花見は難しい。

お花見会場に限らず、立ち入り禁止の場所に入れば、当然罪になる。

罪の度合いは様々だが、禁止されている事に踏み込んでしまう事自体が罪なのだ。

それが分かっても尚、立ち入る人間がいるのは、嘆かわしい話である。

地方に限らず、全国各地でそうゆう事件は毎年のように起こっている。

「バレなければ大丈夫」「知らなかったから無罪」という言い訳は、もうとっくに通用しない世の中なのだ。


「うわぁー

 あるなー、結構な量のゴミが。」


「いやいや、まだ少ない方だと思うよ。

 私、何度か他県のお花見会場に行った事があるんだけど、本当・・・酷い所は凄いからね。」


かつおと椿は、せっせとゴミを袋の中に入れていく・・・が、一枚では足りそうもなく、仕方なくかつおが、自治会長の家へ駆け込んで、袋を2・3枚貰って、また戻って来る。

満開になっている桜も確かに綺麗だが、それよりも『臭い』が凄い。

天気予報を見る限り、今日が『お花見最終日』という事もあって、昼間に大勢の人が来た事が伺える。

平日・休日関係無く、大勢の人がこの地へ来てくれると、その分の収益が得られる。

だからこそ、季節毎にイベントを迎えると、地元の商業関係者はウキウキな様子で、『露店』や『地元PR』に力を入れている。

それだけなら、まだかつおもある程度協力はできるものの、『後始末』に関しては、完全に『尻拭い』なのである。

あちこちの地面から漂う『アルコール』や『お菓子』の香りが、お酒に慣れていないかつおと椿の吐き気を催してしまう。

溢したのか、それとも飲みきれずに捨てたのか、はたまた食べきれなかったのか・・・

かなり度数の高い酒瓶が放置されたままの場所もあり、30分くらい歩いているだけで、缶・瓶のゴミ袋は、もういっぱいだ。

そして、一番タチが悪いのは、『見えない場所に捨てられたゴミ』

「此処なら誰にも気づかれない」と思ったとしても、捨てていい理由にはならない。

特に、川近くの水草が生えている場所や、橋の下・・・等。

椿が懐中電灯で照らしながら、かつおが橋の下まで行き、ゴミを回収する・・・という、面倒な事までしなければいけない。

30分、ひたすらゴミ拾いをしていたかつおの息は、もう上がっていた。


「ゼェ・・・・・ゼェ・・・・・」


「相変わらず体力がないなぁ、そこら辺で転ばないでよねぇ。」


一応、ほぼ全てのゴミを回収して、ゴミ捨て場まで持って行く。

当番の人は、『ゴミ捨て場の鍵』も渡される為、その鍵を開けて、ゴミをカゴの中に入れる。

そして鍵を閉め、次を担当する一家に渡せば、ようやく仕事は終わる。


「・・・そういえば、翼さんも今日、当番じゃなかったか?」


「うん、私もそれは分かってて、かつおの家に行く前に、翼さんが住んでいるアパートに行って

 みたんだけど、何故か留守で・・・」


「・・・もしかしたら、またおふくろさんの具合が悪くなったのかも・・・」


「え? そうなの?」


「この前、コンビニに行った時に聞いたんだ。

 でも、介護施設が地元で見つかっただけで相当ラッキーな話だよな。」


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