五十ニャン 身近な人から 応援メッセージ
「そういえばさ、元気?」
「『元気』って・・・
あぁ、ヤマブキ達の事?」
「そうそう! 最近新入りも加わったみたいじゃんか!
あの子も可愛いよなー! ちょっと体色がネネちゃんに似てるけど、まんぷく君の方が、白が
多い感じかな?」
「そうそう! やっぱり毛並みとか体毛って、1匹1匹違うから、見てるだけで面白いよな!
譲渡会に参加していた子達も皆、個性に溢れてたんだ!
でもやっぱり、自分の生活に合う子を選んであげないと、かえって可哀想だから、色々と吟味
してまんぷくを選んだんだ。
本当なら、あの子達全員、可愛くて可愛くて・・・」
「だー! もー! 分かった分かった!!」
翼も動物好き・・・なのだが、猫や犬は飼えない。その理由は、『アレルギー』
学生時代は、欠席なんて殆どしなかった、体が丈夫な翼でも、やはりアレルギーには敵わなかった。
だが、翼の『犬・猫アレルギー』は、成人してからようやく判明した。
それまでは、家でペットを飼った事がなかった為、発覚しなかったのだ。
翼のすぐ側に猫がいると、数分足らずで鼻水が滝の様に溢れ出てしまう。
好きなのに触れるができない・・・というのも、何とも悲しい話。
これにはさすがに、かつおからも哀れまれた。
しかし、今はかつおの様に、飼っている猫を動画配信している人も多い為、そこまで深いダメージではない。
むしろ今は、『飼う』よりも『観る』人の方が多い。
住む場所によっては、『ペット禁止』な場所があったり、翼と同じく『犬・猫アレルギー』を持っている人間は、星の数程ある。
それに、観ているだけなら、餌をやる必要もなければ、散歩に行く必要もない。
トイレも、お風呂も必要ない。臭いに悩まされる事もない。
もちろん、飼った方が動物の可愛さや愛らしさを直で感じる事ができる。
しかし、だからと言って、安易な気持ちで飼うくらいなら、動画で欲を満たした方が、人間にとっても動物にとっても幸せである。
今では、猫を段ボールに入れて外に放置するだけで罰せられる。
昔はよくあるシチュエーションだったが、動物に関する法律も、時代と共に変わっているのだ。
それに、動画を通じて多くのペット好きと交流できる『SNS』や、ペット好きが集まる『サークル』も沢山ある。
また、配信主である飼い主と一緒に、猫の誕生日をお祝いしたり、時にはお風呂や爪切りを応援してあげたり・・・
1人で飼って面倒を見るより、大勢の人と協力して、猫の成長や日常を見守る方が、やはり楽しい。
誰かと一緒に、同じものを愛でて、愛する事は、何よりも励みになる。
必ず来るであろう『お別れの時』でも、共に泣いてくれる人がいるだけでも、天へ昇った猫は救われるのかもしれない。
最近だと配信主に『ネット通貨』を送り、猫のお世話に『金銭的』な協力ができたり・・・と、猫業界の世界も、変わり続けている。
だからこそ、翼は猫好きでいられるのかもしれない。
「まんぷく君、無事に飼い猫になれてよかったね。確か・・・飲食店通りの路地にいた・・・と
か。」
「うん、野良だったのか、それとも飼い猫だったのかも分からないんだ。」
「・・・まぁ、どっちにしても、まんぷくにとってかつおは、まさに『救世主』だろうな。」
「・・・そう思ってくれたらいいんだけどねっ。」
かつおはそう言うと、商品でパンパンになったリュックを背負い、また外に出る準備を始める。
「また動画楽しみにしてるぞー!」
「うん! ありがとう!」
かつおがいくら人嫌いだとしても、自分の作っているもの、自分が大切にしているものを褒められると、やはり嬉しいもの。
「猫達が可愛い!!!」というコメントも、もちろん飼い主にとってはこの上なく嬉しい。
そして、かつおは数年動画投稿をしているうちに、だんだんと『コメントの内側』が見えるようになってきた。
要するに、
『ちゃんと動画を見た上でコメントをしてくれているのか』
『少し見ただけのコメント』 『全く見ていない上でのコメント』
等、コメントをしてくれる人のセンスもあるが、文面を見るだけで、その人がどれだけ動画を見ているのか、猫に関しての知識があるのかが分かる。
特にかつおは、猫のスペシャリスト。
猫の世話に関して、『おかしなコメント』や『根拠のないコメント』はすぐに分かるのだ。
かつおにとって、『単なる罵倒』か『根拠のない説教』どちらが厄介かというと、『根拠のない説教』である。
何故なら、そうゆうコメントには、妙に説得力があるから。だから、何の知識もない人が騙されて、鵜呑みにしてしまう。
ただ、そんな理由でコメントを消すわけにもいかない。
ネットの付き合いも、現実世界と同じくらい面倒臭い為、ネット関連の相手をするだけで、かつおは手一杯なのだ。
だからこそ、きちんと面と向かって感想を述べてくれる、翼のような存在は、かつおにとっても一番大切な存在なのだ。
・・・だが、それならもっと多くの人間に、自分が『配信ニャン』の主である事を知らせた方が良いのかもしれないが、それはそれでまた問題が発生してしまう。
特に、『秘密を守れない人』は要注意である。あっという間に情報をばら撒かれて、何が起きるのか分からないから。
だからこそかつおは、数少ない『理解者』である翼の元へ、何度も何度も通い詰めているのである。『ギリギリ商品の購入』という貢献の為にも。
「歩きながら食うんじゃないぞー」
「子供じゃねぇよ。ちゃんと家に帰って、レンジでチンして食べますー」




