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四十六ニャン 賑やかなイベントの影で・・・

暖かくなり始める4月。厳しい冬を越した『桜』が、喜んで顔を開く。

かつおの住んでいる家の近くには、静かな川が流れているのだが、その川に沿うように、桜の木が何十本も植えられている。

その場所は、桜の名所として、地元では結構有名な場所。

シーズンになるとお花見客で溢れ、露店も多く出店する。

・・・だから、かつおにとってこの時期は、『外に出にくい時期』でもある。

お花見所に近づくだけで、酔っ払いに絡まれたり、写真を頼まれたりして、気が休まらないから。

家の中にいても、お花見に最適な晴天の日は、外から盛り上がっている人々の声が聞こえる。

歓喜する子供の声だったり、駐車場を探しながら、あちこちウロウロ徘徊する車のエンジン音だったり。

花見客が多い時には、酔っ払いの歌声まで聞こえてくる。

だからこの時期は、仕事をしている時でもイヤホンは欠かせない。それで、気を落ち着かせる『ASMR』をずーっと聴き続けているのだ。

特にかつおが好きなASMRは、水が流れる音だったり、静かな森の音。

シャーペンや万年筆で、紙に言葉を書いたりするカリカリ音も好きだったりする。

イヤホンを装着するのにも、ちゃんと理由がある。

この時期、家の周りにはパトカーが巡回して、交通違反を見かけると、途端にサイレンを鳴らす。

それが遠い場所で聞こえるならまだマシだが、家の近くの道路で、突然甲高いサイレンが聞こえたら、心臓に悪すぎる。

しかし、文句も言っていられない。毎年必ず、パトカーで連れて行かれる人がいるのだ。

もし警察官が巡回しなかったら、それこそ大きな事件が起きるかもしれない。

だが、周辺にパトカーがあるだけでも緊張感が高まり、川辺が近い住民は、家の窓を開けて、家の中で花見をしている。

桜が年中通して見られないだけでも、まだマシなのかもしれない。

花見客にとっては『楽しみなイベント』でも、周辺住民にとっては『我慢の期間』である。

もちろん、花見をする事自体は悪い事ではない。

実際、この花見シーズンを狙って、露店を開いている近隣住民も多い、いわば『稼ぎ時』なのだ。

ただ、『迷惑な人』というのは、何処へ行っても必ずいる。そして、その後始末をするのは、結局何の関係も無い『第三者』になってしまう。




「だーかーらー、行かないってばー

 毎年毎年誘わなくてもいいって・・・


 ・・・それに、ちゃんと毎年、『夕方頃』になると見に行ってるんだから。


 ・・・だから・・・いいってそんな気遣い・・・


 ・・・ん? まぁ・・・それなら別に構わないけど・・・」


かつおは通話しながら、ソファに座ってヤマブキを撫でていた。ヤマブキは目を細め、いかにも気持ちよさそうな顔をしている。

さくらは、朝からずーっと、窓の外を眺めていた。今日は休日、お花見に来る人々がゾロゾロと道路を歩いている。

人と同じく、車の流れも多い。川辺近くの道路では、朝にも関わらず渋滞気味になっている。

一応、川辺近くの道路は『駐車禁止』になっているのだが、やはり何台か停められている。

それらの車は、ちゃんと警察で処理されているのだが、それでも毎年、ルールを守らない人はいるのだ。

レジャーシートを丸めて持って行く人、バスケットの中にお弁当を持って行く人、酒瓶を持って行く人・・・等。

お花見客も人それぞれ違う為、さくらとっては面白い光景であった。

だが、車のエンジン音が嫌いなのか、車が道を走る度に、さくらの耳はピクピク反応している。

まんぷく・レイワ・ネネの3匹は、かつおの足元に集まって、彼の顔をジーッと見ていた。

誰と話をしているのか、不思議で仕方ないのだ。

スマホから漏れる微かな声で、かつおが通話している相手が『女性』である事は分かる。


(・・・きっとこの声は・・・

 『椿つばき』さんだ。)


(『椿』さん・・・て、誰?)


まだかつおの人間関係を知らないまんぷくに、かつおの人間関係を一番よく知っているヤマブキが説明に入る。


(どうも椿さんは、かつおさんの『幼馴染』らしい。)


(・・・『おさななじみ』??)


(『幼馴染』っていうのは、昔からの知り合いって事だ。)


(ふーん・・・

 お父さんとお母さんとは違うの?)


(それとはちょっと違うよ。まぁ私達に、幼馴染もないんだけれどね。)


まんぷくは、(人間は大変だなー)と言いながら、大きなあくびをする。

かつおはとっとと通話を終わりたい様子だが、相手がなかなか電話を切ろうとしない。

ずっと膝に乗っているヤマブキもそろそろ飽きてしまったのか、かつおの膝から抜け出て、今度はネネが撫でられに向かった。

かつおの前でスタンバイしている猫達の目的は、かつおの膝の上で撫でられる事も含まれている。

通話しているかつお本人は、そこまで楽しそうに話をするわけでもなければ、「もう切るよ!!」と言うわけでもない。

口は少し悪いものの、かつおは電話をしている相手を、ちゃんと気を遣っている。


「・・・あ、うん。見てくれてたんだ・・・

 ・・・うん、今側にいるよ。・・・うん、すごくいい子だ。

 皆と仲良くするのも早かったし、喧嘩も過度な戯れあいもしないし。」


その話は、明らかにまんぷくの話である。しかし、まんぷく自身はカーペットにそのまま寝っ転がり、眠っていた。

あまりにも電話が長い為、飽きてしまったのだ。


「・・・あー、はいはい。じゃあその時はちゃんと『猫達への手土産』を持って来るんだぞ。

 ・・・俺? 俺は別に・・・

 ・・・わーかった!! はいはい!!」


30分以上も電話していたかつおのスマホは、もう電池が真っ赤っ赤。

かつおはスマホを急いで充電器へと差し込むと、膝の上にいるネネに、自分の頬を押し付ける。


「あぁー・・・疲れたよー・・・」


(はいはい、分かった、分かったから。)


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