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三十七ニャン こんばんわ

(・・・・・こんばんわ。)


「・・・ウニャ・・・??」


まんぷくが心地良く眠っていると、すぐ隣で声がした。レイワかネネ、さくらかと思ったのだが、声が明らかに違う。

どこがどう違うのかは・・・はっきり例えられないものの、かつおでもないのは、目を閉じても分かるまんぷく。

そこでまんぷくは、声の正体を確かめるべく、ゆっくりと目を開けて、ケージの前を確認すると・・・


「・・・・・ニャァァァ?!!」


思わず声を出して驚いたまんぷくは、その場で吹っ飛び、頭部がケージに直撃。

『ガシャン!!!』という鈍い音がリビングに響くと同時に、ヤマブキはドアの方を見る。かつおが心配して飛んでこないか、様子を伺っているのだ。

だが、その頃ヤマブキは、ヘッドフォンをつけながら新作ゲームに没頭中。

更に膝の上でくつろいでいるレイワにも構っている為、今の彼は、動きたくても動けない状況。

レイワもそれを分かっているのか、なかなかかつおの膝から退こうとしない。「しょうがないなぁ」とは思いつつ、ゲームにも集中している為、仕方ない。


かつおが唯一、猫以外に没頭できるのは、『ゲーム』だ。だが、ゲームを始めるきっかけとなったもの、やっぱり猫関連。

かつおが一番最初に飼った猫が亡くなった時、あまりにもかつおのショックが大きかった為、両親がそんな息子を見兼ねて、猫と触れ合えるゲームを買ってあげたのだ。

最初は渋々プレイしていたかつおであったが、買ってから数時間ですぐ夢中になる。

育成ゲーム等の『ほのぼのゲーム』は、『ENDが無い』というのも特徴の一つ。

だから、毎日毎日ゲーム機の中に住んでいる猫を、いつまでも相手にする事ができたかつお。

RPG等の『ストーリーゲーム』は、最後の目標である『魔王(最大・最強の敵)』を退治すると、そこでもゲームは終わってしまう。

現実世界とは違うゲーム機の世界では、愛する猫とお別れする心配もない。ずっとずっと、愛でていられるのだ。

そして、ヤマブキを飼い始めた頃になると、かつおは育成ゲーム以外のジャンルにも手を伸ばし始めた。

・・・というのも、ヤマブキはジーッと見る対象は、『生き物』だけとは限らない。テレビがついていると、まるで人間の様に、ボーッと見ているのだ。

その光景を動画に載せると、数日後にニュース番組で報道され、それがかつおにとって、初めての『テレビデビュー』だった。

そんな経緯もあって、かつおが初めてPCゲームに挑戦した時も、ヤマブキはただジッとモニターを見続け、かつおが疲れてゲームをやめるまで、ずーっと側にいてくれた。

それが嬉しくなって、色々とゲームの事を調べているうちに、手を出すジャンルがどんどん増えていった。

それに、育成ゲームとは関係ない、RPGやほのぼのゲームにも、猫が登場する事は多い。主人公の相棒だったり、単なるNPCだったり、仲間だったり。

特にかつおが好きなRPGは、『猫が仲間になるRPG』

かつおは、ゲームに登場する猫達の名前と、登場しているゲームを全て言える。そして、猫のキャラが登場するゲームは、何度も何度も周回して楽しんでいる。

ちなみにかつおにとって、『人×猫』のキャラは、そこまで好かないらしい。かつお曰く、「それは『別ジャンル』」だそう。


「いやぁぁぁぁぁ!! やめてぇぇぇぇぇ!!

 あと1連勝でコラボスキンが手に入るのにぃぃぃぃぃ!!」


モニターの前で絶叫するかつおを、後ろにあるベッドから見ているネネとさくら。

さくらはもう夢の中だが、ネネはモニターの中で縦横無尽に動いているキャラクターが気になり、なかなか寝付けない。

猫達にとって、かつおが何で遊んでいるのか、どんなジャンルのゲームで遊んでいるか・・・ではなく、画面上でチョコチョコ動く存在があるから見ているだけ。

かつおの膝の上にいるレイワも、コントローラーをひっきりなしに動かしているかつおの指が気になるから、ちょくちょく触っているだけ。

だが、それでもかつおは嬉しいのだ。猫が一緒にゲーム画面を見てくれる事、自分の指で猫が遊んでいる事。

それに、レイワがちょっかいを出す度に感じられる、プニプニな肉球。肉球が手に触れる度、かつおの顔が一気に崩れる。

真剣にスナイプの撃ち合いをしている時でも、肉球を感じる度に顔がにやけてしまい、結局負けてしまっても、かつおは全然後悔しない。

かつおは、ゲームをプレイしている時間を楽しんでいるのではなく、猫と一緒にいられる時間を楽しんでいるのだから。

「こんな日常風景、何で人気になるんだろう・・・」と思いつつ、かつおがゲームをする度に、動画はちゃんと回している。






(す・・・すまん、大丈夫か?)


(だ・・・大丈夫です。僕、こう見えて丈夫な方なんで・・・)


ゲーム部屋からリビングへと戻り・・・・・

頭がまだヒリヒリするものの、頑張ってヤマブキの側に寄るまんぷく。ヤマブキはそんなまんぷくを見て、つい笑いそうになったものの、必死に堪える。


(悪い・・・いきなりこんな夜に話しかけたりして・・・

 こんな時じゃないと、のんびり話もできないと思ってな。今は周りに、レイワもネネもいない

 から・・・)


(レイワ『さん』達が周りにいると、落ち着かないんですか?)


(いや、違う。レイワ達がお前に話している最中に、割り込むわけにはいかないだろ。)


(そんな・・・・・)


まんぷくは、感動していた。

念願だった、ヤマブキとのお喋りができた事も嬉しかったが、それよりも、自分がヤマブキから嫌われているわけではない事を、ヤマブキ自身の口から言ってもらえた事が何よりも嬉しかったのだ。

レイワ達から色々と話は聞いていたものの、やっぱり本人から直接聞かないと、不安は拭いきれない。

だから、いつかちゃんと話ができるようになってから、顔を合わせた当初、どうして自分に話しかけなかったのか・・・を、改めて聞こうと思っていた。

ヤマブキは、『過度』な気配りをしてしまう癖があり、その癖で、なかなかまんぷくと顔を合わせて話をする事ができなかっただけ。

ヤマブキは、物腰が落ち着いている、まさに『紳士』の様な猫。無口ではあるけど、その表情から滲み出ている優しさに、まんぷくもどこかで気づいていた。

だから、ヤマブキが話しかけて来た時、素直に『嬉しい』という感情になれたのだ。


(この家は、気に入ったかい?)


「ニャア!!」

(はい!! とっても!!)


ヤマブキが話しかけて来た事に、ついテンションが上がってしまい、いつもは出さないような高い声で鳴いてしまう。

そんなまんぷくの様子を見て、安心した様子のヤマブキ。ヤマブキもまんぷくの事を、色々と心配していたのだ。

同じ『野良猫同士』だからこそ、募る不安も多くなってしまう。ヤマブキは、野良猫生活がどんなに厳しいものなのか、この家の中で、一番知っているから。


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