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三十二ニャン 初対面は やっぱり怖い

そして、時間はかかったものの『顔合わせ会』の準備が整い、いよいよまんぷくを、4匹がいるリビングへ移動させようと・・・したのだが。


「まんぷく・・・くっふっふっふ・・・

 何でそんな所に挟まってるの・・・??」


緊張で頭が混乱していたまんぷくは、寝床を一階まで持っていかれた為、トイレの後ろにある小さい隙間に体を押し込めていた。

猫という生き物は、「何故そんなところにまで?!」と、思わず言ってしまうような場所にまで行ってしまうのか、それは猫にしか分からない。

縦長になってしまったまんぷくを見て、かつおはつい笑ってしまう。可愛いし面白いしで、動画と一緒に『自分用』にと写真を撮る。

緊張で胸が張り裂けそうなまんぷくに対して、かつおは笑いを堪えるのに必死な様子。

そのせいで、動画用のカメラは今までで一番画面の揺れがひどくなり、写真に収めるカメラもブレにブレまくって、撮った写真の半分は、ピンボケしたり顔が認証されなかったりで、わけの分からない写真になっている。

最近のカメラは、人間だけではなく『動物の顔』にもピントが合うように、技術が進んでいるものの、それでもまだ、猫の速さに技術が追いついていない。

かつおは笑っているものの、まんぷくの心境は不安なまま。あの三毛猫と初対面した時のような感情に陥っていた。

嫌いではないのに、ヤマブキの顔を思い出しただけで不安になってしまう。そんな心境の中には、『プレッシャー』も含まれていた。

「自分を保護してくれた、かつおさんの為にも・・・!」と思っているのだが、その思いが心にのしかかり、ちゃんと鳴く事すらできなかった。

かつおはトイレをずらし、まんぷくを抱き上げる。そして、ほっぺでまんぷくの顔をスリスリしながら、安心感を与えようとしていた。


「大丈夫だよ、もう此処に慣れたんだから。皆とも仲良くなれるよー」


「・・・ンミャーン・・・」

(・・・そうかな・・・?)


かつおがまんぷくを抱きかかえたまま部屋を出て、顔合わせの場所となるリビングへ向かう。

先程までリビングのあちこちで遊んでいた4匹も、まんぷくの姿が見えると、すぐその動きを止める。

だが、その時点ではまだ、4匹はまんぷくに駆け寄ろうとはしない。まだ様子見の段階である。

かつおはリビングに来ると、さっき作ったばかりのケージにまんぷくを早急に入れて、すぐケージを閉める。

すると、さっきまで居た部屋とは違う匂いに、ますますまんぷくは困惑してしまう。

まんぷくは、そのパニックで周囲を確認する事もできず、また寝床に篭ってしまった。

その様子を見て、今度はレイワをケージの前まで持って来ようとするが、それよりも先に、まんぷくに話しかける『女の子』がいた。


『ミャー、ミャー』

(大丈夫? どこか具合でも悪いの?)


自分に対して、優しく話しかけてくれる声がした為、まんぷくが寝床の隙間から様子を伺うと、ケージの前に立っていたのは、長女の『ネネ』であった。

ネネは細身でスタイルが良く、白と茶色の体毛に、ちっちゃい尻尾が特徴的。いかにも『お姉さん』という風貌であった。

緊張して隠れているまんぷくを心配して、ネネが自ら近寄って来たのだ。ただ、その様子を真横から撮影しているかつおも、まんぷくと同じく心臓バクバクである。

そして、ネネの背後には妹分の『さくら』が、慎重にまんぷくを凝視する。

さくらはネネとは違い、白一色の体と、琥珀こはくの様なオレンジ色の瞳が特徴的な猫。


「ミャウ」

(あ、私の名前は『ネネ』

 ネネって呼んでもらっていいわ。

 ・・・で、背後にいる子が・・・)


「・・・・・」

(・・・お姉ちゃん、そろそろあっちで遊ぼうよー・・・)


さくらは、もうまんぷくの観察に飽きたのか、ネネで戯れ始める。こうなってしまうとさくらは止まらない為、ネネは仕方なくさくらの相手をする。

ただ、まんぷくはそんな2匹の仲良しな光景を見ているだけで、心が満たされていた。その光景だけで、かつおの言っている事が信用できるからである。

「皆、優しい子達だよ」

その言葉は、決して盛られた言葉でもなければ、安心させる為に言っただけの言葉ではない。真実であった。

リビングに来てから20分程度経つと、もうまんぷくもリビングの空気に慣れ始め、寝床から姿を現した。

すると、すぐ横でジーッとまんぷくの顔を見ている猫の顔に驚き、一瞬二本足で立ち上がり、そのまま背後に倒れ込んでしまうまんぷく。

その様子を見ていたかつおは笑っていたが、まんぷくを見ていたヤマブキは驚いて固まってしまう。


(お・・・おいおい、大丈夫か?)


(大丈夫・・・です。僕、結構運動神経がいいので、これくらいでは怪我なんてしませんよ)


(・・・そうか、なら良い。)


そう言って、ヤマブキは去ってしまう。まんぷくは、もっとヤマブキと話がしたくて引き止めようとするが、割り込んで来たレイワに阻まれてしまう。


(・・・あのお兄さん、怖いでしょ?

 まぁ、アイツは昔からあんな性格だからさ、一緒に過ごしていれば慣れてくるよ

 ・・・・・多分。)


(『多分』って何なんですか?! 『多分』って?!!)


レイワの意味深な発言に、思わず挙動不審になってしまうまんぷく。そんな新入りを見て、ニヤニヤするレイワ。


駆け出しはかつおの思った通り、順調であった。

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