二十八ニャン 『タオル』で互いを知ろう
まず、互いを理解する為には、互いの事を少しずつ知る事から始めないといけない。
そして事前に、どんな相手なのかを知っておけば、面と向かった時にも慌てずに対応ができる。
SNS等で事前に自分の『趣味・好物』を教えていれば、初めて顔を合わせた時の会話に困らないのと一緒だ。
だが、当然猫はSNSなんてやらないし、パニックになって相手を傷つけてしまう事も稀にある。
そんな事故を起こさない為に、まずは少しずつ、相手の事を知る必要がある。
動物にとって、その最初の一歩が『匂い』
相手の匂いを知っておけば、顔を合わせてもパニックにならず、落ち着いて互いの様子を見極める事ができる。
猫にとって『匂い』とは、相手を知る為の『名刺』でもあるのだ。
もうまんぷくは、先住猫をチラッとだが見た事がある。しかし、まだ知っているのはそれだけで、その他の事は一切分からない。
だから互いの匂いを理解する事で、距離がまた近づく。
その『橋渡し役』になるのが、かつお。かつおにとってこの『恒例行事』は、彼本人でも数えていないくらい、多く経験している。
それでも、やっぱり緊張してしまう。例えるなら、『仲人』になっているような気分になるのだ。
他にも色々と心配はあるものの、やはり飼い主となれば、互いに仲良くしてくれる未来を想像して、期待に胸を膨らませるもの。
その未来が、どんなに遠くても、どんなに難しくても、その光景を一目見る為に、かつおも準備に精を出す。
まずかつおが用意するのは、『無臭のタオル』数枚。
芳香剤等は入れず、何の匂いもしないタオル。そのタオルに、猫達の匂いを染み込ませて、匂いを理解してもらうのだ。
もしタオルに芳香剤の匂いが混じっていたら、嗅いだ猫が困惑してしまう。匂いがグッチャグチャになってしまうわけだから、なるべくタオルは無臭にする。
そもそもかつお自身、芳香剤はあまり好きではない為、洗濯するのに柔軟剤入れるものの、匂いはあまりしないメーカーを選んでいる。
花粉症・・・というわけでもなく、鼻炎というわけでもない。ただ、家に漂う香りは、猫達の匂いだけで十分なのだ。
「まんぷくー! おいでー!」
「・・・うにゃーう??」
(・・・何ソレ??)
まんぷくは初めて見るタオルに、やっぱり緊張するものの、無害な事が分かればもう大丈夫。
タオルに爪を立てたり、かつおにコロコロされたり、完全にまんぷくはタオルを『おもちゃ』だと勘違いしている様子。
特にまんぷくが気に入った遊びは、タオルによって巻かれてロール状になる、いわゆる『猫巻き』
不思議とまんぷくが落ち着くその体制に、かつおは悶絶しながらカメラを回す。
「可愛いねぇー・・・可愛いねぇー・・・
たまんないぃぃぃー・・・」
かつおが目の前であれこれ言っていても、タオルで包まれたまんぷくには届かない。だが、かつおはそれで良いのだ。
・・・そして、部屋の中から聞こえる『奇妙な声』に、4匹が部屋の前に集合して様子を伺っている。
一応、4匹は部屋の中でかつおが何をしているのか、大体想像はできているものの、それでも気になってしまう。
(・・・デレデレだね、相変わらず。気持ち悪いくらい。)
(レイワお兄ちゃん! その言い方は酷いよ!)
さくらは、レイワの事を『お兄ちゃん』と呼んでいる。実際、2匹の年齢は定かではない為、どっちが兄で、どっちが姉なのかは分からない。
ただかつお宅では、一番早く来たヤマブキを『兄』と呼び、一番遅く来たさくらを『妹』と呼んでいる。
・・・だがさくらは、もうじき『姉』になろうとしていた。
そして、ドアの前の廊下で4匹が集まっている気配を察したかつおは、早速まんぷくの匂いが染み込んだタオルを持って廊下へと出る。
すると、4匹もかつおの持っているタオルに、新しく来たまんぷくの匂いが染み付いている事を察し、早速4匹はタオルに鼻を近づける。
(・・・懐かしいなぁ。ネネとさくらが来た時も、確かこんな匂いだったような気がする。)
(えっ? そうなの?)
レイワとネネは、互いに顔を見合わせた。さくらはというと、まんぷくの匂いに混じっている、ほんの僅かな『外の匂い』を感じ、昔を思い出していた。
ヤマブキはというと、熱心に匂いを嗅いで、タオルを離さない。
「どうかな? 仲良くなれそうかな?」
「・・・・・ウニャウ」
(・・・・・努力はする)
不安な表情を見せるかつおに、ヤマブキは鳴き声で励ました。4匹は、決してまんぷくの匂いを嫌がっている様子はなく、これにはかつおも安心する。
猫同士によっては、匂いだけで威嚇をしてしまうパターンもあるから。
そればっかりは『運次第』なのだが、4匹なら大丈夫・・・と信じていたかつおの考えは、どうやら当たっていた様子。
そして今度は、まんぷくが4匹の匂いを覚える番。だが、4匹よりもまんぷくの方が大変なのかもしれない。
何故なら、4匹分の匂いを覚えなければいけないから。とりあえずかつおは、4日に分けて匂いを教える作戦を取る事にした。




