二十七ニャン 元気=幸せ
エリザベスカラーが無くなり、ようやく自由に体が動かせるようになり、体調も元通りになったまんぷくは、早速何をしたのかというと・・・
「おー! おー! おー!
やっぱり登ったー!」
そう、彼をずっと守ってくれていたケージに登り、頂からの眺めを見る。
かつおが思った通り、元から運動神経が良いまんぷくは、あっという間にケージをスイスイと登り、かつおが落ちないか心配している間に、もう頂きに登り詰めてしまう。
一応、ケージの上には『透明な足場』を設置してある為、ケージの隙間に足が挟まる事はない。
そして、ケージに登ったまんぷくは、かつおと同じ目線になり、彼の顔の匂いを嗅ぐ。もちろんその際も、かつおは撮影を怠らない。
カメラから感じられる匂いは、『機械の匂い』に混じったかつおの匂い。そして、自分とは違う猫の匂い。
一方その頃、一階のリビングでは、ノベノベと電気毛布の上でまったりしているレイワとヤマブキが、色々と話し合っていた。
(あの猫、もうそろそろ僕達と顔を合わせるんじゃない?)
レイワは楽しみにしている様子だが、ヤマブキの表情は、相変わらず固い。
だがそれは、緊張をしているわけでもなければ、新入りに腹を立てているわけでもない。『不安』なのである。
そんな様子を見て、レイワも少し呆れてため息をついた。
(もーう、しっかりしてよ『お兄ちゃん』
僕達三人とも、こうして普通に生活できているわけなんだから、今回もそこまで緊張しなくて
も大丈夫だよ。)
(・・・そう・・・だろうか・・・)
レイワも、何だかんだヤマブキを心配しているのだ。ヤマブキは確かに良い奴なのだが、ちょっと『考え過ぎ』な性格。
それを、ネネやさくらよりも一層理解している次男坊のレイワが、ヤマブキを必死になって宥めるのも、レイワにとってはいつもの事。
しかしヤマブキは、3匹で経験しているものの、未だに新入りとの付き合い方がよく分かっていない様子。
そこまで気に病む程ではないものの、ネネやさくらもヤマブキを心配している。
さくらにとって、まんぷくは『初の弟』なのだが、本人はその自覚がないのか、いつもと同じくマイペースな様子。
今日もマイペースに、窓のの外を眺めながら、空模様を確認するさくら。今日の天気は、雪が雨が降りそうな曇り空。
外を歩く人々の手には傘が握られ、寒そうに手を擦り合わせている女子高生の姿があった。
さくらは窓に近づくものの、この時期は窓に触れないようにしている。何故なら窓が冷たいから。
冬だけではない、夏になると窓は直射日光を浴びて、アチアチに熱せられる。
だが、気温が安定する春や秋になると、また違った問題が発生する。
過ごしやすい気候になると、さくらは窓をずーっとスリスリして、窓がとんでもなく汚れてしまう。
窓の触り心地が好きなのかはよく分からないが、かつおも一時期、対処法を探っていた。
だが、さくらが満足した様な表情で、窓に顔面を擦り付けている様子を見てしまうと、止める気も失せてしまう。
結局、窓は定期的にかつおが磨く事になった。ちなみのその時の動画を、動画投稿サイトにアップしたところ。
「かつおさん優し過ぎ」「かつおさんの猫愛が垣間見える」
「成程、春か秋に窓をスリスリしている猫を見かけたら・・・・・
暖かく見守ります!!」
等、色々なコメントが寄せられた。
中には対処法を教えてくれるコメントもちらほらとあったのだが、可愛いし外に出る危険性も無い為、やっぱり放っておくのが一番だと思ったかつお。
特にさくらは、お日様が出ている晴天が好き・・・なのだが、ここのところずっと曇り空な為、さくらも晴天を待っていられない様子。
それにさくらは、窓には近づくものの、窓のカギには絶対手をつけない。それなら、事故で鍵が開いてしまう事もない。
かつおがしっかり戸締りをすれば、さくらが誤って外に出る事はない。
いつもさくらが外を鑑賞しているリビングは2階。いくら体が柔らかい猫でも、二階から落ちてしまえば即刻病院送りである。
最悪、そのまま逃げてしまっては、ご近所の迷惑になってしまう。そうゆう『ペット脱走ニュース』を最近見かけるが、それは犬・猫にも通ずる話。
(さくら、そろそろ寒いからお姉ちゃん向こうに行くよ)
(イヤイヤ! もっと見てるー!)
窓枠の隣、キャットウォークの上で高箱座りをしているネネは、ため息をつきながらもさくらと一緒にいる。
お姉ちゃんであるネネが一緒じゃないと、さくらはずーっと鳴き続けてしまう。末っ子気質なさくらは、4匹の中で一番甘えん坊。
もちろん、レイワやヤマブキに甘える事もあるのだが、基本的にネネといつも一緒にいる。だが、ネネ自身はそれを嫌がらない。
だからため息をつきながらも、付き合ってあげている。ネネは大きなあくびをしながら、上の階でバタバタしているご主人、かつおの様子を伺う。
かつおはというと、まんぷくの可愛さをカメラに収める為、色んな角度から、色んな体制でまんぷくを撮影している。
まんぷくはケージの上に乗るだけでは満足できず、椅子のキャスターの隙間から顔を覗かせたり、プラスチックケースの壁でロッククライミングをしたり、とことん部屋の中で遊び回る。
おかげでかつおはだいぶバテバテで、カメラにもかつおの荒くなった息遣いが収められていた。そこでかつおは、自身の体力の無さを痛感しながらも。
『初・顔合わせ』の準備に取り掛かろうとしていた。




