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二十六ニャン おめでとう 大好きだよ

「・・・・・うんっ! もう、大丈夫そうですね!」


「あぁ! ありがとうございます!」


「いやいや、又田尾さんこれで5匹目じゃないですか。もうそろそろ慣れたもんでしょ。」


「い・・・いえいえ、それでも・・・緊張してしまうもので・・・」


「・・・まぁ、それくらい『家族』を大切にしている姿を見ると、私達のやる気にも繋がります

 よ。次は・・・ネネちゃんでしたよね。」


「はい、定期検診に。二週間後、また伺いに来ますね。」


かつおと院長が雑談をしている間に、まんぷくの首に長い間巻かれていたエリザベスカラーが外され、ようやく首が自由に動かせるようになったまんぷく。

早速まんぷくはかつおの元へ駆け寄ると、爪を立てながら服を登り、彼の顔をもっとよく近くで見ようとする。

その登っていく様は、まさに上から見た『芋虫』か『ツチノコ』

かつおが慌てて抱き抱えると、食い込んだ爪が引っかかって、今度はかつおの上着ごと持っていかれそうになる。

その力は、まさに全ての試練を乗り越えた、まんぷく自身の喜びを表すものであった。

一応、施設に居た頃に爪切りは済ませているのだが、エリザベスカラーが外れて大喜びしているまんぷくの全力に、かつおはタジタジな状態。

だが、顔はやっぱり喜んでいる。暴れ狂うまんぷくを宥めながら、院長の話を聞くかつおは、まさに子供をあやしながら井戸端会議に熱中している母親の様だった。

病院の職員も、猫のあやし方が凄腕なかつおに、目が離せない状態。逆に、どうすればそんなに猫と親しくなれるのか、一周回って気になるのである。

まんぷくが後ろに回り込んでも、かつお決して焦らず、背中にしがみつくまんぷくの位置すら、感覚でしっかり把握している様子。

それこそ、背中にも目があるんじゃないか・・・と思えるくらい。


話を聞き終えたかつおは、院長や職員に何度も頭を下げ、ケースにまんぷくを入れる。

やはりエリザベスカラーがないだけで、まんぷくの持ち運びがずいぶん楽になったかつおは、試しにリードをつけたまま、外をほんの少しだけ、まんぷくを抱っこしながら歩いてみた。

まだ多少違和感が残っているものの、すっかり元気になったまんぷくは、病院近くの小さな公園や、道路を走る車に向かって、ニャーニャー泣き続けている。

その鳴き声を聞いたのか、公園で遊んでいた小さな女の子が、まんぷくに向かって小さな手を一生懸命振っていた。

これには人嫌いのかつおでも、思わずキュンとしてしまう。だがその横で、母親らしき女性が会釈をすると、またかつおはへなちょこになる。

だが、かつおは驚いていた。まだまんぷくが、まだ『外』に興味を示している事に。

外の世界で生きるのは過酷、まんぷく自身も知らぬ間に、無意識に、様々な苦難を乗り越えてきた。

だからこそかつおは、まんぷくが今まで、ずっと苦しい思いをしていた、悲しい思いをしていた・・・と、ずっと『思い込んでいた』

しかし、実際はそうでもなさそうであった。

まんぷくが目を輝かせながら外の景色を見ている姿を横から見ていると、『飼い主』としては、ちょっと複雑な心境になってしまう。


「・・・もうちょっとあったかくなったら、まんぷくを連れて外へ散歩に行ってもいいかも。今

 はまだ、道路が冷たいからね。

 ・・・さてと、そろそろ帰ってご飯にしようか! お腹ペコペコだもんね!」


「ニャー! ニャー!」

(ごはん! ごはん!)


しかし、かつおが話しかけると、まんぷくは嬉しそうに彼の顔を覗き込んで来る。そんな顔を見せられては、もう守るしかない。

そんな顔を見せられると、「引き取って良かった」と思うしかない。


かつおが動物を好きな理由。それは、動物達は人間とは違い、『本音と建前』は必要ない。

そのままの気持ちをぶつけてくれる、だからこそ分かりやすいし、対処しやすい。

ヤマブキの場合、撫でて欲しければ自分から頭を擦り寄せて来る。

レイワの場合、ご飯が欲しい時にはご飯入れを爪でガリガリする。

ネネやさくらの場合、窓の外が観たければ窓の前で鳴く。

それぞれが分かりやすく、自分の欲求をかつおに訴えてくれる。だからかつおも助かっているのだ。

彼も仕事の都合上、あまり人とは関わらないものの、『最低限の関わり(配信会社の関係者)』は必要である。

その度に、彼は頭を抱えている。

相手の言っている事が『お世辞』なのか、それとも『本心』なのか

相手が自分を見る目線が『期待』なのか、それとも『偶然』なのか、『軽蔑』なのか・・・

人間の心は、動物以上に底が深い。だからこそ、本音を言い合える関係にはなかなかなれない、相手を見極める必要がある。

そんな気遣いばかりが嵩み、心を病んでしまう人だって大勢いる。かつおは人付き合いが苦手なわけではない、ただ嫌いなだけ。

一部の人間からは、「それは甘えだ!!」と喝を入れられた事もあった。だが、嫌なものは嫌なのだ。

虫が嫌いな人に、「なんで虫が嫌いなの?」と聞くと、『嫌なものは嫌だから』

トマトが嫌いな人に、「なんでトマトが嫌いなの?」と聞くと、『嫌なものは嫌だから』

『好き』や『嫌い』に、細かい理由も必要ない。


それこそ、かつおが猫を心の底から好いているのも


『好きなものは好きだから』


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