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二十二ニャン まんぷく

「ハイ こんにちわー! 配信ニャンの黒子、かつおでーす!!


 今回はですね、昨日も投稿した動画に登場してくれたこの子、の、


 『名前』を発表したいと思いまーす!」


彼は、『名前』というものを知らなかった。そもそもどうして『名前』が必要なのか、それも分からなかった。

何故なら彼は、ずっと独りぼっちで生きていたから。誰からも名前を呼ばれる必要もなければ、呼んでくれる人もいない。

『野良生活』で最も重要なのは『食糧』

『名前』なんて食べられもしない、お腹も満たしてくれない。そんなものを持って、何の意味があるのか、彼はつい最近まで分からなかった。

もちろん、『食べ物の名前』に関しても、彼は全然知らずに口にしていた。

彼にとって大事なのは『名前』ではなく、『食べられるか・そうでないか』である。

しかし、名前の必要性をようやく理解できるようになったのは、この家に来てから。

まず、この家には多くの猫が住んでいる。だから呼び分けをしないと、『猫ー、おいでー!』なんて言ったら、全員来てしまう。

だからこそ、それぞれに名前をつけて、ゴチャゴチャにならないようにする。

彼もこの家に来てから、幾度かこの家に住む猫の名前を聞いていた。どれもこれも、素敵で良い名前だと思った。

だからこそ、そんな名前を自分も持てるなら、是非持ちたかったのだ。それが、『飼い猫としての証』でもあるのだから。

かつおが飼い猫の名前を呼ぶ度に、彼も『名前』に対して、憧れを抱くようになった。

「自分にも『名前(飼い猫としての証)』が欲しい・・・」と、自分自身で思う様になったのだ。


「・・・でね、この子の名前の由来を先に話しちゃおっかなーって思うんですけど・・・

 実はこの子、とあるね、ご飯屋さんが立ち並んでいる、ウチの近所では割と有名な道の路地裏

 にいたらしいんですよ。

 自分ね、あんまり外食とかしないんですよね。僕料理とかあんまりできないんで、ご飯は基本

 出前です。

 ・・・だって、行くの嫌じゃないですか。ねぇ。」


そう言って、かつおは彼を持ち上げるが、彼は「そんな事を言われても・・・」という顔をする。


「それに僕、お酒って全然飲めなくて、そのご飯屋さん・・・というか、『居酒屋通り』なんで

 すよね。

 僕、お酒の『味』も嫌いだけど、『匂い』もちょっと苦手なんですよね。料理酒で・・・ギリ

 ギリレベルなんですけど。

 それに、酔っ払った人に絡まれるのって、正直もう『命の危機』としか思えない・・・という

 か。色んな意味でね。

 ほら、ニュースでも飲酒関連の事件って報道されてるじゃないですか。

 別にね、お酒が悪い・・・とかじゃなくて、健康的に考えても、あんまり飲みたくないんです

 よ。

 ・・・まぁ、そんな私なので、その道に入った事もなかったんですよ。ただね、そうゆう所っ

 ていうのは『野良猫の棲家』になっていたりするんですよ。

 人間が出したゴミを食べたり、あったかいエアコンの室外機で暖を取ったり、野良猫にとって

 そこは『天国』なんですよ。

 ただね、だからと言って放っておくわけにもいかないんですよね。

 万が一この子がね、『食べられない物』だったり、『食べたら危険な物』を口に入れたりした

 ら、責任は全部店側が取らなくちゃいけないので。

 この子はいつの間にかその路地裏に住んでいたみたいで、母猫の姿はなかったんですよ。

 施設の人もあちこち調べたんですけど、やっぱりその路地裏に住んでいたのはこの子だけだっ

 たみたいです。


 ・・・で、名前なんですけど、ご飯屋さんが立ち並んでいた裏路地で見つけた・・・という事

 で、




 『まんぷく』


 という名前にしようと思いまーす!! いえーい!!」


「いえーい!!」の言葉と同時に、かつおは『まんぷく』を持ち上げた。

すると、彼も自分の名前が『まんぷく』になった事を悟り、喜んでカメラに向かってバタバタする。

そんなまんぷくの様子がかつおにとっても嬉しいのか、「嬉しい? 嬉しいか!」と言いながら、ほっぺでまんぷくをスリスリする。

人間の肌を全身で感じたまんぷくは、その温かさに心の底から安心して、かつおのほっぺを舐めた。

人間の顔は、やはり猫よりも大きい。手も大きいが、顔の大きさから足の大きさ、何もかもが、猫とは全く違う。

だが、その大きさが逆に安心感を与えてくれるようになり、ついこの前まで、遠目から人間の姿を見ただけで怖気付いていた猫をは思えないくらい、まんぷくは大きく変化した。

今はかつおの手元から離れたくないくらい、彼にべったりな状態。


「名前の由来は、保護された場所・・・というのも確かに大きいんですけど。

 実はこの子、ついこの前まですんごくちっちゃくて、手術も難しいくらい体が小さかったんで

 すよ。

 まぁ・・・育った環境が環境なだけあって、何の病気も持っていなかっただけで奇跡でした。

 だから僕、この子にはお腹いっぱい食べて、大きくなってほしい・・・という意味合いも込め

 て、『まんぷく(満腹)』にしたんです。」

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