二十一ニャン 歩み寄りたい気持ちはあるものの・・・
かつおが、昨日撮影した彼の動画を、早速編集して動画投稿サイトにアップすると、その反響は凄まじかった。
先住猫・4匹を家に招き入れた時と同じくらいの視聴回数・お気に入り・高評価。コメントの数も百を優に超えていた。
もちろん、そのコメントの中には『批判』や『嫌味』もある。
だが、そんなコメントが埋め尽くされる程、新しいメンバーの仲間入りを喜んでいる視聴者が多かった。
「可愛いー!!」 「カメラに積極的だね!!」
「いらっしゃい!!」 「沢山愛情を貰って、4匹とも仲良くね!!」
「これからもっとかつお一家が楽しくなりそうですね!!」「繰り返し見た人、挙手」
・・・等、かつおはそんなコメントの波を見ながら、誇らしげな表情を浮かべている。まるで、我が子が運動会・文化祭で一等と取った時の父親。
そして、画面を見ているのは、かつおだけではない。かつおの仕事の進捗状況を伺いに来た4匹も、画面を見て興奮している様子。
「ミィー! ミィー!」
(ねぇねぇねぇ! これが新しい子?!)
「ウニャーウ」
(結構可愛い子じゃんか)
さくらはパソコン画面をペシペシ叩き、レイワはかつおの膝の上に座って、じっくりと拝見する。ヤマブキとネネは、それぞれ椅子の側で見守っていた。
かつおも、先住猫が新入りに興味を向けている事が嬉しいのか、普段は机の上に乗ると怒るかつおでも、その時だけは許してあげる事に。
「どう? 可愛いでしょ!
さくらの『弟』になる子だよ!」
「・・・ミャー?」
(・・・『弟』?)
先住猫4匹の中で、一番歳が低いのはさくら。だが、その順番が変わったのである。
そもそも4匹には血の繋がりもない為、兄弟姉妹の関係は、割と適当なのだ。年齢も正確には分からない為、招き入れた順番で兄弟姉妹を決めている。
つまり、かつおの猫一家に年功序列はなく、それぞれが平等の立場で接している。だから、4匹は決して威張る事もしなければ、『年齢マウント』を取る事もない。
かつおも、「お兄ちゃんなんだから」とか、「お姉ちゃんなんだから」という言葉を口にはしない。だって、皆が同じくらい可愛いから。
そもそも、今回引き取った彼の年齢も、『推定』でしかない。
だから、誕生日は『かつおと出会った最初の日』となり、サイトに載っている猫の詳細文にも、年齢は『推定』を前に入れている。
しかし、自分達4匹より体がまだ若干小さい彼を見ると、自分達より年下な事が理解できている様子。
「きっと皆なら、またすぐ仲良くなれる筈だよ。彼は慎重な性格だけど、、根は真面目だし、仲
良くなろうと近寄れる子だから。
・・・よしっ、今日も撮りに行くかなー」
そう言いながら、かつおは立ち上がる。そして、階段を登って行くと、その足音に反応した彼が、ニャーニャーと鳴き始めた。
かつおはその反応に嬉しくなってしまい、勢いよくドアを開け、ドアを閉めるのも忘れてケージを開ける。
すると、「待ってました!」と言わんばかりに、彼が飛び出してきた。
今はまだ、かつおの片手でも抱きかかえられる大きさだが、あと数日も経てば、もう片手では収まりきらない程の大きさになりそうだった。
「・・・・・ニャー・・・」
(・・・・・かつお・・・)
「えっ? あっ!
閉めるの忘れてた!!」
ようやくドアの閉め忘れに気づいたかつおは、彼を抱っこしたままドアに近づくと、部屋の前でカツオに呼びかけたヤマブキと目があった彼。
その視線に、つい硬直してしまい、ヤマブキもどうすればいいのか分からず、ドアが閉まった後もしばらくはそこで固まっていた。
そして、無意識に彼の心臓はバクバクと高鳴り、片手で彼を持っていたかつおもそれに気づいたのか、座り込んでちゃんと事情を説明する。
「この家にはね、君以外にも4匹の猫ちゃんがいるの。皆とっても良い子だから、君なら絶対馴染
んでくれると思うんだ。
さっきのヤマブキも、全然威嚇なんてしなかったでしょ?」
・・・と言われたものの、彼の動揺はまだ治らない。
何故ならヤマブキは、かつおに抱かれている彼を、ただひたすらジーッと見続けているだけで、言葉を交わす事もなかった。
まるで自分を観察している様な目つきに、思わず身震いしてしまった彼。
そして部屋の外では、硬直したまま動かないヤマブキを発見したレイワが、ちょっとだけ悪戯を仕掛ける。
その内容は単純、彼の尻尾をチョイチョイといじるだけ。
しかし、レイワの動作にちょっかいを予知したヤマブキは、チョイチョイされるよりも前に、レイワに飛び込もうとした。
「イニャー!!!」
(バレたー!!!)
「カーッ!!!」
(バレバレだぁ!!!)
ドアの向こうから聞こえるバタバタ音に、更に彼の体が震えてしまう。しかしかつおは、そこまで気にしていない様子。
何故なら2匹の戯れあいは、毎日のように行われている、かつおの家では日常茶飯の光景だから。
それにかつおは知っている、どんなにレイワからちょっかいをかけられても、ヤマブキがレイワを傷つけるような、強い力で引っ掻いたりはしない事を。




