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十九ニャン 先住猫

その後も、かつおはカメラの前で色々と話していた。そして自分からケージへと戻った彼は、そのまま寝床で眠ってしまう。

今日は色々な事がありすぎて、『頭』もだが『心』も疲れ果てていた。

家に来た直後はテンションが高かったものの、疲れがまた押し寄せて、体力も気力も底をついてしまう。

かつおは説明するのに夢中で見ていなかったが、自ら寝床に戻る彼を見て、ついついたま褒め倒してしまう。


「あらー! 自分から寝床に入ったの!

 偉いねー!

 ・・・触りたいけど我慢します。また明日ねー」


かつおのその言葉に、彼は「ウニャウ」と返すと、彼はその場で悶絶しながら悶えていた。

まだスイッチを切り終わっていないカメラには、銃で狙撃された時の様な画面になっているが、もう彼は撮影なんてお構いなしに、ただただその可愛さを痛感している。

そんなかつおを他所に、彼はあっという間に熟睡してしまう。かつおが用意してくれたすっかり寝床も気に入り、家の匂いにも慣れてしまった様子。

かつおはその場で数分悶え続けていたが、ようやく正気を取り戻し、カメラをまだ回している最中なのをようやく思い出す。


「本当はね、今日『名前』を発表しようと思うんですけど、彼が起きてる時間帯じゃないと、さ

 すがに可哀想なので、名前発表はまた後日にしようと思います。

 じゃあ、彼もぐっすり眠っているので、私も4匹の元へ行って、遊んであげようとと思います。

 ・・・もうね、さっきからずーっと下の階がバタバタしてるんですよ。多分僕がなかなか降り

 てこないから痺れを切らしているんですね、きっと・・・」


そう言って、彼は部屋のドアを見る。カメラにも、下の階のバタバタがしっかり入っていた。

走り回っているのか、ジャンプをしているのか、とにかく軽い足音が沢山聞こえる。だが、かつおはそんな猫達のわがままでさえ、愛おしく感じていた。

そしてかつおはそのまま、カメラを持って部屋から出て行く。去り際、電気を消す最中、彼にはしっかり「おやすみー」と告げて。

かつおが一階へ降りると、案の定猫達が大騒ぎ状態だった。

リビングのドアを開けると、長男の『ヤマブキ』が次男の『レイワ』に顔面パンチを喰らわせたまま、カツオを見て2匹は硬直。

『長女』であるネネと『次女』のさくらは、広々としたリビングで追いかけっこに勤しんでいた。ドアを開けた瞬間、かつおはつい吹き出してしまう。

皆が可愛くて、つい・・・


「ニヤァー ニアァー」

(遅かったじゃんかー、餌やりだけでそんなに大変だったの?)


レイワは顔面に受けていたヤマブキのパンチを払い除け、かつおに近づく。

だが、かつおが「ごめんねー! 寂しかったんだよねー!」と言いながら彼に手を差し伸べると、彼はそのままプイッと何処かに行ってしまう。

文字通りの『ツンデレ』

しかし、かつおにとっては、これがたまらないのである。

かつおは懲りずにレイワへ駆け寄ろうとするが、レイワはキャットタワーのてっぺんに登ってしまい、手が届かない。


「ニャオ ニャオォォォ」

(『新しい子』は、手間がかかったの?)


心配そうにかつおの元へ寄って来るのは、さっきまで妹と走り回っていたネネ。さくらはというと、疲れ果てたのかケージの寝床で眠っていた。

かつおはネネを片手て抱き上げ、カメラにネネのドアップを映す。ネネはカメラに対して、恐怖も興味も湧かない。

ネネが気になっているのは『カメラ』ではなく、『新入り』が気になっていたのだ。

もうカメラなんて、毎日見ている存在だから、もう興味すら湧かないのである。

それに、ネネやさくらにとって、新入りの子は『弟』と呼べる存在。

だが、さくらにはその自覚がないのか、新しい子が家に来ても、ネネにずーっとべったり。いつも通りのさくらであった。


「ネネ、新しく来た子と仲良くね。まぁ、ネネなら大丈夫だろうけどね。

 皆優しいから、ねぇー


 ・・・そういえばヤマブキは?」


ネネを一旦床に下ろし、ヤマブキを捜索する。だが、時間はそうかからない。

長年の付き合いで、ヤマブキが何処に隠れているのか、かつおなら何となく分かる。彼が静かな場所が好きなのも、かつおはよく知っているから。

・・・が、その日はいつもと違った。冬はいつも、寝床に丸まっている筈なのに、寝床を見ても姿がない。それどころか、リビングにすらいなかった。

ちょっと驚いたかつおが家中を探索すると、迎えたばかりの彼がいる部屋の前で、ドアをジーッと見ているヤマブキの姿があった。

冬の廊下は人間でも飛び上がる程冷たい、にも関わらず、ヤマブキはずっとそのドアを見続けている。新入りの彼の事が気になっている様子。かつおは「邪魔しちゃ悪いかなー・・・」と思いながらも、ヤマブキの側まで歩み寄ってしゃがみ込んだ。


「ごめんね、まだ会えないんだ。もう少しだけ、あと数日待てば会えるよ。

 ヤマブキは優しいからね、大丈夫だよ。」


「・・・・・ニャ・・・」

(・・・・・うん・・・)


かつおが飼っている猫の中で、一番鳴き声を発さないヤマブキが声を発した事で、かつおはまたキュンとなる。

ヤマブキの心意気は、かつおの心を貫いたのだ。


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