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十八ニャン 初・お披露目

「えーっと、今日は随分前から言っていた、『新しい家族』を紹介したいと思います!

 迎え入れてすぐなので、体調とかが悪かったら、後日改めて・・・にしようと思っていたんで

 すけど。

 だいぶ元気そうなので、今回は特別に、彼を迎え入れた時の詳細も交え、発表したいと思いま

 す!!


 えーっとですね、彼との出会いはやっぱり譲渡会だったんですよ。

 その地域で開催される譲渡会には、僕も毎回参加していたんですけど、そこで

「新しい家族になれそうな子はいないかなー」

 って、会場を一通りウロウロしていたんですよ。

 そこでですね、見つけてしまったんですよー!

 他の子も十分可愛かったんですけど、やっぱりね、『カメラを恐れない子』というのが、僕に

 とって大事な事だったんですよ。

 せっかく譲ってもらっても、カメラが怖い子を貰い受けるのはかわいそうじゃないですか。

 それに僕の家では、一年中ずっとカメラが回っている・・・と言ってもいいくらいなの

 で・・・

 さっきね、見せてみたんですよ、今撮影しているカメラを彼に。

 そしたらね、最初はやっぱりビビってたんですけど、もうすっかり大丈夫になったんですよ。

 で、譲り受ける子が決まったら、次にね、『去勢手術』を施したんです。

 もうね、僕のチャンネルに詳しい方なら知っていると思うんですけど、先住猫4匹・・・今下に

 テロップが出ていると思うんですけど、彼らもね、手術は受けているんですよ。

 やっぱりね、大きなメリットの一つとして、

 『病気にかからない事』と、『相手を傷つけない事』

 が大事なので・・・

 まぁね、去勢手術をしたからって、ほぼ全ての病気にかからないわけではないんですけど、可

 能性が僅かに削れてくれるだけでいいので。

 一緒にね、生きる為にもね、我が家のネコちゃんは手術を施してもらっています。

 あともう一つメリットが、『相手を傷つけない事』

 ウチはね、先住猫が4匹いるので、彼らと仲良くしてもらう為には、やっぱり受けさせてあげな

 いと、先住猫が怪我を負ってしまった時点でもう遅いですから。」


かつおが頑張って説明している間、彼はかつおの膝の上でノソノソと動き回っていた。その度にかつおは彼を撫で、飽きたらまたノソノソ・・・を繰り返す。

そんな彼の様子を見たかつおは、ようやく彼をカメラにうつす覚悟を決めた。


「ごめんね、この子がね、もう待ちきれないみたいなので、早速お見せしちゃいたいと思いまー

 す!

 まだね、手術を受けたばっかりだからエリザベスカラーはついてるんだけど、ある程度落ち着

 いたら外すからねー


 はーい! 今回お家にお出迎えしたのは、


 この子でーす!」


そう言って、かつおは彼にレンズを向ける。すると、先程と同じく、彼はレンズ越しにうつる自分が不思議で、レンズを肉球でチョイチョイ触り始めた。

その様子を見て、かつおは彼をベタ褒めする。


「カメラ面白いの? カメラ面白いの!

 そっかそっかー!」


かつおは彼の小さな頭を人差し指で撫でると、その心地良さからひっくり返ってしまう。

このままでは撮影にならない・・・と思った彼は、撮影を優先・・・するのではなく、彼を優先する。

かつおは改めて、彼の顔をジッと見た。彼の瞳は、綺麗な黒。その小さくて綺麗な瞳に、かつおの『ちょっぴり重い笑顔』が映っている。

彼も改めて、かつおの顔をジッと見た。今までは彼の顔を見る余裕がなかったものの、彼を見つめるその表情は、苦しいくらいに優しく感じられた。

かつおの整った顔立ちを前にして、彼はかつおのほっぺをペチペチと叩き始める。


彼は、ずっと不思議だった。何故自分を引き取ってくれたのか、汚い路地暮らしの自分を、何故引き取ろうとしたのか。

その疑問が、彼の心の中で、ずっと突っかかっていたのだ。だから、かつおの顔を直接見るのにも、彼は無意識に抵抗を感じていた。

だが、その笑顔を見てしまうと、もう今までの悩みがどうでも良くなった彼は、精一杯の感謝の気持ちを伝える為、ニャーニャー鳴いた。

かつおが自分を引き取ってくれた理由は、彼の表情を見ただけで、すぐ理解できる。その表情から読み取れる、


「これから一緒に暮らそうね!」 「これからよろしくね!」


という言葉の数々が、彼にとっては嬉しすぎる言葉であった。

ずっと独りぼっちだった彼が、ずっと心の何処かで欲しがっていた『家族』という存在。

例えその相手が、自分とは違う種族でも構わない。自分とは生まれた環境が違っても、育った環境が違っても、全然構わない。

自分の『良い所』も『悪い所』も理解してくれる、そんな相手に出会えた事が、彼にとっては『奇跡』そのものであった。

今までずっと、汚い体だった自分を優しく抱きかかえ、ご飯を食べるのも下手な自分の為、色々と手を尽くしてくれる。

そんな行為自体が、彼にとって十分すぎるくらいの『愛』であった。だから、彼はかつおに気を許す事にしたのだ。

彼がじゃれた拍子にかつおの指を噛んでも、かつおは「痛い!」と言うだけで、彼を抱える手を離そうとはしない。

甘噛みも、彼にとっては嬉しい行為なのだ。


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