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十七ニャン もっともっと大きくなって・・・

「いよい・・・しょ・・・っと!

 ・・・大人しいねー、君ねー」


「まぁー」

(・・・ご飯だよね?)


かつおはおもむろに、ベッドの上にあったドーナツ状のクッションを床に置き、その真ん中に腰を下ろす。そして、ケージから出した彼を太ももの上に置き、仰向けにさせる。

本当は、もっと抵抗される事を覚悟していたかつおだったが、あまりにも彼が身を任せてくるので、ちょっと驚いていた。

一瞬、「どこか具合が悪いのか・・・?!」と思ってしまう程、彼はかつおの足の上でリラックスしている。

しかし、スプーンに掬われたご飯を見ると、すぐさま飛び上がってスプーンにかじりつこうとした。

それを慌てて止めたかつおは、スプーンを持っていないもう片方の手で、彼の体を押さえ込んだ。


「落ち着いて落ち着いて!

 ・・・よしよしっ。」


譲渡会で見つけた時とは違い、一回りも二回りも大きくなった彼の力は、かつおの片手でもぎりぎり抑え込めるか分からないくらいであった。

しかし、かつおが自分の口元に、ご飯を掬ってあるスプーンをもってくると、彼は器用に舐めて食べる。それをみたかつおは、安心した様子で彼を見守る。


「よかったー! 食べてくれたー!

 これからどんどん大きくならないと、ヤマブキ達にコテンパンにされちゃうぞ!」


「・・・あぅー?」

(・・・『ヤマブキ』??)


「どんどん食べなー!」


少しずつではあるが、彼はちゃんとかつおが用意したご飯を、時間をかけてゆっくりと食べた。

時折勢い余ってむせたりするが、その度にかつおは、優しく彼の背中をポンポンする。

エリザベスカラーに付着したご飯はきちんと拭き取り、空っぽになった餌入れを見て、かつおも満足した表情を見せた。

やっぱり、自分が作ったご飯を完食してもらえると、嬉しくなるものだ。

施設で出されていた食事とそれ程変わらないものの、彼にはかつおが作ってくれたご飯が、不思議と『特別』に感じていた。

それは、かつおが丹精込めて作ったからなのか、一口ひとくち丁寧に食べさせてくれたのか、その理由は、挙げても挙げてもキリがない。

味も、施設で食べていたご飯と同じ筈なのに、不思議とかつおが作ってくれたご飯の方が美味しく感じられる。

もっと食べたい気持ちにすらなるくらい、彼にとっては『幸せになれるご飯』であった。

もうさっきまでの体の苦しさが嘘のように消え、ヨタヨタと歩きながら、ケージの周りを観察する。


「元気だなー、まぁケージの周りならいっか。


 ・・・・・撮影も・・・大丈夫そうかな?」


かつおは試しに、部屋に置いてある撮影用のカメラを持って来て、彼に見せてみた。まだ電源は点けないまま。

だが彼にとって、カメラというのは『真っ黒な鏡』にしか見えず、その黒いレンズに映る自分の姿に、思わずパニックになってしまう。

その様子を見たかつおは、「やっぱりまだダメかなー」と思ったのだが、しばらく彼を観察してみる。

すると、彼はカメラに触れても、ちょっかいをかけても全然大丈夫な事を理解して、カメラの上に乗って遊び始めた。

猫を撮影する為のカメラは、どれもこれもお高めのカメラな為、猫にいたずらされて壊されたら、かつおはしばらくはショックで立ち直れなくなる。

だからかつおは、カメラ等の機材はこの部屋に全部保管している。三脚やレンズも含め、この部屋で収納されているカメラの数は、ザッと10台くらいある。

若干ヒヤヒヤしながらも、彼が元気に動き回っている様子を見て、かつおは感動してしまう。だからつい、ケージに戻すのを忘れ、好き勝手にさせてしまう。

それに、プラスチックケースは簡単に開かない。何故なら、入っている中身が重すぎるから。

そんな重いプラスチックケースが積み重なっている為、保管したかつお本人ですら、一台のカメラをプラスチックケースの中から取り出すだけで、毎回苦労している。

だから、ケース越しにカメラを見てもらうには、全然問題ない。

彼自身、まだカメラがどう機材なのかは理解できていない。一応『機械』である事は認識しているものの、何をしてくれるのかまでは把握していない。

かつおの家には、人間であるかつおの生活を支える機械もあれば、猫の生活を支える機械もある。

例えば、お留守番中に家の中の様子を確認して、マイク機能もついている『猫用カメラ』

スマホで操縦して、猫の遊び相手や餌やりをしてくれる『猫用ロボット』

ご飯の時間、どうしても家に帰れない時、時間になると餌が自動的に補充される『猫用餌入れ』

・・・等。とにかくかつおは、家電そのものに興味はなくても、猫用の家電となれば目の色を変える。

彼が今まで見てきた家電は、全部捨てられて使えない物ばかり。実際に使われているところは、見た事がない。

かつて彼が住んでいた路地にも、『使い捨てカメラ』がそのまま捨てられていた。

だが、コンビニで売られているような品と、専門店でしか手に入らないような品では、圧倒的にフォルムも質感も違う。

だから彼にとって、『使い捨てカメラ』と『撮影用カメラ』は、完全に別物という認識なのだ。彼だけではなく、かつおも同じ認識なのだが・・・


「・・・よし、じゃあほんのちょっとだけ頑張ってみようか!」


「・・・うぁーう??」

(頑張る? 何を?)


かつおは彼を抱き抱え、膝の上にちょこんと乗せると、右手でカメラの電源を入れる。そして、カメラの前で饒舌に語り始めた。


「ハイ こんにちわー! 配信ニャンの黒子、かつおでーす!!」


彼を膝の上に乗せている為、いつもよりなるべく声量を抑え、小声でカメラに語るかつお。彼は自分の事を、動画内では『黒子』としているのだ。

そう、この動画の主役は、あくまで彼ではなく、ネコ達。から自らすすんで、黒子になっているのだ。


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