十四ニャン 四匹の『名前』
「ニャー!! ニャー!!
ニャーオ!!」
(も!! 遅いー!!
ちゃんといい子で待ってたんだから!!)
「ニィーウゥー」
(ご飯・・・)
かつおがキッチンに立つと、いつも彼について来るのは、
『ネネ』と『さくら』
の2匹。
飼い主がキッチンに立つと、猫がすぐ何処からともなく現れる。猫を飼っている家あるあるである。
かつおはこの『猫達の視線』を浴びたいが為、料理はそこまで得意ではないものの、自炊をする様になった。
だがそのおかげで、普段から外に出ないかつおでも、健康的な生活が送れている。ある意味一石二鳥だ。
最近では、料理の手順等を紹介するアプリでも、『猫が食べるお手製ご飯レシピ』が普通に載っている。
好みはネコによって分かれるものの、ちょっとスプーンで掬ってネコに見せ、ダメだったら余ってしまった分を自分が食べればいい。
食の好みが分かれてしまうのは、人間でもよくある話。一応先住猫4匹は、好き嫌いもせずちゃんと食べてくれる。逆に放っておくと、何でも食べてしまう。
・・・つまり、床に転がっている『小さなカメラの機材』でも、すぐ『おやつ』だと思って噛みついてしまう。
それは非常に危険な為、かつおは家の床になるべく『家具以外の物』は置かないようにしている。
大きな家具の場合、猫達の『爪研ぎの犠牲』になってしまうものの、自分の不手際で猫達に痛い思いをさせないだけ、かつおにとっては家具の傷なんて、痛くも痒くもない。
かつおはおやつに関しても、餌と同じくしっかり『1日分の量』を計って、一日中ずっとチビチビ与えている。
飼い主として、ネコを必要以上に太らせないのも、愛情の一つ。だからかつおは、いつもおやつを悪戯されない『戸棚の一番上の棚』に入れてある。
その戸棚の取手には『特殊な細工』が施されており、親指で上部のボタンを押したままにしないと、扉が開かない仕組み。
猫は頭がいい上に、手先も器用。ちょっと戸棚の上に置いておくだけでは落とされてしまうし、箱の中に入れたとしても、前足を器用に使って蓋を開けてしまう。
ちなみに、その棚の中には餌だけではなく、『通帳』や『印鑑』も入っている。色々とネコのために工夫を凝らした結果、防犯意識まで高まっていた。
家にある全ての窓はほんのちょっぴりしか開かない構造になっており、万が一鍵が外れたまま、ネコが窓を開けてしまっても、外に出てしまう事は決してない。
昔は外に洗濯物を干すのが普通だったが、今は『乾燥機』がついている洗濯機も多く販売されている。彼はその家で一人暮らしな為、洗濯物もそんなに出ない。だから洗濯機が回るのは、二日に一回程度。
かつお1人だけが住むには不相応な家の大きさだが、これにもちゃんとした理由がある。
愛すべき猫達が、太って病気になってしまわない為、しっかり運動をしてもらう為、キャットウォークやキャットタワーをあちこちに設置したのだ。
この家は元々『古民家』だったのだが、リフォームをした事によって、中古物件とは思えない外観と内装になった。
それに、元々この家は『平家』だった為、横には広いが縦には広くない為、高いところから猫が落下する心配もない。
あとは壁にキャットウォークを設置したり、畳からフローリングになった床にキャットタワーを追加したり・・・と、あれこれ改造を施した結果、この家は近所の住民から『猫の遊園地』と呼ばれてしまう程、妙な言葉で囁かれるようになってしまう。
しかし、それもかつおにとっては『褒め言葉』である。
どんな呼ばれ方をされようが、愛する猫達が楽しく遊んでくれるのなら、これからもどんどん改造を繰り返すつもりのかつお。
「うにゃー」
(はーやーくー)
「分かった分かった。だからレイワ、計りから降・り・て!」
先住猫4匹の中で、一番体が大きいのが、次男坊の
『レイワ』
そのネーミングは単純、元号が変わったタイミングで、かつおの家に迎え入れたからである。
ちなみにレイワは、4匹の中で特別『血統種』である『ノルウェージャン フォレストキャット』
しかし、レイワはペットショップで購入したわけでもなければ、子猫を譲り受けたわけでもない。
今日迎え入れた彼と『同じような事情』で引き取ったのだ。そしてレイワは、先住猫4匹の中で、一番の『可愛い問題児』
餌の時間になると、計りに乗って作業を妨害する。かつおが仕事をしている時にも、彼の足元をスリスリしたり、背中に直接ジャンプして来る。
痺れを切らすと、もう直接彼の足に噛み付いてくる。だが、決して本気で噛んでいるわけではない、単なる甘噛み。
だが、そんな事をされてしまうと、かつおも手を止めるしかない。そして、自分の気が済むまで構ってもらえないと、妨害を諦めずに続けてくる。
色々と面倒が多いものの、それがレイワの魅力である。
かつお自身も、レイワに色々と振り回されるものの、それが病みつきになる・・・と、動画で公言している。
さすがにその発言には、視聴者から賛否両論が来たのだが・・・
だが一部の猫ファンからは、「分かる・・・」という称賛の声も来ている。
「はーい、できたよー
・・・さてと、後は彼の・・・
・・・あぁ、そうだった、まだ名前がなかったなぁー・・・」
4匹のご飯は、毎回きっちりかつおが量を調整している。四つのご飯入れを床へ同時に並べると、4匹は鳴くのを止め、無我夢中で食べ始めた。
かつおはそんな4匹を見ながら、自分が重要な事を忘れていた事に頭を抱える。そう、かつおは彼の名前を、まだちゃんと決めていなかったのだ。
・・・だが、それはいつもの事。かつおは迎え入れたネコの見た目や、拾われた経緯等を考慮して、じっくり考える。
一応保護する前に、候補はいくつも挙げているのだが、どうしても直接目にしてしまうと、考えておいた名前がどれもおかしな気がして、また一から考え直す。
それがかつおの、ネコを保護した際の流れ。
ちなみに、『ネネ』の名前の由来は、『さくら』と一緒に保護され、さくらがいつもべったりくっついている為、『姉』を少しいじって『ネネ』にした。
『さくら』の名前の由来は、保護された季節、春に見頃を迎えていた『桜』そのままである。そして、もう1匹の保護猫はというと・・・
餌を食べてすぐ、また暖かい布団の中へと潜って行ってしまった。
「ありゃりゃ・・・
ほんと『ヤマブキ』は寒がりだなー・・・」
ヤマブキは、『山吹』が咲く『五月』に拾われた為、その名がついた。




