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十三ニャン お出迎え

「・・・・・着いたよー!」

かつおは、ケージを置いてある助手席のドアをゆっくりと開け、彼の様子を確認する。すると、先程よりも気力が戻ってきている様子に、かつおは「よかった・・・」と声を漏らす。

彼は、今まで自分が住んでいた路地やその周囲しか、外の世界を知らなかった。だから彼の後ろに広がる『住宅街』が、不思議で仕方なかった。

彼が住んでいた路地を囲む、灰色のビルとは違う『カラフルな壁』

レンガ造りの家もあれば、赤や青等、様々な色の壁がある。

あちこちの家に生えている木々は、ほぼ丸裸。地面を見ても、まばらにある茶色い草が力尽きていた。

一月の後半の為、木々の葉っぱはほぼ生えていない、青々しい雑草すらも生えない。

だが、その摩訶不思議な枝の姿は、まるで『人間の手』の様で、急に彼は怖くなってしまう。

その様子を見たかつおは慌ててケースを持ち上げ、「そっか! 寒いもんね!」と言いながら、慌てて家のオートロックを解除する。

彼にとって、オートロックを外す音でさえ、今は恐怖の対象となってしまう。

彼は首に巻き付けられたエリザベスカラーを引き摺りながら、ケースの奥へと避難する。

ちょっと気力を取り戻したものの、またすぐに疲れが押し寄せてしまい、外がどうゆう状況なのかも、確認する余裕はなかった。




「ニャー」 「ニャー、ニャー」


「あぁ、ごめんねごめんね! ちょっとこの子、まだ本調子じゃないんだ!

 後で遊んであげるから待っててねー!」


彼は玄関までお出迎えをしてくれた4匹の猫をスルスルと避けながら、ケージをひとまず二階へと運ぶ。その動作も、もはや『慣れている足取り』である。

二階にある部屋は、割と広い物置が二つと、猫達が入れないように低めの柵が設置されている部屋が一室。

どうしても猫と離れないといけない時や、猫同士を隔離する為に、その部屋だけは特別に、『猫ドア』もないのだ。

この家の全てのドアには、絶対に猫ドアがある。トイレやお風呂にはないものの、猫がドアをひっかく音を聞けば、すかさずかつおはドアを開ける。

入浴中でも、用を足している最中でもお構いなし。

もちろん、仕事部屋のドアにもしっかり猫ドアが設置されている為、先住猫4匹も、家にあるいくつもの部屋がどうゆう部屋なのかを、かつおとの付き合いで学習している。

病院や仕事の都合で、どうしてもそうゆう部屋が必要なのだ。

今の彼は、かつおの家に迎え入れられたばかりで、まだ自分が『飼い猫』という自覚も、ほんの僅かにしか持てない。

だから、しばらくはゆっくりさせつつ、この家の『匂い』や『感覚』に馴染ませながら、かつおが自分の『家族』である事を自覚させなければいけない。

中途半端に先住猫に会わせてしまうと、互いに混乱して今後が上手くいかなくなる可能性だってある。それは、かつおも学習済み。

それに、事前にその部屋には、彼が安心して『我が家』という認識を持たせる為に、既にケージやトイレ等もしっかりセットしてある。

ケージに登っても倒れないように、ケージの底は固定させていたり、暖かくして眠れるように、猫用のモチモチ布団もセットしてある。

先住猫の中に、一際寒がりな子がいるので、特に暖房器具には力を入れている。

しばらくはかつおも、彼と一緒の部屋で就寝するつもりな為、『人間用』の布団も準備済み。

ただ、彼の布団よりかつおの布団の方が、やけにボロボロである。あちこちがほつれている上に、色もだいぶ薄くなっている。

白い部分に関しては、もはや『クリーム色』になっていた。

だがかつお自身、就寝用の布団や寝巻き等には特にこだわりがあるわけでもなく、ブランドや寝心地はそこまで気にしないのだ。

だが、それ以外に拘っているのは、布団や寝巻きにも猫がいるくらい。

かつおの体格自体、高身長ではあるものの細身な為、可愛らしい猫がプリントされてある、女性物の寝巻きでも全然構わない。

そこに猫がいるなら、そこに猫がいてくれるなら・・・


「よ・・・い・・・しょ・・・っと!!

 ふー・・・・・」


かつおは慎重に、慎重に彼を持ち上げ、そのままケージの中へと入れる。

途中でエリザベスカラーがケージに当たって、一瞬ヒヤヒヤしたものの、彼は無事にケージの中へと入ってくれた。

まだ手術の疲れが抜けていない為、ケージの中を動き回る事はまだできないものの、彼は早速トイレの場所を確認する。

トイレの流れも、施設で頑張って覚えた。野良時代は、そこら辺でしても全然構わなかったのだが、今は状況が違う。

かつおは彼がトイレをしている間も、ずっと目を離さなかった。トイレの使い心地を確認する為である。

かつおは猫の反応・行動に詳しい。だから彼の行動をひと目見ただけで、そのトイレの使い心地を、なんとなくではあるが把握できる。

だが、そんな事をしている間にも、部屋の前では4匹の鳴き声が聞こえる。帰って来た飼い主に、構ってほしくて仕方ないのである。

かつおも今すぐ部屋を飛び出して、4匹と戯れたいのだが、彼が一旦落ち着くまで、かつおはしばらくケージの中を凝視していた。

ケージの中には、トイレや寝床の他にも、『エビの蹴りぐるみ』がある。彼がソレの匂いを嗅ぐと、柔軟剤とは別の、『自分に似た臭い』がするような気がした。


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