百ニャン 病院へ・・・(その1)
猫達を『病院』に行かせる・・・という作業は、『お風呂』に続いて大変な作業の一つである。
猫によっては、ケースにあっさり入ってくれる猫もいるのだが、そうでない猫の方が多い・・・
かつお家の猫は、一日に二匹診てもらう流れ。そうしないと、時間と日がかかりすぎる。
それに、いつも『異常ナシ』・・・と診断されるわけでもない。
何か体の異常があれば、説明を聞く必要がある。何も異常がない方がいいのだが、そうもいかないのは、人間も同じ。
水分補給を怠ってしまったり、下痢気味だと、獣医からの説明を聞いて、薬の飲み方も教えてもらう。猫の診察は、ある意味『飼い主と獣医のカウンセリング』と言っても過言ではない。
相手は自分の意思や体調を、言葉にして発しない動物。
だからこそ、ペットの異変をすぐに発見できるかできないかは、飼い主次第である。
そうなれば当然、飼い主の心にもプレッシャーがのしかかる。
だから、動物の診察だけではなく、飼い主の相手をする事も獣医の仕事。
「ヤマブキー! レイワー!
ケースの中に入ってー!」
(・・・・・・・・・・そうか、もうそんな時期か。)
(あー・・・憂鬱・・・)
かつお家の猫は、病院に行くのにさほど苦労はしない。
自分からケースに入ってくれないものの、呼べばかつおの足元まで来てくれるので、側まで来た猫達を抱きかかえ、ケースに入れるだけ。
病院嫌いな猫になると、ケースやリードを見ただけも逃げ出してしまうが、かつお家の猫達も、病院がそこまで好きなわけでもない。
猫達が素直にかつおの呼びかけに応えてくれる理由は、『ドライブ』である。運転手であるかつおと車に乗って移動するのが、5匹全員が好きなのだ。
まんぷくも、いつの間にか車の虜になってしまったのか、あの『お刺身事件』で病院から帰る時も、まんぷくは窓の外の景色に釘付けだった。
そしてもう一つ、猫達は『ある習慣』を学習しているのだ。それは、病院後の『おやつ』
後から『ご褒美』が待っているのなら、とっとと済ませておやつにありつけたい。
憂鬱な表情になっているヤマブキ達だが、時折目線が『おやつ置き場』に向く。
かつおにとっては、『お利口な猫達』という認識だが、猫達の目的は、単に『主人に迷惑をかけない為』だけではない。
そうゆうちゃっかりしたところも、猫の魅力である。
「よし、じゃあしゅっぱーつ!」
ケースを二つ入れて車を発進させると、早速ヤマブキとレイワは、窓から見える景色を楽しんでいる様子。
黒目が忙しなく変わり続け、首も小刻みに動いている。そんな様子を、赤信号を待つ間に楽しんでいるかつお。
車はクーラーで涼しくしているものの、外の暑さは鳥でさえも我慢できない様子で、木陰に水鳥が密集して涼んでいた。
もう時期夏休みを迎える小学生達の荷物が増え始め、日傘を差しながら歩いている女性も増え始めている。
時折車の中に直射日光が差し込むと、2匹は同時に引っ込んでしまう。
本当は曇りか雨の日なら、暑さが多少和らぐのだが、診察する日をそこまで厳選してもいられない。
駐車場に車を止め、キャリーケースを二つ取り出すと、かつおはなるべく両手を揺らさないように、足早に動物病院へ駆け込む。
たった数秒程度とはいえ、この暑さに晒される時間を少しでも削りたい、かつおなりの思いやり。
「こんにちわー」
「あっ、かつおさんですねー! お待ちしていましたー!」
今日の動物病院には、犬と猫を連れた男性と、猫を連れた女性がいた。
ヤマブキとレイワは、犬を見るなり威嚇を始めてしまう為、かつおはなるべく犬から離れた位置に座る。
だが、犬はお構いなし迫って来る。
男性が必死になって静止させようとするのだが、大型犬の勢いというのは、大人の男性でも肩が外れかねない力。
その勢いに、思わずかつおも後ろに引いてしまう。
猫も好きだが、犬も好きなかつお。
気に入られているのは嬉しいのだが、猫達の威嚇がヒートアップして、ケージを壊しそうな勢いになる。
動物病院ではよくある光景な為、受付の女性は笑いながら犬の相手をしてくれた。
その隙に、かつおと2匹は診察室へと入っていく。
「シャーッ!!!」
(やめろやめろやめろー!!!)
「レイワ落ち着いてぇ!!」
獣医の顔を見るなり、レイワは診察台で全身の毛を逆立てた。ヤマブキは、大人しく獣医の診察を受けている。
「すいません、いつもいつも・・・」
「いえいえ、元気そうで何よりです。」
そう、人間でも動物でも、本当に元気がない時、具合が悪い時は、抵抗する気力すら湧かない。
だから、元気よく抵抗している事は、目に見えて元気な証拠。
診察時に若干暴れるのは危険だが、抵抗もなく無抵抗に診察される方が、逆に怖くなる。
例えるなら、いつもは元気いっぱいにはしゃぎ回る我が子が、急に具合を悪くして無気力になってしまう感覚である。




