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天才子役!天原久遠のオーバーワーク  作者: あすもちゃん
進撃の小学生編

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164/174

164、学校ギルド3

「「よろしくお願いしまーす!」」


「ようきたねぇ」


「あんれまぁ随分めんこい子たちだこと!」


バスから降りると優しそうな老夫婦がわざわざ迎えに来たので元気に挨拶する。


「突然の訪問失礼いたします、わたくし大和テレビの村井と申します撮影の許可を頂きたく……」


「ええよええよ」


記者さんこと村井さんが撮影許可を求め交渉する。

事前に私の方から撮影が入ることを伝えていたからスムーズだ。


「テレビに出るっちゅーことはなんや、この子たち芸能人かなんかか?」


「やだよぉお爺さん、今はやりのアイドルってやつですよ、こんなにめんこいんだから」


「確かになぁ、なんか見たことあるき気がするわ」


どうやらこの人たち、私たちのことに気付いてないっぽい。

私は村井さんに目で合図をする。


こくりと頷く村井さん。


よし、正体は隠すパターンでいこう。


「それでおじーちゃんたち、私たち今日なにすればいーの?」


「うちでは色々育ててるんやけど、9月になったから今日はサツマイモ掘りを頼むわ」


サツマイモか、子供に大人気のやつだな。

初心者には丁度いい。


「サツマイモ、ですか?」


そのまま食卓に出てくるタイプの芋じゃないからか、

せっちゃんにはイマイチピンと来てないようだ。


「スイートポテトとか芋ようかんとかお菓子に使われるね」


「あ、食べたことあります!美味しいですよね!」


和菓子にも使われるし、高貴な人にも馴染みがあるだろう。


「終わったら焼き芋にしてあげるでね」


「わっ、それ最高!」


「焼き芋?」


「あんれまぁこれまた随分なお嬢さまだねぇ、ま、楽しみにしとってよ」


「じゃ、畑行くでよ」


「「はーい」」


ホッカムリをしたおじいさんに着いていく。

私達も麦わら帽子を被り、長い髪を収める。


『どうやら今日はサツマイモ掘りに挑戦するようです。本来ならせ、おっと、このお二人には縁のない世界、でもこうして体験できるというのも学校ギルドのいいところですね』


合間合間にナレーションを挟み、少し離れた場所でなるべく気配を消す取材班。

さすが慣れたものである。

私達は気にしないで作業をしよう。


「わあ、これが全部お芋ですか?」


「今年はよく実ってくれてありがたいわ」


畑に着くと見事にサツマイモの葉が生い茂っていた。


「今日はここからここまでの範囲を掘っていくでね」


全体の4分の1程度を指定される。

まあ子供二人には妥当なところか。


「じゃあまずは葉っぱを刈るよぉ。この鎌を使ってこうやってこう」


「ほうほう」


「こうですか?」


私自身が畑仕事をするのは初だが、タケルの記憶と動画サイトで予習していたのである程度は分かる。

実際に刈る蔦はちょっと固いな。

少し力を入れて鎌を引く。


「お、最近の子は意外と力あんねぇ」


「んー固いですぅ!」


「はっはっは、こうすると切りやすいでよ」


「うーん、あ、こうですか?」


最初は苦戦していたせっちゃんも、コツを掴んだのかザクザクと切り始める。


「ここは私たちがやるから、おじいちゃんは休んでてよ」


「はい、お任せください!」


「そうかい?すまんねぇ」


ずっと中腰で蔓を切るのだ、老体には辛かろう。

農業ってほんとに大変だ。


刈ることしばし。


「できましたー」


「おじいちゃん終わったよー」


「おお随分早いのぅ、じゃあ次は儂が畑を掘り起こすから、あんたらは芋を掘っていってくれ」


そう言うと豪快にクワを振るい、土を掘り起こしていく。

芋は一切傷つけない、熟練の技だった。


「蔓を引っ張ってと」


「あ、何か出てきましたよ、これがサツマイモですか?」


「そうそう、傷つけないように優しくね」


「そーっと、採れました!」


頬に土を付け、笑顔でサツマイモを掲げるせっちゃん。


「記者さんっ、わたくしでも採れましたよ!」


『おめでとうございます刹那様!』


なんと尊い姿だろうか。

思わずスタッフ総出で涙ぐみながら拍手を送る。


「なにやっとんじゃお主ら……」


土を掘り終えて戻ってきたお爺ちゃんは引いていた。




そんな感じで楽しく芋ほりをしていた私とせっちゃん。

さてあと半分くらいかな、という所で事件が起きた。


「ジジイ帰ったぞ!ババアっ、ジジイはどこだ!」


「あん?」


母屋の方で品の無い怒鳴り声が聴こえてくる。


「なんでしょう?」


「あんのバカ息子が……」


ニコニコと温厚そうだったお爺ちゃんが苦虫を噛み潰したような顔をして母屋へ向かう。


「こりゃ!お客が来とるっちゅうのに何を騒いどる!」


「おおジジイ!」


「お爺さん、太一が……」


「ジジイ、農場を手放す決心は着いたか⁉」


「誰が手放すか!ヤクザになんて堕ちおって、この親不孝もんが!」


うわぁ。

これはまた絵にかいたようなドラ息子だな。


「いいじゃねぇかこんな後がない畑なんてよぉ、潰してパチンコ屋にでもした方が何倍も儲かるぜ」


「お前が継げばいいじゃろが!」


「イヤだねっ、農業なんてだっせぇ仕事やってられっかよ!」


ガシャンと農具を蹴り上げる。


「やめんか!」


うーむ、どうしたものか。

普段の私ならドラ息子をぶん殴って、こいつが手を出せないよう畑を買収したりするのだが、今日はまだギルド活動一日目。

初日からこの調子ではこれから毎回事業に手を加えるハメになりかねない。


私は気楽に楽しくギルド活動をしたいのだ。

そんな毎度のように仕事を広げたくない。


とは言えこのまま無視するのも感じ悪いしなぁ。


とりあえずせっちゃんの教育にも悪いし出直すか。

そう思って撮影班に目くばせをし、ここを出ようとしたが――


「待ってください」


「せっちゃん?」


せっちゃんが毅然とした態度で前に出た。

撮影班もカメラを構える。


「取り消しなさい」


「ああ”?なんだこの小汚ねぇガキは、っていうか何撮ってやがる!」


「農業はダサくなどありません、立派で尊い仕事です」


「お嬢ちゃん……」


「な、なんだよ……」


せっちゃんの不思議な気迫にたじろぐドラ息子。


「取り消しなさい」


「う、うるせぇ!ガキが口出すんじゃねぇ!」


子供相手に怯み、

恥じた太一が逆上し殴りかかってくる


が、当然そんな拳がせっちゃんに届くはずもなく――


「させないよ」


伸ばされた腕を掴み、そのまま一本背負いで地面に叩きつける。


「がはぁ⁉」


「くーちゃん、あの……」


「いいよ、せっちゃんのやりたいようにしよう」


とその前に。


「く、クソっ何だこのガキは……!」


のそりと起き上がる太一から守るように、

私はせっちゃんの前に出て仁王立ちする。


「そこをどけ!さっきは油断したが、もう容赦しねぇぞ……!」


頭に血が上り吠える太一。

やれやれ面倒だ. ここは日頃のごっこ遊びで鍛えたあれをやるしかないだろう。

私は村井さんに視線を送ると、何かを感じ取ったのかカメラマンに指示を出す。


よし。


「控えおろーーう!」


ザっとスタッフが跪く。

カメラマン以外。


「な、なんじゃなんじゃ?さっきから何が起こっとるんじゃ⁉」


「お爺さん!」


お爺ちゃんたちも条件反射で跪く。


「ここにおわすお方をどなたと心得る!」


「な、なんだ!誰なんだお前は!」


この期に及んでもまだ分からないとは、愚かな奴め。

私はウェットティッシュでせっちゃんの顔の泥を拭いてあげる。


「恐れ多くも天皇陛下のお孫様、刹那内親王殿下であらせられるぞ!」


「あはは……刹那です」


困った顔で帽子を取り、名乗るせっちゃん。


「はぇぇぇ⁉似てると思ってたが、はぇぇぇ⁉」


「お爺さん違いますよ!ははぁぁーー!ですよ!」


「そうじゃ!ははぁぁーー!」


驚き混乱するお爺ちゃんたち。

いいリアクションだ。


「あ、あんたが、刹那……様?そういや見たことが、それにお前は……」


「天原久遠。月詠の、と言った方が早いかな?」


「……ッ!」


太一の表情が一気に青ざめる。

こういう裏関係は月詠の名が妙に効く。

一体過去に何したんだろう。


「で、どうする?」


「っ!も、申し訳ありません、でした……!」


「うむ」


本心からとは言えないが、

ようやく太一も事態を飲み込み首を垂れる。


「あの、くーちゃんこれする必要あるんですか?」


「あるある、大事なことだから」


反抗的な悪人も言うことを聞く魔法の儀式だ。


「じゃ、せっちゃんあとは任せた」


「もう……」


困ったように笑いながら、せっちゃんは太一を見下ろす。


「太一さん」


「は、はっ」


「一緒に芋を掘りましょうか!」


「はい?」


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