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第一章27 『カルミラの最低辺から』

 思い返せば、その兆候は実に多種多様に存在していたはずだ。


 ――サクラからの告白を思い出しても、顔も頬も染めなかったこと。


 ――サクラのトゲのある言葉に、なにも反応をしめさなかったこと。


 ――誰彼が登場しても、全く驚きもしなかったこと。


 まだまだ、数え上げればキリがない。


 それらすべて、心を、殺していたから。


 『最善』のために動けるように、理性が体を動かす操り人形に自分を仕立てあげるために、心をなかったことにした。


 すでに死んだと言われた人を火葬してみせた、あの瞬間から。


 もう一度、一度でいいからサクラやコウタの亡骸に、自分が殺した何万人もの人に、『ごめんなさい』を言いたいエゴを、理性の刀で切り伏せて。


 だから感情が分からない。


 心の死んだ自分がひどい顔をしていると言われても、それに気づくことができない。


 普通なら神経を逆撫でするような言葉があっても、それに何の感情も見せることはない。


 ――でもそれも、()()()()だ。



「――疲れたでしょ? ごめんね、迷惑かけて。でも、もういいの。楽になって、いいんだよ」

「――――――ぁ」


 その言葉が、きっかけだった。


「――――サク、ラ」


 ケイの視界が、水気を帯びて霞む。


 二度と会えないはずの親友にまた会えたことを何とも思わなかったケイの心が、今になって軋みをあげて動き出す。


 感情の蓋の決壊と、ケイの言葉のたがが外れるのは、同時だった。


「――なんで…………っ、なんで……死んだんだ……!」


 口をつけば溢れるのは、理論も合理性も欠片もない、無垢で純粋な感情の塊。


「まだ生きてろよ……っ、これからだろ!? まだやりたいことも、それこそ死ぬほど、あったんだろっ! なのに、何で、何でっ、俺を、置いていくんだよ――!」


 死んだ人は生き返らない。当たり前の話であり、この世の常識。


 だがケイは、子供のように涙を流し、その理屈に必死で立ち向かう。


「一人だけ残って、寂しいだろ……! そばにいてくれよ……っ!」


 それは別に、恋人として、という意味ではない。


 この日本から遠く離れた、異世界。奴隷として召還され、自分以外の人間はそのほぼすべてが死に絶え、残された日本人はケイただ一人。


 ケイは、この異世界での孤独をいやしてくれる誰かが、ずっと欲しかった。


 親友として今までの十年間を一緒に過ごしてきた友達と一緒なら、見慣れないものだらけの異世界でも、やっていける気がした。


 なのに。


「ごめん……ごめんね、ケイ。でもさ、ほら、私、死んじゃったから」


 サクラはそう言って苦笑いし、ケイに謝ってみせる。


 サクラが『生きたい』と言ってくれないこと――すなわち『自分の死』を受け入れているという事実、それがケイからすればとても悲しく、寂しかった。


「――私はさ。もう、死んじゃったから、ケイの隣にいてあげることはできないよ」


 気づけばケイの周りの視界は、あの白いだけの世界ではなくなっている。


 そこは、遊園地だった。学校だった。商店街だった。海だった。


 電車の中で、通学路で、草原で、星空の下で――――


「…………ぁあっ、ぅあぁあああっ――――」


 それは、記憶。


 ケイとサクラと二人が共有していた、この十数年間の、記憶。


 流れ去っていくその記憶の情景は、まるで映画のエンドロールをみているような感覚があって。


「ちゃんと、幸せをつかんでねって。あと、女の子は大事にしてあげなきゃ。ちゃんと生活リズムは崩さないで、周りの人には迷惑をかけすぎないように。いろいろ言いたいことはあったけど、そんな風にいったよね」


 サクラはそう言うと一転して意地悪な笑みを浮かべ、泣きっぱなしのケイに向かってどこかからかうような口調でこう告げた。


「――死ぬ前に、私、ケイにそう頼んだのに。もう、忘れた?」

「忘れたりなんか、するかよ――っ!」


 涙ながらにしゃくりあげるケイの脳裏には、サクラが死に際に残した言葉と、その想いが確かによみがえってきている。


 心を押しとどめた理性によって隠された言葉が、今ならケイのすすみたい道を、その先を、明るく照らしてくれる。


「――じゃあさ。こんなとこで墓守なんてしないで、世界を回ってきてよ」

「……世界、を?」


 まるで『ちょっとお使い行ってきて?』みたいなノリでそう頼み込むサクラにケイが目を丸めると、サクラは得意げな表情で言葉を重ねた。


「そ。この異世界ライフをさ、存分に楽しんできてよ。あの世(こっち)に帰ってきてから、私たちに、『あぁ、いい人生だった!』って、胸張って笑えるようにさ」


 その言葉に、ケイの心に暖かく明るい火が、確かに灯る。


「――今、ケイは一人じゃない。隣に支えてくれる人がいるでしょ?」

「――ルイン、のことか」


 自分を助けてくれたあの桃髪の少女のことを思い出したケイがそう告げると、サクラは「すごい名前つけたねぇ」と思わず頬をひきつらせてみせる。それは、今のケイからしても若干同感だった。


「まぁでも見た感じ、あの子ならケイを支えてくれるよ。あの子はきっと、ケイを一人にしておかないはずだから」


 それはケイも、どことなく察している。ひどく現実離れした容姿を持つくせに、最初は『当機が』なんて一人称を使っていたのに。


 その心は『友達が欲しい』だったのだ。


 あのぼっち美少女が、ケイを置いてどこかへいくとは、なかなか考えられない。


 ――そしてそういうケイの心を、サクラも察していたのだろう。


「――だからきっと、ケイならやれるって」


 もう一度、無邪気な、だが確信に満ちた口調でそう告げた。


 その表情は、今までケイが見てきたどの表情よりもいい顔をしていて。


「――ああ。行ってくるよ」


 ケイも気づけば、そう口を開いていた。


 その力強い答えに安心したのか、サクラはふっと表情を和らげ、どこか気恥ずかしそうに頬を掻いた。


「……私からの、プレゼント。ケイの大事な大事な、心。受け取ってくれた?」


 ケイはその言葉に一つだけ、小さく頷いてみせる。


 その胸中には、サクラからもらった暖かい期待が、今はまだ火種にすぎない熾火が、確かに熱と光を発しているのがわかった。


「――じゃあさ、プレゼント。こいつからも受け取ってあげてよ」

「こいつ?」


 サクラが口にした『こいつ』というなれなれしい言葉に、首を傾げるケイ。


「――――ぁ」


 サクラがなれなれしい言い方をする、その相手。


 ぱっと脳内を駆け巡る記憶の中からケイがその心当たりを引っ張り出すのと、サクラの隣にもう一つ光が生まれるまでにはそう時間がかからなかった。


「――――――コウ、タ!?」

「――よぉ、ケイ。また、会ったな」


 ケイが目を丸めて目の前の青年――コウタを見つめると、コウタはどこか居心地悪そうに苦笑いのような表情をつくり、手を控えめに挙げて見せた。


「――――っ、コウタ……お前もだぞ……! 何で、死んだんだ!?」


 すでにケイたちを取り巻く景色は、その光景を一変させている。


 めまぐるしく移ろう日本での記憶の数々から、この異世界でさんざん駆け回った、今は遙か地下にしかない施設。


 コウタがその命の灯火を吹き消した、この通路に今、ケイたちは立っていた。


 白くない背景になり世界に色が付いた今なら、コウタやサクラたちがその姿がうっすらと透けていることが、ケイにもよくわかった。


「サクラを痛い目に遭わせて……! まさかあんな死に方しといて、罪滅ぼしができたとか思ってんじゃねぇよな!?」


 そう食ってかかるケイの剣幕に、コウタはしかし全く怯まない。


「――まあ、サクラはともかくとしてさ。あんな退場の仕方じゃ、ケイに簡単に許してもらえるとは思ってねぇかな」


 せいぜいが苦笑いをして、頭をがしがしと掻いてみせるぐらいだ。


「じゃあ――っ!」

「でもな、ケイ。死んだヤツは生き返らない。それが、この世界でも元の世界でも同じ、万人共通のルールだ」

「――――っ」


 言いたかったことを先回りしてつぶされたことに、ケイが思わず歯噛みをする。


 どこか悔しそうで、そして悲しそうなケイの様子に、コウタは「でもな」と控えめに声を発し、話を続ける。


「命は、有限だ。でも、想いってのは、いつまでも残るんだよ」

「想い……?」

「そう、想いだ。誰かを好きな想い、嫌いな想い、助けたいっていう、いろんな想いは世代を越えて残る」

「コウタ、何を……」


 コウタの意図が読めずに狼狽するケイを後目に、コウタはケイに向かって驚くべきことを告げた。


「そして、ケイ。これから、世界を回るんだろ? なら、ヒントをやるよ。()()()()()()()()()()()()()。死を越えて、世代を越えて連綿と伝わり続ける、想いの力そのもの。それが、この世界で言うところの魔法ってやつだ」

「なんで、それを今……?」


 魔法が想いの力。おそらく、この世界の真理に一歩迫れる言葉なのだろうが、それよりもケイはコウタがなぜそのことを今口にしたのかが分からなかった。


 コウタはそのケイの様子を見てどこか苦笑したような表情を浮かべ、


「だから、俺からはケイ。この魔法を――贈らせてくれ」


 そう、口にした。


 刹那、コウタから暖かく明るい光がケイたちを含んで世界を照らしだし、ケイの全身をやすやすと包み込む。


「――こいつは、俺とサクラの心の現れだ」


 光に視界を遮断されたケイの耳に、コウタのどこか覚悟と静謐さの入れ混じったような声が入ってきた。


「サクラを殺してしまった俺への戒めで、サクラとお前への赦しを乞う気持ちで、この先お前を見守っていたいっていう、俺の想いの現れ。それに、お前を想うサクラの気持ちと、その未来を案じる想いの結晶。それが――こいつだ」


 突如、光が掻き消える。


 だがそれは決して電化製品の電源を落としたような乱暴な消え方ではなく、役目を終えた光が元の場所に帰る、そんな印象を抱かせる消滅の仕方だった。


 その光の後に、コウタの手のひらに残ったもの。


「――これ……ナイフ?」


 それは、見目美しい銀色を放つ、金属のようなもので作られた小さなナイフのアクセサリーだった。首からかけるためだろう、その上端には同色のチェーンが伸びている。


「ああ。まぁ、変なものを贈ってもあれだし、食べ物だったら一瞬で食い切っちまうだろうからさ。いつまでも残って、分かりやすいものだったらいいかなって。きっと、役に立つはずだ」

「――――ありがとう」


 ケイが温度の感じられないコウタの手から受け取ったそのナイフは、とても暖かく、そして輝いていた。


 それをケイが首からかけたのをコウタが見届けると、一歩下がって今までのやりとりをずっと見つめていたサクラに並び立つ。


 いつの間にか、ケイたちの周りは明るく開放的な草原に変わっていた。


 どこまでも続く背の低い青草の中に花がコントラストを加え、色とりどりの自然のカーペットの上を風が駆け抜けていく。


 そんな景色の中で、ケイたちはたたずんでいた。


「――さてと。じゃ、これで渡すものは渡したね」


 そう、サクラが口を開く。


「言いたいこと、言わなくていいのか?」

「もう言ったし! あのねぇ、ああいう言葉ってのは何回も重ねたら効果が薄くなるって相場が決まってんの! 分かる!?」

「ああぁ、もう分かったって……」


 そんなどこかいつも通りで、それでいてひどく懐かしい、二人のやりとり。


 今までずっと側で見てきて、だがこれから見られることはきっとないだろう。


「やっぱ、俺と来てはくれないのか?」

「――――」


 寂しそうに、でも諦めの色をにじませたケイがそう尋ねると、三人の間に一瞬だけ沈黙が訪れる。


「――ケイがそんなに寂しがりだとは、思わなかったなぁ」


 でも、沈黙は一瞬だった。


「でも……ダメだよ、ケイ、そんなこと言ったら。私、せっかく振り切れたって思ってたのに、また未練、できちゃうじゃ、ない……!」


 サクラは途中からもう、半分は涙声だった。その様子を見ていたケイも、思わず瞼の奥が熱くなってきてしまう。


「俺には、そんなことをできる権利はない。こっちでケイを見守って、罪滅ぼしをゆっくりしていきたいかな」


 対してコウタは、どこか悟りきったような、穏やかな表情と口調だった。その瞳の奥には、ケイにも動かせないことがはっきりとわかるほどの決意が秘められているのが分かる。


 コウタとケイは一度、視線を絡めて頷きあう。たとえサクラを殺しても、どれだけ憎かった過去があっても、十数年来の親友の間の意志決定に言葉は不要だった。


「もぉ……ケイ、女の子は大事にしなきゃって、言ったじゃん……!」

「……ああ、なんつーか、ごめん」


 サクラはまだ涙声だが、言葉に込められた感情はどこかさっぱりと乾いている。


「あはっ、ほんと、最後までケイらしいね……」


 そう言ったサクラが指で瞳にたまった涙を拭ったのを見て、ケイは静かに声を発した。


「……まぁ、なんていうかさ」


 ケイのその言葉に、二人の親友が顔を上げる。


 その体から周囲に広がる花畑が透き通って見えたのを感じたケイは、おそらく永遠の別れに眉を一瞬潜め、だが次の時にはもう、精一杯の虚勢を声に乗せて口を開いていた。


「俺もたぶん、ちょっといろいろあって、しばらくこっちにかえってこれないかもしれないけど――」


 この感情をどう言葉にしたらいいか分からない。でも、口は勝手に動き、ケイの整理のついていない心の中を勝手に描き出す。


「ううん。ずっとここから、見守ってる――」

「ああ。早く帰ってきたりなんてしたら、叩き返すからなっ」


 そんなまとまりのない言葉の意図を汲んでくれる二人の力強い言葉に、ケイの心の中が確かに暖かくなった。


 その言葉で、それまで整理のつかなかったケイの心は、決まった。


 感情の波が引くように凪いでいくケイの胸中に残ったのは、長らく口にしていなかったような気すらする、たった一つの言葉。


 軽く手を挙げるだけで、ほかの二人はその意図を汲んでくれる。



 息を吸えば軽く染みる鼻を鳴らしながらも、ケイは、サクラは、コウタは。


「「「――――じゃ、()()」」」


 学校からの帰り道、違う道をたどる親友を見送った時のように、軽く、からっとしていて。


 当面の間は交わされないであろう、だがあと()()()もすれば再び交わされる、再会を誓う言葉。


 そんな言葉を、口にした。


 次の瞬間に世界を満たす光から、ケイはもう目をそらさなかった。


 世界が消える。言葉とともに駆け抜けた風がケイの髪をさらい、目を細めさせる。


 それでもケイは、輝きを増す光から目をそらさない。


 だからケイは確かに、見ることができた。


 光の中に消えていく二人がケイに向かって笑顔で大きく手を振り、


 その口の動きで揃って『頑張れ』と自分を励ましてくれたところを。


「――――っ、」


 答えを返そうとしたその時、ケイを包んでいたひときわ光が強くなり。


 ケイの意識の最後に、一陣の風が駆け抜けた。



   ◆  ◆  ◆



 頬が、濡れている。


 まだ暖かく両頬の筋を伝って流れるそれは――涙、だ。


「――――ますたー?」


 自分を呼ぶ、少女の声がする。


 目を開けば案の定、寝転がったままの自分を上から見つめる少女の心配そうに揺れる瞳と視線が交錯した。


「――――あぁ、ルインか」


 そうあげた声が自分でも思った以上に明るくて、ケイは思わず驚いた。


 そのケイを見ていたルインが、どこかおずおずと声をかけてくる。


「ますたー、……大丈夫、なのですか?」

「大丈夫……? いや、どういう意味だ?」


 地面に寝転がったまま首を傾げたケイに、ルインはしばし何かを考え込むような様子を見せてからこう言葉を紡いだ。


「なんだか寝ていたますたーの体が燐光を発したと思ったら、いきなりますたーに魔力が集まりだしたのです。ルインが魔力供給をしていないのに勝手に魔力が流れ込んだから、なにが起きたのかと……」

「ん…………? あ、もしかして」


 ルインの話を聞いていたケイの脳裏に、ふと電撃のように閃いたものがあった。


 あれが夢でないなら。いや、夢であらばこそ、きっと()()は自分の元にあるはずだ。


「頼む、あってくれ――――っ!」


 そう念じながら自分の()()を漁ったケイの指先に、ふとふれる暖かくも確たる感触。


 確信とともに引っ張りだしたそれは、


「――――ははっ、やっぱ、あったか……!」


 ――あの夢の中で託された、小さな金属性のナイフのアクセサリーの形をしていた。


 それを見たケイの頬が、人知らずゆるむ。


 あれは、ケイの脳が見せた幻じゃなかった。死してなお自分を案じるあの親友が、自分を励ましてくれたのだと。


 そのことが確信できたことが、どうにもうれしくてたまらなくて。


「ますたー?」

「いや、俺は大丈夫。――――もう、大丈夫だ」


 前半は、自分を案じるルインに向かって。


 後半は、あの空の先で自分を見守っている、親友たちに向けて。


 体を起こしてそう力強く宣言したケイの視線に、山間から差し込んだ朝日が飛び込んでくる。日本でもなかなかみることの叶わないであろう綺麗な朝焼けに、ケイの心の中が洗われていくようだった。


「……なぁ、ルイン」


 ケイがそう口を開くと、ケイの傍らに控えたままのルインが首を傾げる。


 朝日に照らされたルインの姿は艶やかさを伴って美しく、白磁のような肌はいっそきらめいて見えるほどに美しかった。


 ケイは確信する。べらぼうに強くて、自分を励ましてくれて、それでいて美しい。旅の相棒としては、不足などありはしないだろう。


「――世界を、回ろう」


 だからケイは、すんなりとそうルインに提案をすることができた。


「せっかくの異世界ライフだ、めいっぱい楽しまなきゃな。墓守ってのもまぁ悪くないけど、それじゃ()()()に帰ってから自慢ができないからな」


 そう苦笑いして見せたケイに、ルインもまた柔らかい微笑で応じる。


「ルインにとってますたーは、親友である前にますたーなのです。ルインは、ますたーが行くところならどこへでもついていくのです」

「そりゃ、うれしいね」


 そう答えたケイは、もう一度視線を朝焼けの方へ、今まさに上ってこようとしている朝日の方へ転じた。


 異世界に飛ばされた、奴隷にされた、親友を失った、何万人かを殺した、心が一回死んだ。


 ――でも、まだ生きている。


 ならケイのすることは、ただ一つ。生き残った自分が死んだ後にサクラとコウタに自慢できる、『異世界召喚ストーリー』を送ること。


「サクラ、コウタ――見ててくれよな」


 ――ケイに答えを返すようにして、強い一陣の風が朝焼けの二人の後ろから駆け抜けて、空へと舞っていく。


 その風はまるで、ケイが一生忘れることのないだろう、あの夢の中のような心地よさを伴っていて。


 まるであの二人が、ケイの旅立ちを祝福しているようだった――。

 というわけで、これにて『カルミラの最低辺より祈りを込めて』の第一章は終了となります。


 この後書きを見ているということは、ここまでお読みくださったということですよね、本当にありがとうございました。


 これからも波瀾万丈な人生を送り続ける主人公の活躍を、みなさま是非とも見守っていただければと思います。それではまた。

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