第70話 実家訪問
舞香と望の実家は名字から想像するほど大豪邸では無かったが中々歴史のありそうな家だった。
「ここが私たちの家。和菓子屋さんなんだ」
「あぁ和菓子屋さんか……そこに看板がある『閑院屋』かぁ……」
歴史のありそうな名前と言うかまんま歴史ある名前だ。どっかに徳大寺さんと三条さんもいないかな~。ってこんなネタ誰が分かんだよ!
店の方の引き戸を開けると中は意外と広かった。いくつかの棚に商品が並んでおり、奥にカウンターがありショーケースに生菓子が並んでいた。そこに優しそうな女性が立っている。
「ようこそお越しくださいました。って舞香と望じゃないか!後ろにいる男子はお客さん?」
「うんお母さん。クラスメイトの隼人くん」
「あれま服濡れちゃってるねぇ。待ってな今替えの服用意させるから」
「いえそこまでは良いです。すぐに洗えますので」
「いいや西園寺の歴史がある以上失礼なことはできないよ」
本当に歴史のある家なんだな。まぁこの店構えだし明治くらいからありそう……
すぐに奥から母親らしき人とともに壮年の男性が出てくる。エプロンのようなものをしているのでおそらく和菓子制作の担当だろう。
「舞香の父です。どうぞこんな所で立たずに奥の座敷にでも。望お茶を出しなさい」
「は~い」
座敷でなぜか両親と向かい合う。舞香が隣にいるので不安はない……
と言うかこれマジで結婚の挨拶じゃね?俺なにも用意してないんだけど。
「ではご家族水入らずでごゆっくり~」
望はお茶だけすぐどこかに消えた。自分で原因を作っておきながら呑気な野郎だ。
舞香の父親はマスクを取ったからか顔が全部見えるが厳しそうな顔をしていた。歴史のある家なので中々厳格なのだろう。
「舞香の父の西園寺望持と申します」
「は、はい」
え?望持?それ読み仮名モチモチじゃん。この見た目なのに名前だけファンシー過ぎない?
「母の西園寺音里香です」
こっちは普通だ。逆に何で父親はそんな擬音の名前なんだよ……
「み、三河隼人です。娘さんと仲良くさせて頂いております」
俺はぺこりと頭を下げる。結婚の挨拶みたいで緊張する……
「いや舞香にも高校で新しい友達が出来て良かった」
「いやお前さん。琴音ちゃんとか愚太郎君とかもいるでしょ」
「あそこら辺はもう幼稚園からの中だから兄妹みたいなものだ」
なるほどあの猿連合とはそんな昔からの付き合いなのか……
無言の時間が流れる。
「そう言えばどうです?学校でも様子は」
「凄く優しい人ですよ。色々振り回す人が多い中できちんと色々教えてくれて」
「それは良かった。あの学校も大変な人多いでしょう。あの人たちとか」
「えぇ個性的な人はいますね」
逆に個性的じゃない奴いたっけってレベルだし。
「そうだこれ着ていきなさいな」
お母さんは俺に何かを渡す。大分軽そうな服だが……
「いやいやそんなことまでしてもらわなくても……」
「いいからいいから。せっかくの縁だしね」
「そうですか」
結局押されるがまま俺は服に袖を通した。着心地は良いけどやっぱり慣れない。
そのまま座敷から帰ることにした。
でもこれ貰ったら何か買って帰らないと……
ショッピングしているとアレかとぶつかった。
「あすみません」
「いやこちらこそ。ん?隼人殿では無いか」
この高貴そうな声は……
「六条先生こんにちは」
「達者かね」
「えぇおかげさまで。常連なんですか?」
「たまに来るぞ。和菓子が好みでな」
やはり平安貴族和菓子が好みか……しかし私服でも雅な衣装だな。大河の撮影かと思ったぞ。
「そんな隼人殿ではあるが。この服はなんぞ?」
「へ?」
俺は服を見てみる。そこには【閑院】とでっかく書かれていた個性的なシャツだった。
なんだこりゃぁ!




