第53話 ふうきぶ!
引きずられた先は部室の前だった。
「どうぞ」
「は、はい」
俺はガラガラと扉を開ける。しかし……
「ほわちゃぁ!」
蹴りが飛んでくるので避ける。
「何ですか!」
「新人は部室に入る前には礼をすること!二礼二拍手一礼っス」
それ神社の入り方じゃない?
「やるっす」
「は、はい」
「はいは一回っす。アタシだからいいけど部長はもっと厳しいっすよ」
何だそりゃぁ……それで部長はもっと厳しいのかよ!
きちんと手順を踏んで入る。
「ほわちゃぁ!」
「今度は何ですか!」
「何で左足から入るんすか!インドでは右が綺麗なもの左は穢れたものなのだから右足から入るっスよ!」
「それ足じゃ無くて手の話じゃないですか?」
「もしかしたら左足でお尻を拭くのではないかと」
「そんな器用なことできません!」
言われた通り右足から入ってみる。中には机があったり、壁には本が並んでいたりしている。その中央に背が低いが目つきの鋭い女子がいる。どこか季毬に似ているようだ。
彼女は俺を見ると立ち上がって礼をする。
「部長の万物真奈です」
「おはようございます」
「いや何してるんスか!神聖な人なんすよ。二礼二拍手一礼っス」
この人は仏か何かなのか?
二礼二拍手一礼をして座る。すると真奈先輩が止めた。
「いつ座って良いと言ったのかしら」
「ひっ!」
声だけで立ち上がる。とてつもない威圧感だった。
「私は万物真奈です。そちらにいる季毬の姉に当たります」
やっぱり姉妹だったのか!流石に似ているし性格も決まりが大好きそうだった。
「座って良いですよ」
「失礼します」
「そこのマナーはきちんとしてるのね」
あぶねぇ。どこが地雷か分からねぇぞ。
真奈先輩は俺に一言「マナーについてどう思います?」と聞いた。
「それはとても大切なものです」
そう答えると彼女は頷いてこう告げる。
「そう。マナーとは社会を構成し円滑に進めるために必要なもの。だから大切にしているのです」
でもこの人の場合たまSNSにいる意味不明なルールを作り出すマナー講師側じゃないか?
そう思ったものの、そんなことを口に出せば季毬や秋華先輩辺りの部員に何を言われるか分からないので黙っておくことにする。
「そして私はここにいくつかのマナーを作って議論することで研究しています」
「マナー研究ですか。それはどんなマナーなんです?」
「まぁまずは簡単なマナーから議論していきましょう。例えば入る時に左右どっちから入るか問題」
「それはどっちでも良いと思いますがここではより神聖な右足でしたかね」
「まぁインドを始めとした世界では右が優位なんですが日本だと代々左の方が優位なんですよね。ひな人形でも左大臣の方が老いていますし」
「あ!だから左大臣の方が右大臣より偉いのか!」
俺は膝をポンと打つ。
「そう言うことです。ただ色々考えることもありますが。もっと議論しますか?」
その後いくつかの議論に付き合わされることになってしまった。




