第46話 カオス野球③
次の回もピッチャーは先の色黒の女子である。対するバッターは頼通だ。
「フフフ。データによればこの者の球種はカーブスライダーを多用する傾向にある。ただそろそろ飽きてくるころストレートが来るのではないだ……」
その間にストレートが過ぎていく。
「やはりストレートだったか。そろそろフォークでも来るのかな?そう言えば知っているか。野球のボールって本来はフォークが正常な動きなので合ってストレートの方は変化球なのだ……」
またフォークが通り過ぎた。
「ストライク!」
コイツ話が長すぎて見逃してんじゃねぇか!
しかし本当に球種だけはあるあたりデータも悪くないのかも。でも話が長すぎるのはちょっと……
「仕方ない。僕は今からデータを捨てる!その際の勝率は……」
またボールが飛んでくるが……
「おらあっ!」
思いっきり振り切るとスムーズに飛んでいく。
「ちっコイツ見逃しまくってたくせにツーベース出しやがって!」
「よっしゃー!まぐれ当たり」
頼通は一塁に走って行った。とりあえずこれで二塁に進む収穫ができた。
次の六番はうららだ。肩の上にはシマじろうが乗っているが、バットを持てるとも思えないし無駄じゃないか……
「これでも食らいな!」
だからこのピッチャいちいち言動が怖すぎるって!
うららは冷静にバットを振り、ワンストライク。二回目は見逃し、三回目で打ち上げた。
うららは走るが、ボールを手にした女子が走って向かってくる。
そしてうららが出した足とタッチがほぼ同時で……
「アウトォ!」
塁審が唱えるもうららはVARを要求する。
VARをしてみるとどうもうららの脚が累に着くより遅かったようだが……
「見てください。シマじろうがもういるでしょ?」
既にシマじろうが累に止まっていた。
「いやそれが認められる訳ないだろ!」
キャッチャーをしているキャプテンらしき人がそう抗議する。
「いやいや私とこの子は一心同体。私の身体の一部と同義なのですよ?頭肩膝バード」
「は?」
申し訳ないうらら。こればかりは不満を言われても仕方ない。
横のスペースには次のバッターの舞香が待機している。
「どうしたの?」
「ああ今前に打ってたうららのシマじろうがOKかどうか話していたところでね」
「シマじろうくんなら最初からチームにいたでしょ?」
え?
ベンチに戻って大戦表を見てみると「六番白鳥うらら」と書いてある右下に『&シマじろう』と小さく書いてあった。あぁこれなら問題ないのか。
「いや保険会社の説明書かよ!」
「でもサインはしてあるわけだしまぁ……どの道一塁だし良いでしょ」
「アンタ急に態度変わりすぎじゃない?」
キャプテンに文句を言われる。だって舞香がそう言ってるんだもん仕方ないじゃん。
さて頼通が三塁、うららが一塁に立って次は舞香の打席だ。ふっとバットを持って構える姿は非常に美しい。
「いくよ」
「さぁどこでもかかってこいや!」
ピッチャーは振りかぶってボールを投げる。剛速球だった。
舞香は振り遅れてしまう。
「くっ」
舞香は悔しそうだ。
「この野郎!急に野球部の本気出しやがって。こっちの舞香は初心者なんだ!少しは手加減しろ!」
「知るかぁ!逆に何で初心者しかいないんだよ!」
俺がベンチで抗議するとキャッチャーに凄まれる。
何を!と思ったが俺はあることに気づく。
キャッチャーの元に近づいて耳元でこう尋ねる。
「あのキャプテンさんよ」
「何だい?」
「アンタもしかして俺と同じツッコミポジなのか?」
「そ、そうだね……」
よっしゃぁ!これで俺のツッコミによる過労も解決するぜ!
俺はそう飛び上がって喜んだ。




