第42話 助っ人達
カッカッカッと気持ちいいチョークの音で黒板に文字が書かれていく。
「これを読んでくだサーイ」
「We don't have enough people for baseball. Can you join us?」
丁寧に読んでいく。流石にここで脱落する人はいないだろう。
ジェニー先生がクラスを見渡して言う。
「じゃあこの意味をMs前田に答えてもらいまショウ!」
「はい。『野球のメンバーが足りないので、あなたに参加してもらえますか?』と言う意味です」
「ザッツライト!じゃあこの答え方は知ってますよね。分かる人」
俺は手を挙げる。流石にこの答え方なら分かる。差されることは無いだろうが手を挙げておけば内申点にプラスになるだろう。
「それじゃあMrミカワ!」
「おっと。Yes,I can!」
「ザッツライト。ミカワハヤト君は参加してくれるんですね?」
「はい」
どういうことか分からないが話を合わせておく。
「なるほど!じゃあ後で野球部に入部届を出しておきますね」
ちょっと待ったァ!
「え?いや何で僕が野球部に……」
「だってさっきメンバーが足りないので参加してくれますかって聞きましたよね」
「それは英語の授業内容だから言っただけですし、大体俺も直ぐに決める訳には……」
「頼みますヨ~。試合だけ出る名義貸し部員でもいいので。大体文化部とかなら兼部も普通ですし」
兼部はまあ良いとして名義貸し部員って何だよ!
「さて話が止まりました。次の文行きますよ~。教科書を開いて」
そのまま話は進んでいた。
昼休みに弁当を掻きこんで当の本人の所に行ってみるとそこには教師が何人か集まっていた。
「あっ来ました~」
ジェニー先生は野球帽をかぶっていた。
「ジェニー先生って野球部だったんですね……」
「No.私はバスケ部と英語部ですよ?中高大バスケのクラブチームでした。野球も少しやってましたが」
じゃあ何で俺を呼んだんだよ!紹介?いやそもそもうちの野球部の監督なんて知らないぞ……少なくともうちの教科担任じゃないはず。
「じゃあ何のために呼んだんですか?」
「それは……次の練習試合の助っ人を頼みに来たんデス!」
「あ、いや僕別に運動得意な訳じゃないですし。足が速い吾愛とか人間より猿に近そうな愚太郎の方が良いのでは?」
俺はそう提案してみる。すると奥にいた別の先生和服を着た六条先生がうなずく。
「いやそこにはもう声はかけておるぞ。それで来て貰えることになったでおじゃる」
じゃあそこに声かけてるなら助っ人いらないじゃん!
積分寺先生も話に加わる。
「ただですね……その肝心の野球部で病気が流行りまして一人忌引、二人怪我、三人病気、六人ズル休みなので誰もいないんですよ」
何でズル休みだけで六人いるんだよ!こういう時大体病気が流行って全滅とかだろ!
「と言う訳でこのままだと放課後の練習試合の相手がいないでおじゃる。このままでは甲三郎殿が分身の術で九人同時に演じることになるのでな」
頭の中で先生が外野を守っている様子を考えてみた。忍者だから野球もできるだろうけど年齢が年齢だし避けたいのか?
「本当に今回だけデスから!お願いします」
「で、でも愚太郎と吾愛を勘定に入れても三人だけじゃないですか。まさか僕らにも分身の術を?」
「先生はそれも興味深いとおっしゃってましたが、流石に止めました」
そ、そうか……でもそれじゃ人数足りないじゃん。そんなことを思っていると……
「「「「「「「「「話は聞かせてもらった」」」」」」」」」
周囲から九つの声が重なる。
「全く兄貴!アタシの人脈で集めておいたよ!」
「お兄さん。まさか中学生に頼りたいの?」
「まさか。ここでアタシの出番が来るとはねぇ」
「俺……野球してたことある」
「データ上このメンバーが揃えば勝率は八十パーセント」
「クツクツクツクツ。この私にかかればどんな野球もスパッと解決!」
「あらあらこれだけいればマネージャーや代打も確保できますね」
『ブットバス!ブットバス!』
「ボールを投げることが得意です!」
いつものアイツら……そして。
「隼人くん……頑張ろ?」
ま、舞香も参加してくるのか。
そして加わったのは九人のメンバー。これに愚太郎と吾愛を入れて十二人。じゃあ俺いなくても良いじゃん。
「あの……これだけいるなら俺がいる必要性ってあります?」
ジェシー先生に聞いてみる。
「ありますよ?ダッテ」
「だって?」
「これから野球編が始まるのにこの作品の主人公いないとダメじゃないですカ」
は?
俺は茫然とした。




