第7話 災いの深まり
俺の指示を受けた黒色は、全員を集めて俺の迷宮の外に瞬間移動した。
空は黒く澱んで、気味の悪い雲が覆っている。
街中では闇の炎に包まれた惨劇が広がり、それから逃げ惑う人々。泣き叫ぶ人々。
「あれ・・・」
妹が、唖然とした表情で指を差した。
「なっ!?」
俺たちは全員が愕然とした。
妹が指を差したその先に見えたのは、神話として語られるだけの存在。
太古の巨神兵の姿である。
それは山より高く巨大。
異様な長さの手足と指。
2つある頭には、それぞれ怪しく光る大きな一つ目。
古の時代に神によって創られ、神によって葬られたとされる存在である。
俺たちは、現実とは思えない状況に茫然と立ち尽くす。
その俺たちの耳には、暗く、深く、重々しい音楽が聞こえてきた。
この世界では、音楽に“呪い”が掛けられている。
これは、まるでその“呪い”を奏でるかのような悍ましさを感じる音楽だ。
太古の巨神兵が、その異様に長い腕を豪快に振り回した。
それによって、周囲の山々が削られて崩れ落ちる。
またも尋常ではない地震が起こった。
その揺れで、街中では幾つもの建物が崩壊していく。
7体に分離している七色が、崩壊した建物の下敷きとなった人々を救い出す姿が見えた。
街中に広がる闇の炎は、まるで意思があるかのように命ある者に襲い掛かる。
人々は逃げ場を失っていた。
「俺の迷宮の中に人々を避難させろっ!!」
俺は咄嗟に口に出した。
俺の迷宮の中が安全だとは限らない。
しかし、この闇の炎から人々を避難させるには、それしか思いつかなかった。
俺の命令を受けて、黒色と紫色が手分けして人々の誘導に動き出す。
「黄色っ! 闇の炎を俺の迷宮に近寄らせるなっ!!」
「承知仕りました。」
黄色は念力を行使した。
その途端に闇の炎が迫りくる動きが止まる。
俺は、太古の巨神兵の動きに視線を戻した。
太古の巨神兵は、削り取った山の塊をその長い腕で持ち上げている。
俺の迷宮に向けてぶん投げてくるようだ。
「白銀色っ!あれを防ぐんだっ!!」
「可。承った。」
白銀色は、その竜形の翼を広げて空に舞い上がった。
手当たり次第に削り取った山の塊を掴むと、次々とぶん投げてくる太古の巨神兵。
それを宙で受け止めて全て防ぐ白銀色。
そこに蒼色が、朱色と檮兀を連れて瞬間移動で現れた。
「蒼色っ!この黒い炎を水魔法で消せないか!?」
「これは消すのではなく、光魔法で浄化させるしかありません。」
「よく分からんが、任せたっ!」
「かしこまりました。」
蒼色が光魔法を行使する。
その横でコマゾーが、蒼色の動きを見様見真似で手助けをする。
片目に大きな傷痕があるドワーフが俺に駆け寄ってきた。
探究者ギルドのギルドマスターである。
「ミライ!あれをどうにか出来ないかっ!?」
あれとは、あの太古の巨神兵のことだ。
どうにかするって言ってもね・・・・・そうだ!
俺は、ふと思い立って、最強の女王様の姿を探した。
姉貴であれば、あの巨神兵をペシャンコにしてくれるはずだ。
辺りを見回す俺。
しかし、姉貴の姿が見当たらない。
檮兀と饕餮の姿もなかった。
おいおいおい。
もしかして、このタイミングで帰ったのか・・・。
俺の迷宮の入口では、傷ついた人々を緑色が癒している。
俺は自分の横に視線を移した。
俺の隣にいるのは、退屈そうに両腕を頭の後ろで組んでいる朱色。
それと、全く役に立ちそうにない根暗命の妹だけだ。
妹と目が合った。
「じゃあ。ウチはバカ兄の迷宮に避難してるからヨロシク~。」
サッと目線を逸らして、口笛を吹く素振りをしながら去っていく妹。
そそくさと俺の迷宮の入口に向かって歩いて行った。
その途中で、光魔法で闇の炎を浄化しているコマゾーにちょっかいを出そうとして・・・転んだ。
その上空では、白銀色が次々と投げられてくる削られた山の塊を宙で防いでいる。
防いだときの欠片の一つが、そこに飛んで行った。
大当たり。
それは見事に妹に命中した。
本当に愛すべき妹だな。
(変な意味はない)
7体に分離している七色が、全て俺の下に集まってきた。
俺は覚悟を決める。
「七色!合体完成形だっ!」
7体に分離していた七色は、俺の命令を受けて同時に7体が頷いた。
そして、合体を始める。
ガチャ。カシャン。ガシャ。キュビーン。ジャジャーン!
因みに俺の心の中で奏でる効果音だ。
「朱色、七色、あの太古の巨神兵を倒すぞっ!」
「楽勝っ!」
「行きますぞ!」
合体完成形の七色は、俺と朱色を手のひらに乗せると飛んだ。
背中から風魔法を噴出して飛行できるのが七色だ。
太古の巨神兵に近づく。
デカい。
七色さえ、ちっぽけに見えてしまう巨大さだ。
俺の横で準備運動をしていた朱色。
あの巨大なバケモノを目の前にして、物怖じすることは全くないようだ。
「いっくよーんっ!」
七色の手のひらから、朱色が勢い良く飛び立った。
そして、すぐさま空中で10体の分身を作る。
太古の巨神兵との戦いは、10体の朱色が繰り出す飛び蹴りから始まった。
この時。
異変は世界中で発生していた。
世界中のあらゆる場所で、悍ましさを感じる音楽が鳴り響く。
そして、より深刻な災いが訪れようとしていたのであった。
誰も気づかぬ山奥の秘境にある小説を読んで下さいまして、誠にありがとうございます。
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