第8話 災いの拡がり
「いっくよーんっ!」
七色の手のひらから、勢いよく飛び立った朱色。
すぐさま10体の分身をつくり、そのまま太古の巨神兵に飛び蹴りを喰らわせた。
飛び蹴りといっても、朱色が繰り出せば尋常ではない。
それは流星の如く、赤い閃光となって太古の巨神兵に炸裂したのである。
「「●▲■×●▲■×~!!」」
太古の巨神兵の山のような巨体が揺らぐ。
2つある頭は表情を歪め、聞いたことのない言葉を叫びながら苦しんでいる。
あれ?
もしかして・・・
これ、思ってたよりも楽勝か??
太古の巨神兵が、その異常な長さの両腕をぶん回した。
それを素早く避ける朱色の分身体。
そして、朱色は太古の巨神兵の2つある頭の1つを蹴り飛ばした。
ドゴォッ!ガンッ!
朱色に蹴り飛ばされた巨神兵の頭は、もう1つの頭と激しくぶつかった。
そして、立ち眩みしているようだ。
一方、極限まで魔力を集中させている合体完成形の七色。
その胴体部分は、まるで小さな太陽がそこにあるかのように燦々と輝いている。
俺は、七色の親指に必死にしがみつきながら叫んだ。
「朱色っ!退避しろ!七色があれを出す!」
それを聞いた朱色は、チラッとこちらを見ると驚愕して慌てふためく。
「ちょっ!七色っ!ちょっと待って!」
朱色は、太古の巨神兵の巨体を壁に使って跳躍すると退避した。
その瞬間。
「豪爛砲!」
ドォヴォッチューーーーーーーーーーーーーッン!!!
七色の胴体部分からは、魔力の熱線が大砲のように放たれた。
その放たれた魔力の熱線は、遥か遠くに飛んでいく。
キラン。
見えなくなった。
どこまで飛んで行ったのだろう。
右手を目の上にかざして、その遥か彼方に飛んでいった魔力の熱線を見守る俺と朱色。
太古の巨神兵はというと。
可哀そうに。
その胴体には大きな穴が開いている。
そして、絶命していた。
・・・・・。
仕方ない。
止めは俺が刺してやろう。
(もう絶命しているけどね。)
俺は、右手に光魔法、左手に闇魔法を作り出す。
所謂、高等テクニックである多重魔法展開というやつだ。
因みに言い忘れていたけど、俺は強い。(たぶん)
ここいらで、主人公らしい姿を読者の皆様に見てもらわないとね。
「さて、止めだ。」
俺は、その両手で異なる属性の魔法を放とうとする。
が。
大きな穴が開いた太古の巨神兵の巨体は、その姿をたちどころに縮めていった。
小さく。
小さく。
人の大きさまで縮むと倒れた。
俺の活躍はお預けになったようだ。
「ゴラン、あそこまで行ってくれ。」
「では、行きますぞ。」
人の大きさとなって倒れた太古の巨神兵。
そのそばに俺たちは降り立つ。
太古の巨神兵が縮んだ姿を確認する。
そこにあったのは、腹に大きな穴が開いた男の死体であった。
「あれ? こいつ、見たことあるぞ。」
俺の迷宮に挑んでいた・・・確か、ブラッドスパイクとかいうA級探究者パーティーの戦士だ。
俺が間違えて15階層に配置した鉄ゴーレムから、逃げ出していた奴にきっと間違いない。
「どういうことだ??」
俺は、意味不明で首を傾げた。
よく分からないが、こいつが元凶のようだ。
俺たちは、その男の亡骸を持って俺の迷宮に引き返すことにした。
俺の迷宮前は、まだ闇の炎で覆われていた。
黄色の念力で闇の炎の動きは止まっている。
蒼色とコマゾーが光魔法で浄化を続けているものの、どうやらキリがない状況のようだ。
「時間が掛かりそうか?」
俺は、蒼色に近づいて状況を確認した。
「ええ。どうやら普通の闇の炎ではなさそうです。浄化しても端から新たな炎が湧き出てきます。」
光魔法で浄化しながら、蒼色は顔だけを後ろに向けて返事をした。
顔だけが180度回転するのは、だいぶ不気味だ。
ゴーレムだから不思議ではないけどね。
それでも、蒼色の男前が台無しになると思うよ。
「何か良い方法があるのか?」
「あると言えば、ありますが・・・。」
答えにくそうにする蒼色。
「何も気にするな。遠慮なく言って構わん。」
「闇の炎を根源から浄化させるには、砂が一番です。」
・・・・・・。
砂ね。
あるよね。
俺の迷宮の10階層に。
たんまりとね。
「その砂を敷き詰めたら・・・この闇の炎は、根源から全て浄化できるんだな?」
「はい。しかし・・・。」
「しかし?」
「主の迷宮の周辺は、砂漠化します。」
俺は、絶望に頭を抱えた。
だが、背に腹は変えられん。
「仕方ない。皆で手分けして砂で覆ってくれ。」
「かしこまりました。」
俺は、全てのゴーレムに指示を出した。
階層主を除く数多のゴーレムが、俺の迷宮からゾロゾロと出てくる。
まず、朱色が俺の迷宮の10階層付近の外壁に蹴りを繰り出した。
俺の迷宮を破壊することに躊躇がないのが朱色だ。
しかし、外壁は大きく抉れたものの、まだ破られてはいない。
朱色を下がらせて、紫色が腕を大きく後ろに振りかぶった。
紫色は、攻撃力重視で作ったアダマンタイトゴーレムである。
ドッゴォーーーン!!
見事に外壁は、その一部分だけに大きく穴が開いて崩れた。
そこから、迷宮の中に詰まっている砂が、ザザーッと滝のように溢れ出てくる。
紫色の火力を見て、“はぶてる”朱色。
後ろで一つ結びにした紫色の長い髪を解くと、これみよがしに得意そうな顔をする紫色。
そして、その横で黒色が第2形態に変形しようとしていた。
黒色の正式名は、ドルトンディアス・オマラティゴ・クロスタンドルス。
3つの変身形態があるのが特徴だ。
いまの第1形態:ドルトンから、第2形態:オマラになろうとしているのである。
ドルトンの変形はヤバい。
特に第2形態は色んな意味でヤバい。
それこそ、七色の豪爛砲よりも、いまはヤバいのだ。
「ストーーーープッ!!」
危なかった。
すんでのところで、俺はドルトンの変身を止めることに成功した。
俺の迷宮の周りでは、いつのまにか悍ましさを感じる音楽は鳴り止んでいた。
しかし、世界中のあらゆる場所で、それはまだ鳴り響く。
世界中に災いが降りかかっていたのだ。
その災いは拡がり、とある迷宮を侵してしまう。
それが、世界を混乱に陥れる引き金になるのであった。
誰も気づかぬ山奥の秘境にある小説を読んで下さいまして、誠にありがとうございます。
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