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第21話 闘いのはじまり

最近は仕事が忙しくて、投稿が遅れております。(仕事が忙しいことは良いことなんですけどね)


《エルフの里》


叫び声。

悲鳴。

阿鼻叫喚。


暗緑色あんりょくしょくの波に飲み込まれて、エルフの里は次々と絶望に塗り替えられていく。


突然奪われた日常。

目を覆いたくなる惨劇は急速に拡大していた。


「誰だ!誰がこんな!」

唇を噛み締めたエルフの族長。


大木の真下には、高らかに笑う小さな細身の影があった。


「貴様か!貴様だなぁぁぁぁーーーー!!」

エルフの族長は剣を振りかぶり、そのまま大木から飛び降りると小さな細身の侵略者に剣を振り下ろした。


ズシャッ!


その剣は、薪を割るが如く、侵略者を真っ二つにした。

力なく倒れた侵略者。


しかし、あまりにも手応えがない。


毒々しい色をした吐泥へどろをまき散らして倒れた侵略者は、その形を泥だまりに変化させている。


まだ終わってはいない。

エルフの族長は、そう確信した。


すぐさま剣を構え直す。

その手に握る剣は“エルフの宝剣”。


それは、太古の時代に名を馳せた鍛冶王が鍛え上げたと伝わる宝剣であり、エルフの族長に代々引き継がれてきたものである。


吐泥へどろの泥だまりから、ブクブクと沸騰するかのような泡が発生した。

それと共に辺りに漂うのは酷い悪臭。


「く・・・。」

エルフの族長は、酷い眩暈を感じてフラついた。

どうやらこの悪臭は、意識を混乱させる作用が含まれているようである。


吐泥へどろの泥だまりから、ドロドロとした塊がゆっくりと起き上がる。

そして、吐泥へどろの中に現れた目と口。


「ヒヘヘヘヘ。」

吐泥へどろは卑しい笑い声を出した。


エルフの族長は問答無用で斬りかかった。

一撃、二撃、三撃、起き上がる吐泥へどろを剣で斬り刻む。


しかし、やはり手応えはない。


「むだ、むだ、むだ、むだ、むだ、むだだーーーーー!!」

吐泥へどろが叫ぶ。


その叫び声に呼応して、里を埋め尽くす根住ねずみが一斉に鳴き声を上げた。

それは、狂った赤ん坊の泣き声のように。


侵略者と暗緑色あんりょくしょくケダモノは、訪れるはずであった幸せをも奪っている。

その鳴き声は、あまりにも皮肉であった。


ふぅと息を大きく吐いて、エルフの族長は剣を構え直した。

そして、侵略者を睨みつける。


「貴様・・・何者だ。」

「何者?さて、余は何者なのであろうなぁ??」


とぼけたように吐泥へどろは答えた。

しかし、吐泥へどろは本当に自分が何者なのかを知らない。


自分が何者なのかという記憶がないのだ。

しかし、吐泥へどろにとっては、そんなことはどうでも良い。

世界中を絶望で埋め尽くすことだけが望みであるのだから。


あちらこちらから聞こえてくる悲鳴。


エルフの族長は覚悟を決めた。

そして、手に握るエルフの宝剣に願いを伝える。


「▲%■▼&#■●×●▼!!」

- 我の五感を喰らって力を示せ -


その言葉は古代語である。

太古の存在である吐泥へどろは、その言葉を理解している。


「ほほぅ? 少しは楽しめるのかなぁ?」

「ほざけ。」


エルフの宝剣が鮮血の如く真っ赤に染まる。


「左耳がやられたか。」

エルフの族長は呟いた。


エルフの宝剣。

その剣の名は“五感喰センシズイーターい”という魔剣である。


その力を最大限に発揮させる為には代償を必要とする。

その代償は五感の何れかであり、魔剣の使用者はそれを選ぶことは出来ない。

しかし、その代償に見合うだけの力を魔剣は確実に発揮するのである。


「消え失せろ。」

エルフの族長は、真っ赤に染まった魔剣の頭の右手に寄せ、左足を前に出した。

八双の構えである。


次の瞬間。


数多あまた根住ねずみが、四方八方からエルフの族長を襲った。

覆い被さるように次々と飛び掛かる。


「ヒヘヘヘ。 むだ、むだ。」


吐泥へどろは終わりを確信した。

そして、その場を後にしようとする。


「どこに行くのだ?」


数多あまた根住ねずみが覆い被さった暗緑色あんりょくしょくの塊の中から、眩い光が沸き起こる。


その光は覆い被さる根住ねずみを消し去った。

そして、吐泥へどろに向かって放たれたのは鳳凰の形をした斬撃。


ブシャッ!!


その斬撃は吐泥へどろの首らしき部分を斬り飛ばした。

その斬り飛ばした部分から炎が巻き起こる。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・やったか・・・。」


エルフの族長は、魔剣を地面に突き刺して膝をついた。

暗紫色あんししょくの斑点は、すでに全身に現れてしまっている。


鳳凰の斬撃は魔剣の力。

回避不可避であり、全てを斬り伏せて烈火の炎で焼き尽くす斬撃である。


「ぐ・・ご・・・ご・・。」

もがき苦しむ吐泥へどろは身体を波打った。


「まだ、足りぬか・・・。」

再び立ち上がったエルフの族長は、更なる代償を魔剣に投じた。


「▲%■▼&#■●×●▼!!」

- 我の五感を喰らって力を示せ -


この吐泥へどろだけは俺が絶対に倒す。

あとは・・・・。

あとは、あいつが助けてくれるはずだ。


頼んだぞ・・・ミライ。



一方。


俺の迷宮の外は騒がしくなっていた。

空を青白く揺らめく炎で形作られた大きな鳥が旋回していたのである。


その姿を俺も確認した。

迷宮主の間の天井に姉貴サラウィルがぶち開けた大きな穴は、まだ塞がっていない。

そこから、青白く揺らめく炎で形作られた大きな鳥の姿が見えたのである。


俺はその姿を知っている。

エルフの里の不死鳥だ。


しかし、何で空を旋回しているのだろうか?


黒色ドルトン、ちょっと見てきてくれないか?」

「かしこまりました。」


その場から瞬間移動で消えた黒色ドルトン

そして、すぐに戻ってきた。


「族長の息子が、疫病で瀕死の状態になっております。」

「なにっ!?」


「今の状態で迷宮内に入れるわけにはいきません。緑色ミジェルを連れて行きますが、よろしいでしょうか?」

「ああ、頼む。」


黒色ドルトンは、緑色ミジェルと共に再び姿を消した。


七色ゴラン、俺を連れてあそこに行ってくれ。」

「承知しました。」


合体完成形マージフォーム七色ゴランは、背中から風魔法を噴出して飛行することができる。

俺は、七色ゴランの肩に乗った。


空に向かって飛び立つ七色ゴラン

姉貴サラウィルに開けられた穴は、七色ゴランが通り抜けることでができる大きさである。


その上空を旋回している不死鳥。

その不死鳥にピッタリくっついて空を飛んでいる黒色ドルトン緑色ミジェル

緑色ミジェルは強力な回復魔法を行使していた。


七色ゴランが左手の手のひらを広げる。

そこに不死鳥は降り立った。

黒色ドルトン緑色ミジェルも着地する。


俺は、急いで七色ゴランの肩から左手に移動した。


不死鳥の背中には瀕死状態のアルの姿。

意識は失っている。


アルは、俺の親友であるエルフの族長アルバートの息子だ。

基本的にエルフは他系統種族との交流を好まない。

俺がエルフと交流しているのは、過去にあった偶然がきっかけである。


「どうだ?」

「強力な疫病デすが、問題ないデしょう。もう、迷宮内に入れても大丈夫デす。」


俺たちは、黒色ドルトンの瞬間移動で迷宮主の間に戻った。


すると、不死鳥が俺に何かを訴えかけるように鳴いてくる。

しかし、何を訴えたいのかは分からない。


「ちょっと失礼するでえな。」


げんてつが白い霧を生み出した。

その白い霧には穴が開いただけの目と口があり、卑しい笑い声を上げている。

俺たちと最初に会ったときにもげんてつが使った憑依霊だ。


その白い霧は、不死鳥を一度すり抜けるとげんてつの口の中に飛び込んだ。

それをげんてつが飲み込む。


げんてつは不死鳥の鳴き声を通訳した。

「ええっと・・エルフの里が何者かに襲われたデシ・・・変な語尾だけど、これで合ってるでえな。」


「何っ! ヤバいのか!?」

「ええっと・・ちょっと、待ってえな。」


クエ、ギャア、ギャ、クウ、クエ。


「かなりヤバいデシ。疫病をまき散らすケダモノを生み出す吐泥へどろデシ・・ということだえな。」


それを聞いた俺は、背中に冷や汗が伝うのを感じた。


エルフが他系統種族と交流を好まない理由。

その一つが病気の感染である。

エルフは、外界から入ってくる未知の病原菌には抗体がなく弱いのだ。


「すぐに行くぞ! 黒色ドルトン!」

「かしこまりました。」


緑色ミジェル、アルの治療はまだ時間が掛かるのか?」

「あとちょっとデ大丈夫デす。」


「よし! 七色ゴラン、その治療が終わったら緑色ミジェルを連れて飛んできてくれ!」

「承知しました。エルフの里は近いので、一瞬で駆け付けましょう。」


「頼んだ!」


すると、げんてつが立ち上がった。


「恐らく、敵はエビルスラッジだでえな。」

「知ってるのか?」


「奴らを仕留めるのは難しいが、我なら可能だえな。我を連れて行くだえな。」

「分かった。黒色ドルトン!」

「はっ!」


黒色ドルトンは瞬間移動を行使した。


無事でいてくれよ。

アルバート。

俺の親友。

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