血涙
最強のガヴァダヴァダンを撃破した。そして、最強の部類にはいる師も殺した。
「ようやく俺と死闘するまでに至る資格を得たようだな」
もう一人の最強たる存在シシロウ=キャキャットウ。俺の兄弟子にあたる。冷めた視線が少しずつ熱意にでてくるかのようにもみえる。人を殺してまで得るものが一人の人間に相対すること。それだけの価値が殺戮も果てにあるのだろうか?
そうだよ! 俺はどうしようもない殺人武闘家だよ。それはわかっていて修行はしたし命を軽視していたかもしれない。
兄貴と研鑽した日々はそういう重苦しい気持ちはなかった。師匠の偽の死から始まった道中からこんなにどうしようもない血塗られた騒動になってしまうとは思わなかった。
俺は浅すぎる。
シシロウ兄貴はいつから変わっていったのだろうか? もとからか? 俺から離れる前は冷徹な口調すらしなかった。俺はシシロウとういう人間を実の兄そのものに感じていた。
それだけ慕っていたが……今は違う。
「兄貴が悪いが決着はつけさせてもらう」
「口にするここともないだろう」
シシロウ兄貴は錐のような塔からスッと降りる。そのまま中を浮く。
ゴウン!
?
その時にこの惑星に地響きの音がする。
「なにがおきた?」
揺れどころか天空に浮かぶ星々も何か異変がおきたように感じる。
「カイラスの読みも間違いではないようだな」
「師匠がなんだって?」
「この継承戦のきっかけはな宇宙崩壊の兆しが起きたからだ」
「は?」
「お前は相変わらずの馬鹿者だな。事を急に始めたのは流派 猫パンチの継承者を決めようとした為。理由は八玉の宝玉を制御できる者を見つけるためだ。八玉は宇宙を支配できるからな。つまりは宇宙の異変も制御できる。わかるか? だが、カイラス自身は己を役不足だと思い俺たち弟子をあたらせたということだ。そんなこと俺にはどうでもよいことだがな」
「兄貴はそれが嫌なんだな?」
「なんだと?」
兄貴は少し怒りを見せたようにも感じる。
「俺ははっきり言ってゴメンだ。気ままに生きていた俺が宇宙の制御だと? 糞くらえ! そんなやわな世界滅ぶなら滅べよ!」
「お前らしいが……同感だな」
「価値のない宇宙。争いを基本とする者たち。俺は唾棄していた。だからこそ俺は率先してなるべく武に生きるものは殺してきた。八玉を全て手にした時は宇宙を崩壊することにきめている。それが俺の願い」
「勝手だな。ようやく兄貴の感情らしきところはみえたが」
「八玉が全て揃うためには俺が四つとお前が三つ所持している。だが、最後の一つが俺たちを試すことになろう」
「試すだと? 偉そうに」
「そうだな、それが俺は気に食わない。師カイラスは恐れた。事のきっかけ弱さしかない。弱い者は己の強さを示さない。強者は気にかけない。可能性は誰にでもあるのにな。気にいらぬ」
兄貴はギュッと拳を握り締める。強く握り締めたせいか痛めて血を数滴こぼす。それが俺には血涙のように思えた。
「兄貴も嫌でしょうがなかったんだな。なぜに暴走なんてした?」
「俺は至って正気だ。戦いに戦い抜いて得たものが下らないやりとりだ。お前を殺してみたが後悔こそないが晴れない気持ちだ。俺の心の曇りに希望は隠されていない。だが、決着はつける」
「俺も兄貴とは決着をつける。それしか答えがわからない」
「お互い、一瞬で決着をつけようか。そうだな、お前が生み出した技、千万兆来でどちらがくたばるかきめるか」
「あの技を兄貴が使えるのか?」
「笑わせるな。一度見た技は再現できる。俺はお前の兄なのだぞ」
それを、言われて何故か満足した。お互いに遠慮はいらない。殺人拳法家は殺し合って生涯を遂げる。俺は構えをとる。
「シャー!」
互いに怪猫音を口にだす。いつものことだが本気でやり尽くす。恨みっこはなし。
……。
「やめてー」
俺たちを制止する声がする。サンゾウ姉貴だ。
「もう、いいじゃない。宇宙の為に私たちが殺し合いをしなくてもね。姉さんのお願いよ。聞いてちょうだい」
「ごめん。ここまで人を殺めてそうはいかない。争いの元凶は俺達だから。宇宙の平和とかいらないが落とし前はつける」
「そんな……」
そして、俺とシシロウ兄貴は初撃にして最後の技を繰り出す。勝者はどちらか?
「猫パンチ 千万兆来!」




