Sign(サイン) of(オブ) Life(ライフ) Inside(インサイド)
拳の応酬をしあう。数千、数万、数兆、数京かはわからないが技の名のとおりに猫パンチ 千万兆来は数え切れない無数の打撃を繰り出す。シシロウ=キャキャットウとゴタロウ=ヴィヴァルディの間を交差しながら。
普通なら数打で俺たちは互いに肉塊になっているだろう。しかし、互の拳が反射しあい致命的なダメージを受けていない。どちらが消耗して尽きるかで勝敗がきまるだろう。
「シャー! シャー」
互いに怪猫音を発しながら無限の時を感じていた。
決意したといえ思えば俺たちはなぜ争うのだろうか? それは愚問というものか?
生物同士の殺しには二通りあると俺は思う。自己防衛と相手を摂食すること。しかし、俺たち人間は目的の為に殺し合いをする。あるいは楽しいから……。
俺は攻防のなかで後者に属していることに気付く。クソ野郎だ。いや、シシロウ兄貴と拳を交えていることのみが楽しくなっているのかもしれない。それは相手の方からも感じる。こんなことで今までのしがらみを絶つことはないだろう。だが尽きることがない千万兆来の無数の応酬は続く。
決着つかないことに喜びを感じる。かつて、兄貴と研鑽してきた日々を思い出す。ただこうやって兄貴と武道を磨いていればそれでよかった。
だが、ただの武術の一つが宇宙の命運を握るなど信じがたいし受け入れる気など毛頭なかった。それでも、受け止めなければならない事実がお互いの終末へと近づく。死という名の決着へと。
「ぐっ!」
「うっ!」
シシロウ兄貴と俺は同時に拳が激突する。互いに身体を破壊する生命エネルギーが流れ込む。相撃ちで果てるのも悪くないだろう。
兄貴と俺は体が崩れていく。それを見守っていた人間が叫んだ!
「お願い! 八玉の宝玉、わたしに集まって頂戴!」
サンゾウ姉貴だ。かつて俺が八玉を使役してサンゾウを蘇らせた。同様に八玉を操作し集結させて俺と兄貴を蘇らせるのだろう。
だけど、残りは八つのうち七つだ。一つだけでも扱いが困難なのに七つは無理だ。体にくる負荷が大きすぎる。俺たちが放ってくらった千万兆来に匹敵するくらいの威力があるだろう。サンゾウ姉貴じゃ無理だ。
「俺たちに構うな……」
「嫌よ! 大事な姉弟ですもの」
「いいんだよ。人はいずれ死ぬ」
「まだ、早いわよ」
逆の立場なら気持ちはわかる。こんなことで死ぬのも馬鹿げている。
!
まてよ、七つの八玉は千万兆来に匹敵するであろうと俺は予測した。ならば、七つは俺に制御できるかもしれない。
「代わってやるよ!」
「え?」
「八玉の宝玉よ! 俺の意向を再び聞き入れろ」
そう言い放つと七つの宝玉は自然と俺の周囲へと近づく。
「私を所有するに資格あるべきものには応じます」
宝玉が喋る。以前と同じ声だ。
「俺とシシロウ兄貴を復活させろ!」
「ゴタロウ、俺はここでくたばっても構わない」
「兄貴は黙っていてくれ!」
こうしている間にも俺たちは完全崩壊するんだ。急ぐしかない。
「もう一度言う。助けろ!」
「わかりました。貴方はそれだけの力をもっています。意のままに私を使いなさい」
俺は宝玉の使い方は知らない。だが、姉貴を復活させた時の感覚と意思で八玉の宝玉を操る。
「くっ」
圧倒される力に翻弄されつつも俺は蘇る。
「どうしようもないなお前は……」
兄貴も蘇る。呆れられてしまったが。
「兄貴、命の恩人にむかってそれはないだろ?」
「そうか……そうだな。お前は八玉をここまで使いこなした。最後の八玉を所有するのもお前だろうよ。俺には無理だ」
「その通りです。最後の八玉が私の本体です。早く手にするように。貴方たちが思っているより宇宙の崩壊は近づいていますし、失う重さというのをわかってはいません」
「おい、八玉の宝玉さんよ。あんたは何者だ?」
「いずれわかります。それまでは再び私は意識を潜めています」
と、言うなり八玉は無言の状態になった。
「それより」
サンゾウ姉貴が俺とシシロウ兄貴に近づき俺たちの肩に両腕広げて抱きつく。
「二人共頑張ったわね」
「そうでもない」
「姉貴くっつくなよ」
「可愛くない弟二人ね」
サンゾウがウフフと笑う。その妙な笑い方も久々に感じる。
「サンゾウさん。ゴタロウさんと真っ先にハグしたいのは私なのですよ。遠慮しなさい……。イタタタ」
重症かと思ったスカリもわりと元気のようだ。しかし、思えばなぜにスカリだけが助けに来たのだろうか? ディーテ姉やアシア=ロンテにミリア=ロンテもいるのにな。さておき。
「やめろよな! 恥ずかしい」
「いいじゃない。皆でギュッとしましょうよ」
「チッ」
サンゾウ姉貴の言葉に舌打ちするシシロウ兄貴。まあ、なんだ、こういう時が永遠に続くといいなと俺は柄にもなく思った。
しかし、物語は週番へと近づく。安息はありえない。




