中身は忌々しい選択
ガヴァダヴァダンファーストにして最強のGVDTDR(ザ ダーク ライド)は剣を振り下ろした。俺は対して素手で応じるには不足すぎるので生命エネルギーを集中させ気を放つ。
「猫パンチ奥義 天昇熾散鎧破波!」
俺ができるだけの渾身の力で波動を放つ。TDRの斬撃よりも早く放射しTDRの剣もろとも全てを破壊する。破壊するが……。
「見事に修復するとはな」
少し、息を乱し唖然とする俺。どういうことだ? 仮にTDRが不滅だとしても中にいるパイロットは無事なはずではない。オートで動いているとでもいうのか?
「詰めが甘いようだな」
シシロウ兄貴が割ってはいる。まだ、相手には不足だというように冷めた声質で言う。
「確かにな。俺は見逃していたかもしれない」
そう、TDRほどのGVDを操る奴が並みの人間ではない。武道家か?
そして、この物語の冒頭で俺が粋がってふざけた台詞を思い出す。それは……。
「確かめるしかないな」
俺は基本にして奥義である猫パンチ 伝殺圧を繰り出そうとする。この技はGVDよりも乗り手の人間にダメージをあたえることができる秘技。
TDRの猛烈な攻撃を掻い潜り相手の懐へと忍び寄る。ハッチにむけて拳を突き出す。
「食らえ! 伝殺圧」
TDR自体に意思がなければパイロットさえ殺せば問題ない。決着だ。しかし、ハッチが開き一つの腕と手が伸びてきては俺の腕を掴む。懐かしい感触だった。
「師匠! 師匠? カイラス=パレス師匠だと……」
目つきの鋭い高僧のような中年がそこにはいた。だが、今までの振る舞いは僧侶のすることではない。
「少し、久しいと言うべきか? ゴタロウよ」
「何をのんびりと。元はと言えば、あんたが死んだから騒ぎになったんだろ! 反省しろよ」
「全ては八玉の宝玉のためだ」
「そんなものに翻弄されているのかよ!」
「その通りだな。全てが揃えば宇宙を支配できるが……今、八玉は不安定な状態にあるのだ。それを制御できるのはわしが認めた後継者のみだ。この争いは宇宙をかけての争奪戦なのだ。候補は一人シシロウのみ……。だがな、わしは公平に弟子たちを試してみることにした」
「ふざけるな! 俺は心中でふざけて師匠殺しをするのは俺だと嘯いていたが本気で殺したくなったぜ」
「そうするがよい。できるのならな」
「だけどな、あんたを殺せない理由もあるんだよ! あんたを大事にする人間がいる。わかるだろ?」
「ディーテにサンゾウ。あれには普通の女として歩んで欲しかった。だが、仕方がないことだ」
カイラス師匠は悲しみもせず嘆息して答える。ふざけやがって。
「どの道、シシロウはわしを殺すだろう。そして、私は負けるだろう。最後に別の可能性を見たくてな。ゴタロウよ! 師を超えてみせよ」
「やだね。あんたの思い通りになんてならないからな」
「ならば、わしが引導を渡すしかないな」
師は構えをとる。あの技はみたことがない。
「猫パンチ 最奥義 無間地獄」
俺は感じ取った。
死。
死と無限の苦しみ。
……これは不味い。二度と蘇生できない確実な死をイメージしてしまった。俺は恐れてしまった。回避する方法は先手を打つこと。俺の体は躊躇いを忘れた。体が勝手に動く。意思までも。
「猫パンチ 千万兆来!」
お互いに無数の拳が応酬する。食らえば瞬間に無限の苦痛が襲う。それは、超人的に時がスローして流れる体感。まさに地獄といっていい最奥義 無間地獄と対する俺の千万兆来。
「それでいいのだ」
攻撃を圧倒したのは俺の方だった。師は満足そうに表情を歪むことなく崩れていく。俺はそのまま勢いでTDRも完全に破壊していく。
「残す言葉がそれでいいのかよ」
俺は納得がいかなかった。
「無力な師は死んだようだな……」
俺はシシロウ兄貴の口にしたことが酷く気に入らなかった。今でも、少しは親しみがある兄貴に侮蔑の気持ちが生まれた。




