限界を超えろ!
戦場の視界の果てへと飛ばされつつも俺は確かに聞こえた言葉がある。
「退屈だと?」
兄弟子、シシロウ=キャキャットウの冷め切った言葉は俺への侮辱のように感じる。
修行時代に互いに研鑽し時には教わり仲良い弟子関係を築いていたと思っていた。俺を目にしても感情がでてこない。あの時、俺を殺しかけてきた方がまだ感情の渦が蠢いている。這いずりながらも乾きを潤す為に兄貴は俺を求めていたような気もした。俺に執着してくれいたと思う。俺は兄貴の何を決着つけたいのか本当のところはわからない。
正直、知っている奴以外は兄貴の殺生しようが気にもならない俺がいる。ただ、この阿鼻叫喚な世界に心は踊らない。厄介事に首を突っ込んで悪党を殺したどうしようもない俺だが、心からこの場を制さなければならないと思う。
兄貴の暴走を止めたい!
「ニャー!」
兄貴の怪猫音が響き渡る。
まずいな……。傍観から攻勢に移るのかもしれない。的はどこに向いている?
「ちっ」
俺はGVDTDR(ザ ダーク ライド)から飛ばされた勢いを止めるために生命エネルギーを放出して踏ん張る
そして、再び争いの渦中へとむかう。
だが……。
「けっ、わざわざTDR様が俺に阻んでくれるとはな……」
「……」
TDRのパイロットは何者かわからないが無言立ち尽くす。動作をひとついれる。TDRが常時形態を変える武器がライフルへとなる。そして、狙いを俺に見せつけた。
スカリとサンゾウか……。
どういう意図だろうか。俺に対する悪意だろうか。
しかし、俺は関係なく怒気を晒す。
「てめえ、どけよ!」
しかし、相手は射撃はせずとも反応はしない。代わりに応えるものがいる。
シシロウ兄貴だ。
「足りないな、足りないんだよ。お前の力はそんなものではないだろう? 長兄イチモンジを撃破したときのようになれよ」
あれは、自身の力で勝ったようには思えない。同じことは再現できない。すぐさまにひどく冷静になった俺がいる。兄貴は俺の顛末を見てくれていたんだな。
「兄貴、俺を監視していたんだな?」
そこに、嬉しさはないが目標はシシロウ兄貴。感情が微妙に揺れる。
「ふん、唯一俺を殺せる相手がお前と師であるカイラス=パレスだからな。その二人を殺してこそ俺は俺の限界を超えることができる。しかし、相手が不抜けていてはどうにもならない。誰か殺すかニャー? サンゾウが一度死んだときのように激情に身を委ねてみるか?」
「兄貴は人を殺すのは好きか?」
「疾うに飽きたな。俺はあくまでも武に生きるものだ。何処ぞの馬鹿どもは俺を刹劫に捕らわれたと考えているようだが……あんなものは付属のようなものにすぎぬ」
「どれだけあんたは人を殺しをしてきたんだ? 人を殺したい欲求、刹劫じゃないのか?」
「殺意など己の目的に対する手段にすぎぬ。お前とて戦い続けてきたのだろう? 避けられないことに偽善を吐いて逃避するのは無力者がすることだ」
「そうだな」
俺は、はっとする。どうしようもないことに向き合って対処する勇気。それが不義、不毛であってもだ。ただ、目的のために立ち向かう。
「シシロウ兄貴わかったよ。あんたはどうしようもない野郎だ。俺は知り合った人間を見殺しにできない甘い奴だ。その為にあんたを倒す!」
「それでいい。だが、忘れるなよ、俺の前にTDRがいる」
疾走する黒い馬の顔をした悪魔。ファーストガヴァダヴァダン、The Dark Rideを俺は引導を渡すことができるのか?
俺の心中など気にせずTDRは俺にライフルからビームをまとった剣に変化させ切りつけてくる。問答無用か。あるいはシシロウ兄貴との会話が戦闘を始める合図となったのか?
「しかたないな! やってやるぜ!」
俺は反撃すべく構えをとった。




