力量の差
錐のような塔の上に一人の男は立っている。自信を喪失しているかのようにも見える。ただ、虚しさに支配されているだけかもしれない。
「退屈だ……。退屈だニャー」
猫の鳴き声の語尾なんぞ使っているがひどく冷め切った語気を発している。
その、男の周りは何もかもが瓦礫と化して荒野だけが無塵を作り出している。死と破壊と無への始まり実行者はファーストガヴァダヴァダン、GVDTDR(ザ ダーク ライド)だ。
「シシロウ兄貴、ようやくあんたにたどり着いたぜ」
「ニャー」
猫の鳴き声が返事なのかわからない。いや、俺なんぞ気にも留めないのであろう。修行時代の俺と兄の仲はなんだったのであろうか?
「どうして、あの時俺を殺そうとした?」
「ニャー」
一向に相手をしない。TDRが絶望的に周りのGVDを破壊し続けるが、俺とシシロウ兄貴との間にも別種の溝がうまれて絶望した。
「助けてください! これでは我らは一体のGVD相手に全滅です」
宇宙軍の連中は俺たちサンゾウ姉貴の部隊に助けを要請したのであろう。しかし、俺たちもTDRの圧倒的な強さに身体動かずにして牽制して見ているだけに陥っている。不甲斐ない……。
「……いいのか? 全員死ぬぞ?」
ようやく口を開いてくれた言葉はどうでもよさそうに聞こえる。
「ちっ、兄貴よ! TDRを始末したら俺と相手をしろよな」
「ニャー」
気が乗らない返事が返ってくる。しかし、俺はやるしかない。
俺はTDRに向かって突撃する。体中の生命エネルギーを発して宙を飛び標的へと向かう。
「ゴタロウさん、加勢しますよ」
カインがファーストの弐号機RYを操作してついてくる。無論、吸収して複製した残りの49体のRYも引き連れている。
だが、TDR速射した連発のビームが引き連れた49体RYを即時に復元不可能レベルまで破壊する。
「まさか、これだけの力の差があるとは……」
「カイン退け! 死ぬぞ」
俺が叫ぶより早くTDRが接近線用の剣のような武器で一刀する。無慈悲の一撃だ。死ぬなよ、死なないでくれよ。
俺の願いは届いたのかカインのRYは無傷のまま立ち尽くしていた。
その代わりに……。
「ス、スカリ?」
スカリ=サーハ、ブロンズカラーの髪にブルーの瞳に長身で細身の美女がそこにいた。しかし、いまは美しさとは台無しに血だらけである。
「ようやく、あなたに追いつけましたね。世話の焼ける浮気性さんですね」
俺は、この女達を捨てたというのに白々しく卑怯にも言葉がでてしまう。俺は最低だ。
「どうでもいい。喋ると命に障るぞ!」
「いやですね、これでも流派ゴリラキックの使い手なのですよ。それほどやわではありません」
無理するなよ! あれはギリギリといった感じだ。
「サンゾウ姉貴! スカリを頼む」
「そうするわ」
サンゾウは素直にスカリの介抱へと向かってくれる。少しは安心した。が、俺には底知れない怒りがまた身体を支配してしまう。ただ、それは人殺しをしたい欲求という刹劫とは違うと感じた。シシロウ兄貴が捕らわれていると思われる刹劫とは。
「TDR許さねえぞ! 食らえ、猫パンチ奥義! 爆龍伝殺圧!」
俺は思いっきりTDRの胴体に拳を振るった。だが、器用にもTDRは人間という小さい相手にも手のひらで腕を掴み俺の技を無効化する。
「ぐっ!」
握り締める力は半端なく俺の腕がちぎれてしまいそうだ。振りほどけそうにもない。しかし、腕は二つある。俺は拳を再度振るうが投げ飛ばされる。
「畜生!」
俺は地の果てまで飛ばされてしまうような気がした。そんな中、薄れてくる景色に一人立ち尽くす男がまたもこう言うのだ。
「退屈だニャー」




