殺人の大家と業
俺たちは変わらず臨戦態勢でいる。イチモンジ長兄を倒したでことは終わらないのだ。しかし、怒りに任せていたとはいえ、兄と位置づけた存在を殺めるのはどうかと今更に思った。
「あら~ゴタロウ、センチでいるじゃない」
「あんたは軽いな。あと、なんで? また覆面しているんだ?」
オカマじゃなく大人のお姉さんだったサンゾウは覆面に手をあてている。
「この美貌がね、邪魔なの」
「自画自賛かよ。確かに美人だけどな……」
「やだー。ゴタロウに褒められちゃった♪」
性格は相変わらずである。なんだか勿体無い気はするがサンゾウ姉はこの口調の方がなれたというか親しみやすいので、よしとする。
「俺たちの生い立ちなんて弟子入りした時からまともじゃないだろ? 猫パンチというふざけた名前の流派だが殺人拳法どころかマシーンまで制するまで修行を積んでいる」
「私ね、本当は猫パンチなんてやらせてもらえなかったのよ」
「なんで? 才能あるじゃないか」
「あるわよ。だけど、イチモンジに敗れたわ。結局、女は男に勝てないことが証明されたのよね。簡単な話、女が継承者に選ばれないのはそういうところ」
「だけど、あんたも俺と同じ継承者候補だろ?」
「そうよ。条件付きでね」
「条件? まさか……」
「そう、男に転生すれば認められるのよ、私は」
「そんな、サンゾウ姉は女を捨てたのか?」
「バカおっしゃい。だけどね、パレス一族には恩があるから……」
相変わらず覆面だというのに感慨にふける様がうまいとういか伝わるな。この人は。
パレス一族……師カイラス=パレスとディーテ=パレス。ディーテ姉は世話になったよな。サンゾウ側につくという俺の裏切りなのかわからんが結果になったが。まあ、サンゾウとも協力関係でいるつもりなんだが……。
「滅んだ、私の故郷で拾ってくれたのが師カイラスよ。普通はそんなことしない人物だけど、娘の様に育ててくれたわ」
「そんな過去があったんだな。俺なんか故郷に捨てられたような、捨てたのか、みたいなもんだけどな」
「ウフフ。アナタは気まぐれ落ち着きがないから流れて生きるのが性分なのよ」
「まっ、そうかもな」
「だけど、その性分ディーテが心配してね」
「まあ、子供扱いされるんだよな。実際、俺は年下だけどな」
「そんな、相手をあなたは殺せる? もう、そういうところまできているのよ」
「師匠殺しだって後継者になるために望んでいたところだし、誰かまわず人は殺せるよ」
「そういうところはイチモンジやシシロウと変わらないということね」
そうは、いうが信頼していたシシロウ兄貴と俺は同格なのだろうか? シシロウ兄貴に近づくことで何をしたかったか自分に答えを導きだせる……気がする。
俺には刹劫という殺人衝動までとりつかれていると思わない。戦わなければならない時には躊躇いがないだけだ。それは、人として最低な行為にして当たり前にやる手段でしかないと俺は思う。
「噂をすると次の刺客きたようね」
沢山のGVDと呼ばれる人型マシーンが多数こちらへ向かってくる。そして、遠目だが生身の人間がGVDの上に立ちこちらを見据えている。
「ジト=グレイアムか……。なんで、俺達の方に近づいてくる?」
「イチモンジとのやり取りをどこかで傍観していたんでしょうね」
「ジト兄貴が何を考えているかわからないが、触発は避けられないだろうな……」
「体力は残っているの?」
「さあな」
長兄を倒したところで次兄も難敵に変わらないのだ。しかし、血なまぐさいことだな。
できれば、殺めたくないとは言わないが、戦う動機はない。相手が望めば殺し合いになるのもなんだかおかしい。相手の都合に構う気はない。思えば、皆に何度も指摘されるように流されている感はある。それが、一番だらしなく卑劣な行為かもしれない。
だけどな、俺は躊躇わない。やむを得ない時は戦う。目的の為に、シシロウ兄貴と再び相対するために卑怯でいようと思う。俺は、兄弟と呼んだ男さえ殺したのだ。理由なんて邪魔だ。人殺しでどうしようもない拳法家だ。それが、いまでは患いにすらなっている。
最低だ!




